中学受験の国語で満点をとるロジックの実践的解説(論説文編)ー朝日新聞の社説を読む

中学受験の国語で満点をとるロジックの実践的解説(論説文編)ー朝日新聞の社説を読む

中学受験の国語が苦手?ならば満点への道は約束されたようなもの

国語が苦手な理由

どんな勉強をしたら国語の点数が上がるのか分からない児童は、どのように勉強すれば良いのか分かれば必ず点数が上がります。安定して満点を取れるようにもなります。

課題が明確だからです。

勉強の仕方が分からないということは国語という教科が求めている能力の本質が分からないのです。だから勉強方法が分からない。国語が求めている能力の本質が分かっていない、のが課題です。

国語で求められる能力の本質

中学受験の国語で求められている本質的能力は論理的な読解と読解をもとにして問題文が求めている解を導き出す能力です。前者を「読む技術」と呼びます。後者は「解く技術」、この2つだけです。

したがって、「読む技術」と「解く技術」を身に着ければ良いのです。

「技術」というからには方法論さえ知れば身に着けることが可能であるということです。

 

「読む技術」ってなんだよ、と文句を言われそうですね。方法論を以前紹介しましたが、それだけでは実践的問題においてどのように利用するのか分かりません。そこで実践的問題をもとに解説していき、「読む技術」を身に着けてもらうのが一連の国語学習記事の趣旨であります。

「解く技術」はどうかって?

それはおいおいやります。それよりもまずは「読む技術」を身に着けましょう。

また、「解く技術」は塾で教えてくれます。時間の都合なのかどうかは知りませんが「読む技術」はあまり教えてくれませんが。

大人って嫌ですね。

 

さて、今日は論説文いきますよ。

2018年7月24日 朝日新聞社説「貿易摩擦 米国は懸念に耳傾けよ」

事実と意見・解釈との峻別、そして接続詞

貿易摩擦の高まりで、世界経済は下振れするリスクが増大している。

主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が共同声明でそう指摘した。

このまま報復の応酬が続けば、世界経済の危機につながりかねないという認識を、G20が共有したことの意味は重い。その一員である米国は、混乱の元となっている自らの振る舞いの罪深さを自覚するべきだ。

だがG20は懸念は共有したものの、具体的な打開策を打ち出せたわけではない。

米国が安全保障を理由に、鉄鋼とアルミニウムに輸入制限をかけると決めた直後の3月の前回会合でも、「保護主義と闘う」とした昨年7月のG20首脳会議(サミット)での合意を声明で「再確認」した。「さらなる対話や行動の必要性がある」との文言も盛り込まれた。

ところが米国は国際合意などおかまいなしだ。輸入制限を予定通りに発動し、中国や欧州連合(EU)などが報復関税で対抗する事態となった。中国には知的財産の侵害を理由にした制裁関税も発動し、中国が報復している。自動車などの関税の大幅引き上げも検討しており、状況は悪化する一方だ。

今回の声明では「対話や行動を強化する」と、前回より表現を強めた。危機感の表れであろう。しかし声明で一致しても、米国と他国の溝が埋まったようには見えない。

ムニューシン米財務長官は会合後の会見で「米国や保護主義のことばかりが話題になったように見られるが、そんなことはない」と主張。米国は最も巨大な自由市場国であり、各国に関税や補助金をゼロにして自由貿易を深めていくよう要請したと述べた。

トランプ米大統領の保護主義に対する懸念の声は、国際社会だけでなく、米国内からも次々にわき起こっている。

中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は米上院での証言で、「長期に高関税がかけられれば、米国にも他国にも悪影響をもたらす」と警告した。自動車などへの高関税について米商務省が開いた公聴会では、「関税は米国を傷つける」「米経済や国家の安全保障を弱める」といった意見が噴出した。

トランプ氏は25日、EUのユンケル欧州委員長と会談し、通商問題を協議する。G20の国々、そして米国内から聞こえる懸念の声に耳を傾ければ、何を話し、何をなすべきか、答えは明らかだ。

