【中学受験】国語の成績を上げるための基礎能力を要素分解して解説する
ゲンキンなもので、この間までAMAZONで「在庫なし」だった『うしろめたさの人類学』が、転売屋さんにより2000円を超える値段で出品されていたかと思えば、いつの間にか定価の1836円(税込)でAMAZONが直販しているという次第でして、AMAZONも転売屋さんも仕入ルートが違うだけで考えていることは変わらないのですね、と感慨深く、一首短歌でもそらんじてみたいと思う今日この頃でございます。
定価より 高く売るのが 転売屋 中受ママ・パパ 在庫をにらむ
短歌と言えば、これまた中学受験ママ・パパが気になっておられるところの『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』でございます。
こちらはAMAZONがAMAZONならではの仕入パワーでトローリングしておりまして、今現在(2019年3月24日)在庫がたくさんございます。2月終わりは在庫わずかだったのにね。
口さがない方々は「中学受験のためなんて、なんちゅうゲンキンなこっちゃ」と呆れ果て不平をこぼすフリに余念がないのでございましょうが、こんなん↓書いてありましたらポチらざるを得ないお気持ちになることは疑いもございません。
2019年度中学入試最多出題作!栄光学園、海城、鎌倉女学院、成城、淑徳与野、桐朋、白陵、緑が丘女子、山脇学園、早稲田実業・・・・・・。
引用 AMAZONのリマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ商品紹介より
んで私も一つ流行りにのりまして、ラピュタの呪文のような『リマ・ナンタラカンタラ』を使って読み方なんぞを解説していきたかったのですが、「そもそもこれを読む親御様ならびにお子さんがたは小説を読む技術あんの!?」と思い至りました。
読む技術っすよ。小説、つまり物語文を読む技術。
そもそもこの技術がないのにひたすら読んだって味がしないガムを噛み続けるようなもの。
「どんな味がしましたか?」と聞かれたって、「わかりませーん!」ってなもの。
てゆーか、小説を読む技術なんて誰かに習いました?習ってないでしょう?
少なくとも私は学校では習っていません。ナボコフに教えてもらったんです。
正確に言いますと、
ナボコフの文学講義 上 (河出文庫) を読んで小説を読むとはなんぞやというのを高校生くらいの時に知ったのであります。
あ、この本難しいのでいきなり買っちゃダメですよ。ちなみに上のリンクから購入しますと私の懐に購入価格の3%が入ります。
赤の他人を儲けさせるのはやめましょう。
少なくともディケンズ、スタンダール、オースティン、ジョイスあたりの古典中の古典を読んでから挑戦してみてください。
目の前の先生ではなくて、生まれた頃にはすでに亡くなっていた文豪に読み方を教わる、それがジャパニーズリーディングスタイルでございます。趣深い。
というわけで『リマ・ラトバリタ・ウルス・アリアロスバル・ネトリール』を読むための準備をしていきましょう。
国語の問題文を読むためのスキルを要素分解する
そもそも国語に難を抱えている生徒は何につまづいているのでしょうか?
そこから考えていきましょう。
国語の入試問題というのは大きく分けますと読む技術と解く技術の二つを問うています。
問題文を読む、そして問題を見て解く、という2つの動作の仕上がりを見てるんです。
中学受験時代、つまり小学生の私がそうだったのですが2つの動作のうち「解く」という動作に注目してしまいがちです。例えば、〜文字で書き抜きなさいとか、〜を説明しなさいとかいう問いです。
本当は正しく読めないと、いくら問いに答える技術を磨いたって意味がありません。足腰のしっかりしていないピッチャーのようなものです。
なぜそう言えるのかと言いますと、基本的に中学受験における国語の入試問題が問うているのは「お前、ちゃんと読めたか?」ということだからです。問うていること、つまりは読めているかどうかが怪しいのに回答するのは無理です。当たり前の話ですよね。
ところが、傍線部の問題が出てきたら、傍線部の前後に注目しろ、とか、傍線部内の指示語に着目して文章中の該当箇所を探せ、みたいな教えを仰いだりします。
中には問いから先に読め、とかね。
ま、それで解けるならいいでしょう。そういった解き方を否定するつもりは毛頭ございません。
ただ、私はそのような解き方は、文章を基本通り読んで解く方法よりも再現性が低いと申し上げたいんですよね。
つまり、100人に教えて8、9割ができるようになる方法ではないと考えているわけです。
でも、読めてもいないのに問いに取り掛かって、あれやらこれやらと線を引きまくったり、丸で囲みまくる生徒の多かったこと。はっきり言いまして受験国語をテクニカルに捉えすぎている子供達が多すぎます。
本来の問いである「お前、ちゃんと読めたか?」への解になっていない。
その一因はおそらく塾での教え方にあるのでしょう。ま、講師によってスタンスはかなり違うでしょうけどね。
さて、ここで言う「お前、ちゃんと読めたか?」の「ちゃんと」とはなんでございましょうか?
