読書習慣と中学受験 小学校低学年からの精読のススメ
読書は国語の成績を向上させるのか?
まことしやかに語られる読書と成績の関連性、大体は読書習慣は成績に良い影響があるという言説によって支配されています。
私が中学受験をしていた当時も読書と日記を書くのが国語の成績アップに繋がると言われていました。親からも「本を読め」と良く言われました。
しかし、これ本当なのでしょうか?
結論から言います。読書習慣と成績には必ずしも関連性はありません。算数、理科、社会は言うに及ばず、国語でも同様です。
経験上でも、理屈の上でも必ずしも関連性はないとはっきり言えます。
ただし、成績を上げるための読書の方法はあります。めちゃくちゃ矛盾しているように聞こえると思いますが、読書自体が成績を上げるのではなく、読書の仕方で成績が上がるとご理解いただければと。
中学受験の国語で問われているのは何なのか?
さて、成績を上げるための読書の仕方について話をする前に、今一度中学受験の国語で求められている能力について話をしておきます。
中学受験の国語で出てくる問題を大雑把に分けると、
- 漢字能力を問う問題
- 傍線部の文章についての読解能力を問う問題
- 空欄を埋めるための読解能力を問う問題
の3つです。
2と3は読解能力という点で、ほぼ同じ問題と考えることができますから、大別すると漢字能力と読解能力の二つの能力を問うていると言えます。
漢字を書いたり、読んだりする問題はおおよそ全配点の10%以下程度ですから、90%以上は読解能力を問う問題です。
というわけで中学受験の国語では主に読解能力を問うています。
読解問題のパターンは以下の3つです。
- 傍線部の意味を説明させる問題 = 説明問題
- 傍線部の理由を説明させる問題 = 理由問題
- 傍線部(空欄)を言い換え(穴埋め)させる問題 = 同義問題
上のパターンを以下のような方法で解く。これが国語の問題です。
- 文章中から抜き出す
- 文章中から答えのパーツを収集し再構成する
- 文章の趣旨から推定させる
記述式であれ、選択式であれ本質は同じです。
まとめます。
中学受験の国語はこう言い換えることができます。
説明問題・理由問題・同義問題を問題文の指示にしたがって文章中の適切な箇所から抜き出したり、再構成したり、推定させることで読解能力を問う
中学受験の国語で問うていることに解答するためには?
「読む技術」と「解く技術」
問うていることが分かれば、あとはそれに答えられる技術を身につけるための学習方法を実践し、反復訓練によって身につけ、当たり前のように解く、それだけです。
では、国語の問題に答えられるようにするための技術とは何でしょうか?
「読む技術」と「解く技術」です。
「読む技術」
「読む技術」は精読と構造把握の2つによって構成されます。
では精読と構造把握とは何か?言葉で説明するよりも早いので以下を読んでイメージを掴んで下さい。
↓物語の精読。
↓物語の構造把握
↓論説文の精読、構造把握
これからもイメージを更に掴んでもらうために精読と構造把握の実況中継をやっていきますが、以上を読んで頂いてもざっくりとしたイメージは掴んでいただけると思います。
精読と構造把握が国語を解くのにどう役立つのか?
さて、精読と構造把握がどのように役立つのかを解説していきます。
精読とは物語文であれば状況、背景、心理を文章から読み取ること、論説文では事実、著者の意見の把握です。(しかしながら論説文では、事実から結論を導く形式の他に、著者の論理や著者が勝手に定めているルールによって三段論法式に結論を導く文章もありますので上記のみとは限りません。この手の文章は良さそうなのがあれば後々紹介し、解説します)
構造把握は精読を経て、しっかりと文章を把握した後に説明問題・理由問題・同義問題を解くためのパーツがどこにあって、どんな内容であれば説明・理由・同義にあたるのかを特定、把握するために行うために行います。
これが精読と構造把握の効能、すなわち「読む技術」の効能です。
「解く技術」は「読む技術」によって特定、把握した答えのパーツがどのあたりにありそうか、とか、答えのパーツの優先順位を定めて、説明・再構成する技術です。
この二つの技術を身につけることにより、答えのパーツを正しく収集し、抜き出したり、再構成することにより国語が解けるようになります。
精読ではない読書習慣に成績向上は見込めない
正しい読書により身につくのは精読の能力と構造把握の能力です。つまり「読む技術」でありますが、とくに精読の能力を身につけるのに力点を置いた方が良いと考えます。
なぜなら精読して正しく文章を把握しなければ構造も把握できないからです。逆に言いますと、正しく文章を把握していれば構造の把握は容易です。したがいまして精読の方が優先順位が高いのであります。
精読のイメージは上で挙げた記事を読んで掴んで頂きたいと思いますが、その方法は「丁寧に読む」という以外にはあり得ません。
1日1冊、年間365冊読んでいるとか、そこまで行かなくても年間100冊読んでいるとかいう小学生もいると思いますし、それを否定するわけでもありませんが、何をどのように読んでいるかは甚だ疑問です。
全てを精読していれば凄まじい「読む技術」を持っていると思いますが、私の経験上そういった小学生は大抵は物語を読んでおり、ストーリーの流し読みです。
ストーリーの流し読みでは中学受験の国語には絶対に対応できません。論説文はおろか、物語であっても状況、背景、心理を正確に読み取らなければ問題は解けないからです。
だから読書習慣が必ずしも成績の向上に繋がらないと言っているのです。
そういう読書習慣を否定しているわけではありません。楽しむ分にはとても良いと思います。ただ、問題は解けないよと知っておいて頂きたいだけです。
絵本を読んで精読の習慣を身につけよう!