引用元:2018年7月24日 朝日新聞社説

この社説は事実をもとに、事実の解釈と意見を述べ最も主張したい意見を導くという構造を持った文章です。以前、国語(論説文)を読み解くための方法論を紹介したとき論説文の典型的文章構造は2つのパターンしかない、と書きましたが、今回の朝日新聞の社説は2.客観的事実を積み上げて結論を導き出すパターンです。

 

まずは論説文の2パターンしかない文章構造のどちらなのかを読み解きます。

 

次に書いた人物の解釈、意見を抽出します。

引用の中で青字にした箇所がこの社説を書いた人物の解釈、もしくは意見です。

このまま報復の応酬が続けば、世界経済の危機につながりかねないという認識を、G20が共有したことの意味は重い。

引用元:2018年7月24日 朝日新聞社説

最後の文章で「意味は重い」と言っています。これはこの人物の解釈です。客観的事実ではありません。

その一員である米国は、混乱の元となっている自らの振る舞いの罪深さを自覚するべきだ。

引用元:2018年7月24日 朝日新聞社説

「自覚するべきだ」と言っています。これはこの人物の意見です。客観的事実ではありません。

G20は懸念は共有したものの、具体的な打開策を打ち出せたわけではない。

引用元:2018年7月24日 朝日新聞社説

「打ち出せたわけではない」と言っています。これはこの人物の解釈です。

社説冒頭で「貿易摩擦が進むと世界経済は落ち込んでしまう」という懸念をG20で共有した事実について述べていますが、これは「具体的な打開策」ではありません。

そのことをこの人物は言っているのです。

米国は国際合意などおかまいなしだ。

引用元:2018年7月24日 朝日新聞社説

前の段落で「合意を再確認した」のに、結局「米国は輸入制限を予定通り発動した」から「おかまいなしだ」と言っています。

この人物は「輸入制限を予定通り発動した」米国の行動を「おかまいなしだ」と解釈しているのです。

状況は悪化する一方だ。

引用元:2018年7月24日 朝日新聞社説

「悪化」かどうかは個人の価値判断です。したがってこれは解釈です。

前回より表現を強めた。危機感の表れであろう。しかし声明で一致しても、米国と他国の溝が埋まったようには見えない。

引用元:2018年7月24日 朝日新聞社説

「表現を強めた」「危機感の表れ」は個人の価値判断です。客観的事実ではありません。そして最後に「見えない」と言っていますが、これもこの人物の意見です。

トランプ米大統領の保護主義に対する懸念の声は、国際社会だけでなく、米国内からも次々にわき起こっている。

引用元:2018年7月24日 朝日新聞社説

確かにトランプ大統領に対する懸念の声は起きていますが、「次々に」というのは個人の価値判断です。多いと見るか、少ないと見るかは個人の判断が入るからです。

これが「国内外100人の人物からわき起こっている」であれば客観的事実になりえますが、「次々に」は客観的事実に個人の判断が加わっています。

よってこれは解釈です。

G20の国々、そして米国内から聞こえる懸念の声に耳を傾ければ、何を話し、何をなすべきか、答えは明らかだ。

引用元:2018年7月24日 朝日新聞社説

結論です。

しかし結論で明確な答えを出していません。私の社説を読んだら答えは明々白々である!と言ってます。

最後に答えを書こうと思いますが、まずはここまでの読解手順をまとめてみます。

まずは論説文のパターン把握

論説文ではたった2つしかないパターンのどちらなのかを認識するところから始めます。この文章は論理や条件の積み上げではなく、事実を積み上げて、事実に解釈を加えていることが読み取れます。

したがって、国語(論説文)を読み解くための方法論の2.客観的事実を積み上げて結論を導き出すパターンです。

次に2のパターンは事実と著者の解釈・意見を峻別する

事実の積み上げと事実をもとにした解釈により結論を導くパターンの文章は、事実をもとに著者の解釈・意見を積み上げることで最も言いたいことを導く構造をとっています。

したがって著者の言いたいことをしっかり把握するためには、著者の解釈・意見を抽出しなくてはなりません。それは上の青字の箇所の解説でやりましたね。

事実は著者の解釈・意見の裏付けです。

著者の解釈・意見がどの事実により裏付けられているのかも把握してみてください。

全体の構造を把握する

接続詞に注目してみましょう。

 