「論理的に飛躍なく」です。
つまり、「お前、論理的に飛躍なく読めたか?」ということが問われているのであります。
したがいまして、論理的に飛躍なく読めると漏れなく問題は解けるようになっています。
ここまでが基本的な理解です。
論理的に飛躍なく読めれば、解くことはできると思っておいてください。
田村先生もそう仰っております。
国語に難を抱えている、というのはほとんどの原因が「読めないこと」に起因しております。では、「読めない」とはなんなのかを分解しまして、読むために必要なスキルをあぶりだしていきたいと思います。
それが解くのに繋がっていますからね。
読むために必要な基盤スキル
「読む」というスキルを大雑把に3つに分けて説明していきたいと思います。そんなに肩肘張らなくて結構ですので、イメージでつかんでみて下さいね。
第一に必要な文字通り「読む」スキル
文章読めますか?
読める、そうですか。
では何をもって読めると言うんでしょう。
日本語であればひらがな、カタカナ、漢字を読める、これが基本ですよね。
そして単語の意味がわかる。
文字を読めて、単語の意味がわかる、これが文字通りの「読める」状態です。
バカにしちゃいけませんよ。文字通り「読む」ことができなかったら、文章の意味がわかりませんから。文章の意味が分からなかったら問いに答えられるわけがありません。
実際は文字通りの「読む」スキル、つまりは基盤となるスキルがなくて国語が苦手というケースは非常に多いんです。
漢字とかバカにしてません?文章読む練習や問題ばかりやらせて単語の意味をないがしろにしてませんか?
文字通りの「読む」スキルがない状態で文章を読んだって国語の成績は上がりません。だってそうでしょ?書いてある日本語が読めないんですよ。
例えばね、↓のような硬質な文章を例にあげてみます。
急峻な谷のある風景は、造山運動が比較的遅く、新生代になってようやく開始され、氷河ではなく、多量の降雨の水流が鋭い鋸となって岩を噛み刻んで生まれた、日本列島弧に特有の地形である。
引用 「葦と百合」 奥泉光
難しそうな単語は「急峻」「造山運動」「新生代」「氷河」「降雨」「鋸」「噛み刻んで」「特有の」あたりでしょうかね。
これらが全て読めなかった、あるいは意味が分からなかったとすると、
「急峻な谷のある風景は、造山運動が比較的遅く、新生代になってようやく開始され、氷河ではなく、多量の降雨の水流が鋭い鋸となって岩を噛み刻んで生まれた、日本列島弧に特有の地形である。」
こういう状態になるわけです。そりゃ意味わかりませんって。霞ヶ関から出てきた資料じゃあるまいし墨塗りの度が過ぎて何が何やらわかりませんよね?HAHA。
って、笑い事じゃないっすよ。
もし、お子さんがこういう状態で国語の問題文を読んでいたらどうでしょうか?「なんで成績悪いんだー!」なんて悠長なこと言っていられないはずです。速攻で本屋に行って、単語と漢字の参考書を買ってやらせるはずですよね。
なぜ、それをしないんですか?
ズバリ、言いますと何が分からないのか分からないからじゃないでしょうかね?
親御様も、お子さんも。
分からないことを分かる、というのは学習の偉大なる第一歩です。
学習は「何が分からないのかを分かる」こと、そして分からないことを一つずつ潰していくことに尽きます。
これは国語だけではなくて他の科目も一緒です。何が分からないのかを分かる、めっちゃ重要。
さて話を戻しましょう。何度も紹介しておりますが、漢字の読み方とか単語自体が分からないのであれば中学入試 国語 暗記分野3700: 国語の点数がみるみる上がるを1冊仕上げてみて下さい。
うーん、でも本当に「読む」能力に問題があるのかなー、と躊躇されているのでしたら試みに塾で出題される問題文を音読させてみて下さい。そもそも漢字が読めないと音読が止まりますし、単語の意味が分からないと不自然な読み方をします。
不自然な読み方って言ってもなー、それが分からないんだよなー、という方。
説明させてみて下さいよ。文章中に出てくる単語がどういう意味なのか説明させてみて下さい。そしたら分かってるか分かってないかが分かります。
また、国語の物語文では登場人物の心情を表す語や、心情を表す行動に着目しながら読む必要がございます。
どうやって読むのかは↓で書いてます。
正確に登場人物の心情を追ったり、正確に論説文における著者の主張を捉え続けるには、単語の微妙なニュアンスを捉えることが大事です。
これも以前にどこかで紹介しましたが、単語の微妙なニュアンスを捉える正確な語彙力をつけたければふくしま式「本当の語彙力」が身につく問題集[小学生版]が私が知る中では最強です。
第二に必要な文章同士のつながりを理解するスキル
言葉はそれ自体が独立して存在するものではなく、文脈の中で意味が決定されるものです。
例えば「泣いた」という行為を例にとって説明していきましょう。
①彼女はマラソン大会で一位をとって泣いた。
②彼女は走っている最中にすねを強打して泣いた。
③彼女は母が遅くまで練習に付き合ってくれたのを思い出して泣いた。
④彼女はボロボロになりながらゴールした友人を見て泣いた。
⑤彼女はマラソン大会で一位になったのに誰からも褒められずに泣いた。
同じ「泣いた」という行為ですが、全て心情が異なります。
①は嬉しさ。②は痛さ。③は感謝。④は感動。⑤は悔しさ。
単語の読み方や基本的な意味を知る段階を経て、次は文脈から意味を捉える段階に移行するわけです。
物語文にしても、論説文(説明文)にしても単語の基本的な意味だけ知っていても歯が立ちません。文脈からその単語がどういった意味を持つのかを把握しながら読まないと文章は理解できません。
訓練法はあります。ありまぁす!