精読の習慣を身につけるためには、子供が楽しく読めて、簡単に精読できるものが良いです。絵本の読み聞かせは最適だと考えます。
ただし、それは低学年まで。小学5、6年生になったらそんなことをしている余裕はありません。その場合は塾のテキストで出題される文章を精読するようにしましょう。
さて、私、絵本は本当に沢山読んでいますし、その中から良いと思うものは読み聞かせてもいます。優れた絵本は本当に多くのことを教えてくれます。
以前、「わすれられないおくりもの」という絵本を読みました。
図書館にも大抵は置いてあると思いますから借りてみてください。もしくは買っても損はない絵本です。
読み方としては隠喩、状況、背景、心理、主題を質問しながら読んでいきます。
例えば、「わすれられないおくりもの」ではこのような質問をしました。
- 隠喩:長いトンネルって何のことだろうね?
- 背景:どうして長いトンネルが出てきたのかな?
- 状況:アナグマさんは長いトンネルを通ってどこに行っちゃたのかな?
- 心理:アナグマさんのお友達はどうして悲しんでいるのかな?
- 状況:どうしてアナグマさんのお友達は冬の間は穴の中にいるのかな?
- 状況:アナグマさんは死んじゃったのにどうしてアナグマさんとキツネさんの絵が描いてあるのかな?
- 心理:アナグマさんは死んじゃったのにどうしてみんなアナグマさんのお話をしているんだろうね?
- 主題:アナグマさんが残したおくりものって何だったんだろうね?
こんな具合に読みながら、質問を繰り返していくうちにほぼ正確にこの物語の文章で書かれていることと書かれていないけれども推測できることを把握し自分の言葉で表現できるようになります。
これは一例ですが、絵本のように楽しく簡単に読める著作物でも精読が可能です。
つまりは、このような読書の仕方で精読能力を身につけられ、中学受験の国語の成績向上に繋げることができます。
子供が小さいうちは親が質問を投げかけ、ある程度大きくなってきたら自分で問題設定をして自分で書かれていることから読み解く、これが成績を向上させるための読書です。
継続することにより習慣になり、このような読み方が当たり前となります。
精読による読書であれば効果がありますが、字面を追っているだけとかストーリーを追うだけの読書では国語の成績アップはのぞめません。
結局、成績アップのためか?
このような読書方法は成績アップのためです。身もふたもない言い方ですが、中学受験で成功するためにこのような読書の方法を行うべきです。
しかしですね、全てが中学受験の成績アップのためではないのも理解して頂きたいです。中学受験の国語では、文章に書いてあることを正確に読み取る能力=読解能力が求められていますが、これは良く生きるための能力でもあります。
つまり、中学受験で求められる能力は良く生きるための能力でもあるのです。
成績をアップさせるために鍛えると言いますと非常に打算的に聞こえますが、良く生きていくための本質的な能力を鍛えているのと同じことです。
また、私は問いたいのですが、どうして中学受験のためというと打算的に聞こえて、生きるためというと本質的な気がするのですか?
そう思ってしまう方は中学受験に対して後ろめたさや小手先のものだという感覚があるのではないでしょうか。
違います。
中学受験で身につけた思考方法や訓練は絶対に生きていく過程でも役に立ちます。親御様であるあなた、中学受験をさせて志望校に合格して欲しいと思っているあなたが、「これは自分の子供が生きていくために絶対に役立つ本質的な学習なのだ」と信じることが重要です。事実、私は拙いなりに頑張った中学受験勉強が役立っていますし、私の友人、知り合い、教え子も同様です。
自信を持ってください。あなたは間違っていません。
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