中学受験の国語で満点をとるロジックの実践的解説(論説文編)-読売新聞の社説を読む

中学受験の国語で満点をとるロジックの実践的解説(論説文編)-読売新聞の社説を読む

入試問題で論説文が出たら全力でガッツポーズ

物語と比較して論説文は容易です。

構造のパターンがほぼ決まっており、パターンが決まっているので同様のロジックで解けるからです。

 

論説文を苦手にする児童は多いかもしれません。

難しそう。内容が分かりにくい。

いえいえ逆です。難しい漢字や単語が用いられている、あるいは内容が難しそうに感じるだけです。構造は2パターンしかなく、パターンに当てはめれば容易に解けます。

開成中学の算数の問題の解説で何度も言っていますが、受験学習においては再現性をもって解く方法を習得するのが重要です。再現性がなければ学習した内容を試験で生かせません。学習によって得た能力を試験で発揮するのが受験ですから。

似たり寄ったりの構造を持つということは、すなわち再現性をもって読解できるということです。これは試験場でも同じように読解できることを意味します。

「解く技術」、つまりは「読む技術」は技術であるが故に反復可能です。覚えてしまえば何ということはありません。とくに論説文においては。

 

論説文の問題が出たら全力でガッツポーズ。

訓練の成果を見せつけてやりましょう。学習は反復。正しい方法を何回も反復するのが肝要です。むしろ、それが学習です。結果として習熟度が増し、成績が上がるのです。

ワックスかける、ワックス拭く これが学習です。

 

では今日は読売新聞の社説を読解します。

事実と意見との峻別

読売新聞 社説より引用

日本のモノ作りへの信頼を揺るがした責任は、極めて重い。

東京地検特捜部が、法人としての神戸製鋼所を不正競争防止法違反(虚偽表示)で起訴した。組織ぐるみの不正を長年続けてきたメーカーの刑事責任が問われる。

書類送検されていた現場の検査担当者ら4人は不起訴とした。

鉄鋼やアルミ、銅製品で、顧客との間で定めた仕様書の水準に合致するよう、強度などの検査データを改ざんした。起訴対象は約1年分だが、不正は1970年代から手広く行われていた。

不正は、子会社を含めて約20拠点で確認され、40人以上が関与していた。担当する執行役員も不正を認識していながら、対策を講じなかった。企業全体に「ルール軽視」の意識がはびこっていた、と言わざるを得ない。

神戸製鋼は3月、外部調査委員会の調査結果を踏まえた最終報告書を公表した。辞任に追い込まれた当時の川崎博也会長兼社長は、不正の背景に「収益偏重の経営や、不十分な品質管理手続きなどがあった」と釈明した。

品質を疎かにし、納期や利益追求を優先させた代償は大きいということだ。法人が有罪になれば、3億円以下の罰金が科される。

公判では、不正が放置されてきた企業体質をあぶり出してもらいたい。それが、再発防止に向けた出発点となるだろう。

神戸製鋼は、日本を代表する素材メーカーだ。問題の製品の出荷先は、海外も含めて600社超にも及ぶ。特に高い安全性が求められる乗用車や新幹線、航空機にも使用されていた。

ほぼ全てで安全性を確認したというが、それで免責されるわけではない。厳正であるべき検査データに手を加えた行為自体が、顧客に対する重大な背信行為であることを忘れてはなるまい。

この問題では、米司法省が捜査に乗り出した。カナダでも損害賠償請求訴訟が提起された。一度問題を起こせば、影響は世界に広がる。自社だけでなく、日本の製品全体のイメージに傷が付くことを企業は自覚すべきだ。

製造業での不正が相次いでいる。三菱マテリアルや東レのグループ会社で、製品データの改ざんが発覚した。日産自動車とSUBARU(スバル)でも、完成車の無資格検査や、燃費データなどの改ざんが明らかになっている。

刑事事件にまで発展した神戸製鋼の不正を、産業界は一罰百戒と受け止めるべきだ。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

前回の中学受験の国語で満点をとるロジックの実践的解説(論説文編)ー朝日新聞の社説を読むを覚えてますか?