2回言ってみました。
塾で解いてきた問題文を帰ってきてから検討するんですよ。解かなくてもいいですよ。あくまで読むための検討。
この一文はどんな心情だったのか?
それを想像じゃなくて、書いてあることだけから読み取る。前後の文脈から読み取る。そして人に説明する。
「この主人公は前段で〜という気持ちだったのがここで〜な出来事を経験して、〜という心情に変わった」みたいなね。
問題に正答することやら、授業で犯した間違いを正すこと、それは大事ですよ。でも、それよりも大事なのは自分の頭で考えて人に説明できるようになるまで読む行為を研ぎ澄ませることです。
ぜひ、目の前の結果、正解よりも過程を大事にしてみて下さい。遠回りなようでいて近道ですからね。
第三に必要な文章全体の構造を把握するスキル
物語文でしたら登場人物、まあ大体は主人公の心情を追い続けてなぜそんな心情になったのか、何が契機になったのかを文章全体から読み取り、構造化するスキルがこれに当たります。
そして物語の構造を捉えるには心情の転換点はどこなのかを捉えることが大事です。
例えばこんな物語があったとします。
主人公は悲しみに沈んでいた → 友人の一言 → 気分が上向き努力を始めた → 良い結果が得られた → 悲しみを乗り越えて強くなることができた
下線を引いた部分を境にして主人公の心情が変化していますよね。これがターニングポイント、つまり転換点です。物語文というのはおおよそこのような構造になってます。
こうした全体にまたがる主人公の心情変化を捉え、構造的に全体を把握する。全体感を持って読む、とはこういうことです。
全体感を持って読むといいことが2つあります。一つは心情の因果関係が分かり、文章全体の強弱を捉えることができます。もう一つはどこに答えが書いてあるのかが分かります。
そのうちまたどこかの入試問題を例にしてやりますが、構造を把握するスキルの重要性を理解しておいて頂けると本望です。
論説文は?
一通り↓で解説してます。
一言だけ言っときます。
論説文(説明文)はたいてい二項対立を取っています。著者の主張と、著者とは反対の主張。この2つを把握しておくだけでもだいぶ読めますよ。
国語を解くのに必要なスキルを最後にまとめる
まずは、読める、基本的な意味が分かる、ということ。
次に文脈の中での意味が分かる、ということ。
最後に文章全体の構造が把握できる、ということ。
どこに課題を抱えていて、何を勉強すべきなのかをまずは特定しましょう。上の3つのうちのどれが足りていないんですか?原因が分からなきゃ対策なんて打ちようがありませんよ。
原因も分からないのにひたすら勉強するなんてもってのほか。効率が悪すぎます。ついでに頭も悪すぎます。
私は小学生当時、国語の成績がアップダウンしておりました。全然安定しなかったんです。できるときはできる。できないときはできない。たまたま読めたときはできるけれども読めなきゃできない。
小学5年生くらいまででしたら、問題も簡単なのでできるけれども小学6年生にもなると、きっちりした読み方を身につけていないから成績は運任せ。
というのも、安定した読み方を知らなかったからなんです。当時はそれが分からなかった。悔しくて悔しくて。でも誰も論理的に教えてくれなかったんですよ。読み方を。
私と同じ悔しさは味わってほしくない。
どうしてそんな答えになるのか分からない、自分がどうしたら解けるようになるのかも分からない、それでもみんな勉強しろと言う、本を読めと言う、文章を書けと言う。
本当は一つ一つ、納得いくように説明して欲しかった。何が足りていなくて、どうしてこの勉強をするのか、それを説明して欲しかった。
30年後、今も同じような苦しみのさなかにいるかつての私に私は教えてあげたいんですよ。
お前は頭が悪いんじゃない。国語が苦手なのでもない。
知らないだけなんだ、と。
成績が伸びないのは知らないだけなんだ、と。
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