最初の「だが」以前は米国に対して各国が懸念を示しており、米国は混乱を招いている事実を反省しろと言ってます。

「だが」以後は「具体的打開策が打ち出せない」のと、「合意の再確認」を行った事実が書かれています。

次の接続詞「ところが」で、「合意の再確認」を行ったのに米国が一顧だにしない事実が書かれています。

最後の接続詞「しかし」以前で米国に対する各国の態度が強まったと書いていますが、「しかし」以後でそれでも米国と他国の「溝は埋まっていない」と書いています。

 

接続詞を助けにして青字の部分を構造化します。

  1. 各国は懸念を示している
  2. 米国は反省するべき
  3. でも、具体的な打開策がない
  4. いくら声明で合意しても米国は合意を無視する
  5. 今回も声明を出した
  6. でも米国はどうせ耳を傾けないはずだ(なぜなら過去もそうだったから)
  7. そんな米国に各国から懸念があがっている
  8. 他国のみならず自国からもだ
  9. 米国が何をするべきかは明白だ

 

どうでしょう。あら不思議、接続詞の助けを借りつつ著者の解釈・意見を順番にまとめてみたら社説の構造が明らかになりました。

何となくでも読めるじゃんと思ったあなたは60点

読む技術により正確に読む

言葉を知っていて、多少の社会常識がある大人だったら何となくでも読める文章です。

が、それでは国語のテストでは良くて60点くらいしか取れません。

100点取るためには正確な読解が必要なのです。

何となくの理解では際どい選択肢から論旨に最も合った選択肢を選びだしたり、消去法で選択肢の過小、過剰を判定することはできません。

中学受験ではそこまで求められないって?いやいや求められます。それに私たちは100点を取るのを目的にしてるんです。60点どまりで良ければ何となく読んで何となく分かった気になればよいのではないでしょうか。

 

上に書いた手順で構造を明らかにするまでが「読む技術」に該当します。

次に使用するのは「解く技術」です。

 

さて、私が問題を用意するまでもなくこの社説では「何を話し、何をなすべきか、答えは明らかだ」と結んでいます。明らかなら言ってくれれば良いのにと思いますが、私が問題を作る手間を省いてくれたのでしょう。

何を話すか

「話す」の主体は誰でしょうか?正解はトランプ氏。

前の文章で、トランプ氏が25日にユンケル欧州委員長と協議する、と言ってますから「話す」主体はトランプ氏に決まってます。

ただし、適切なことをトランプ氏が「話す」ためには各国の懸念の声に耳を傾けるのが前提条件だと言っております。

各国は保護主義を止めて仲良くやろうぜ、さもないとやばいことになるぜ、と懸念の声をあげています。

したがって、トランプ氏が話すべきは、保護主義を止めて各国と協調する方法です。

何をなすべきか

保護主義を止めて各国と協調する方法を話したらやることは決まってます。

シンプルに言いますと保護主義を止めることです。

 

ここからは私の意見が混ざります。

トランプ氏の行動原理は、国内における支持基盤がぜい弱なので自国国民に対して分かりやすい方法で人気を獲得して政権を継続する、という目的によって貫かれています。

だから簡単に保護主義を止められません。アメリカ最強!EUと中国ファック!って言ってた方が自国民からすると格好いいし、分かりやすいじゃないですか。

 

であれば、保護主義を止めるには、段階的に、国民を納得させ、格好良さを保ったまま、止める必要があります。

すると、「何をなすべきか」は、もう少し複雑になります。

つまり、保護主義を最終的に止めることを前提に自国民の人気を失わないような方法論を協議し、段階的に保護主義を緩和していくことです。

 

最後はトランプ氏に対する知識がないと導けない答えでした。文章だけから読み解きますとこの著者は、

保護主義を止めて各国と協調する方法を協議してそれを実行に移せ

と言っております。

 

言うは易し。行うは難し。

 

これ、試験にでますからね。

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