 

まず何をするんでしたっけ?

 

そうです、どのパターンの論説文なのかを明らかにするのです。

次に著者の解釈・意見を抜き出すのです。

最後に接続詞などを手がかりにして構造を明らかにするのです。

論説文のパターン把握

この文章は神戸製鋼所が不正を行い、起訴された事実、それに付随する事実をもとに著者が解釈・意見を述べ最も言いたいことを導くパターンの文章です。結論を導くため、事実→解釈・意見→事実→解釈・意見、といったように事実をもとにして解釈・意見が述べられているのに気づいてください。

事実と著者の解釈・意見を峻別する

日本のモノ作りへの信頼を揺るがした責任は、極めて重い。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

いきなり断罪です。社説には良くありますが、文章の冒頭で著者の言いたいことを述べ、それを事実と解釈・意見によって補強し、最後にもう一度締める構造です。

この部分だけで言いますと、「極めて重い」は意見です。「重い」か「軽い」かは価値判断の結果であり事実ではありません。

責任が極めて重いと言っていますので、何らかの主体の責任を問う文章です。

起訴対象は約1年分だが、不正は1970年代から手広く行われていた。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

「極めて重い」の後の段落で神戸製鋼所の責任を東京地検特捜部が問うている事実から「重い」責任を負っていると著者が考える主体は神戸製鋼所であることが読み取れます。

この文章は一見すると事実に見えますが、「手広く」が価値判断の結果なので著者の解釈・意見と読み解きます。

企業全体に「ルール軽視」の意識がはびこっていた、と言わざるを得ない。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

「軽視の意識がはびこっていた」のは著者の想像です。その証拠に「言わざるを得ない」と言っています。これが「軽視の意識がはびこっていたのだ」と断定系であれば想像ではない証拠をつかんでいるのですが、「言わざるを得ない」と少々自信がなさげです。

断定して言えるほどの根拠がないのでしょう。だから想像でものを言わざるを得ないのです。

品質を疎かにし、納期や利益追求を優先させた代償は大きいということだ。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

「大きいということだ」の「大きい」は価値判断の結果です。大きいか小さいかは事実ではなく、価値を判断する主体の判断の結果です。何と比較して大きいのか小さいのか、比較する対象同士の関係性によります。

著者が何かと何かを比較しているから大きいとか小さいとか言えるのです。

ネズミと比べると象は大きいですが、地球と比べると象は小さいです。つまり比較対象によって大きいのか小さいのかの判断が異なってくるのです。

比較をする主体によって大きい、小さいは異なります。ここでは何かと比較して著者が大きいと考えているので「大きい」という言葉を使っているのです。

公判では、不正が放置されてきた企業体質をあぶり出してもらいたい。それが、再発防止に向けた出発点となるだろう。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

「もらいたい」、「だろう」と言っています。前者は要望であり、後者は推測です。したがって著者の解釈・意見です。事実ではないですね。

神戸製鋼は、日本を代表する素材メーカーだ。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

神戸製鋼は、売上規模において日本第3位の鉄鋼メーカーだ。と言っていれば事実ですが、「代表する」かどうかは個人の価値判断の結果です。したがってここは著者が神戸製鋼に対して抱いている、素材メーカーとしての立ち位置を意見として述べていると解釈します。

また「神戸製鋼所が日本を代表する素材メーカー」のだと言及することで、後段の「責任は重い」を強調しています。

総理大臣と普通の高校生だったらどちらが責任は重いですか?総理大臣ですよね。

同様に「日本を代表する素材メーカー」と「菖蒲町を代表する素材メーカー」はどちらが社会的責任は重いですか?言うまでもありませんよね。

責任の重さは、責任を負う主体が守るべき存在の数と質に比例します。

ほぼ全てで安全性を確認したというが、それで免責されるわけではない。厳正であるべき検査データに手を加えた行為自体が、顧客に対する重大な背信行為であることを忘れてはなるまい。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

「免責されるわけではない」「背信行為であることを忘れてはなるまい」と意見を述べていますので著者の意見に該当する部分です。

ちなみに「安全性を確認した」行為を、「が」という接続詞で打ち消し、「それで免責されるわけでは」なく、「検査データに手を加えた行為自体が(略)背信行為である」と述べていることから、この著者が「検査データに手を加える行為」が重大な問題だと言っていることが分かります。

一度問題を起こせば、影響は世界に広がる。自社だけでなく、日本の製品全体のイメージに傷が付くことを企業は自覚すべきだ。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

「広がる」と言っていることから事実ではないと読み取れます。事実だったら「広がった」と普通は言います。

 

「自覚すべきだ」は意見です。

ところで「自覚した」としたらどうだというのでしょうか。それは「自覚すべきだ」にかかる「日本の製品全体のイメージに傷が付く」から読み取れます。

著者は「問題起こしたら迷惑かけるんだからな~」「みんなに迷惑かけんなよ~」という思考を持っています。

人に迷惑かけると自覚したらそんなことはしないだろうよ、と著者は考えています。

製造業での不正が相次いでいる。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

何度も言いますが「相次いでいる」のは価値判断の結果です。2回しか同様の問題が起きていなくとも「相次いでいる」と捉える人もいますし、100回起きないと「相次いでいる」とは認めない人もいます。

したがってここは著者の解釈です。

刑事事件にまで発展した神戸製鋼の不正を、産業界は一罰百戒と受け止めるべきだ。

引用元:2018年7月25日 読売新聞社説

「べきだ」は著者が強く意見を述べるときに使います。したがってここは意見であり、しかも強い意見ですのでこの社説における著者の最も言いたいことに該当する部分と読み解きます。

構造への変換

この文章には構造把握に役立つ接続詞がありません。そのまま著者の解釈・意見であるで青字部分をつなげてみます。これが構造把握のもとになります。

  1. 神戸製鋼所が日本のモノ作りへの信頼を揺るがした責任は重い
  2. 不正は昔から行われていた
  3. 企業自体にルール軽視の意識がはびこっていた
  4. 納期や利益を優先させた代償は大きい
  5. 不正を放置する企業体質をあぶりだし再発防止の出発点として欲しい
  6. 神戸製鋼所は日本を代表する素材メーカーだ
  7. 検査データに手を加えたのが最大の罪である
  8. 問題を起こすと世界中に広がるだけでなく、日本の他の企業にも悪影響を与えるのが分かってるか
  9. 製造業の不正が相次いでいる
  10. 神戸製鋼所以外の企業はこれを教訓としてもらいたい

文章の構造

以上を構造としてまとめます。

まとめるときは同じ意味合いを持つもの同士をまとめます。

1は著者の意見であり、2~5は神戸製鋼所について述べており、6~8は大企業の責任について述べており、9~10は他人事じゃないんだぞと他の大企業をけん制しています。

 

つまり、

  1. 著者の意見(責任は重いぞ)
  2. 神戸製鋼所について
  3. 大企業の責任
  4. 他の大企業への戒め

という4つの大きな構造を持った文章になっています。

1と3が責任というキーワードで関連性を持っており、4の結論を導いています。

 

まとめますと、この著者は、「神戸製鋼所くらいの大企業であれば重い社会的責任がある。他の大企業も社会的責任を意識するように」と戒めているのです。これが主題です。

具体的作法

まずは論説文の2つのパターンのどちらなのかを判定してください。

次に事実と著者の解釈・意見を峻別してください。著者の解釈・意見は鉛筆で線を引っ張ってください。抽出のコツは言っていることが価値判断の結果かどうかを判定することです。

接続詞をもとに著者の解釈・意見を列挙してみてください。

列挙した著者の解釈・意見をまとめてみてください。

 

以上の作業で完了です。方法論が分かったのだからできます。今できなければ訓練でできるようになります。

なぜならこれは技術だからです。再現性のある技術なのです。

 

これ試験にでますからね。

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