【中学受験】子供の成長曲線・発達と中学受験勉強の関係を600秒で解説
小学6年生の秋頃、塾の先生との面談を終えて意気揚々と母が帰ってまいりました。
そのころの私はどうしても志望校の問題が解けなくて悶々としておりました。模試では偏差値65安定。志望校は偏差値70。偏差値だけで見ますとあとちょっとで手が届くと塾の先生も母も期待しておりました。
でもその時の私はようやく手をつけ始めた志望校の過去問を前にして全然解けず焦りばかりが募っておりました。
2月1日まであと3ヶ月くらいしかないのにこれで間に合うのだろうか?
テンション高めで母が帰ってきたのはちょうどそのような状況にあった時でした。
「あのね、去年K中学に受かった子たち、この時期はまだ過去問が全然解けてなかったらしいのよ」
「それが年明けくらいからグーンと解けるようになったんですって」
「今のあなたより成績が下の子もいたらしいわよ」
「だから絶対受かるって。大丈夫だって。先生言ってたのよ。今のまま続けていればグーンと伸びる時がくるらしいから」
なぜか私はこの時の会話をはっきり覚えております。そしてこのように思ったことも。
「ああ、今は解けないけども過去問演習をこのまま続けていれば、解けるようになるんだ」
と。
結果はどうだったのかと言えば受験本番でボロボロ。木っ端微塵。
結局、私は年が明けても、1月31日になってもちっとも糸口がつかめないまま2月1日にのぞみ惨敗するわけであります。
子供の成長曲線と発達と中学受験
あらゆる世界にはびこるオカルト、根拠のない思い込み、マジで猛威をふるってますよね。つーか昔から。
アガリクスでテンションアガリクス!みたいな。
それ、マジックマッシュルームなんじゃねーの、と思わず心配になってしまいますよ。
ついこの前なんか「世界経済を支配しているのはロスチャイルド家であり、陰謀なのである」とか真顔で言う人いましたからね。
中学受験の世界でもまことしやかに成長曲線やら、小学生は最後の伸びがすごいやら、子供の発達がカギだとかといったことが語られております。今も昔も。
ご丁寧にピアジェまで引用して、「やがて来る成長と発達に備えよ」とおっしゃる向きもしばしばございます。
いえ、別にピアジェを否定しているわけじゃございません。ただ、中学受験の成績の伸びとピアジェを関連づけるのは牽強付会にすぎないかと考えているわけでございます。
ちなみに私は成長曲線やら、発達やら、最後の伸びやらという話は嫌いです。なぜなら勉強が停滞した親子にとってこの話は思考停止状態になるくらい魅力的だからです。
解けない解けないと悶々としていた私が、「最後まで伸びる」話を聞いたときに感じたのは、ある種の救いでした。
今は解けないけどいつかきっと解けるようになる!道筋はわからないけども、きっとできるようになる!あの子も受かったんだからうちの子も!
客観的に見ると相当頭がやられちゃった親子なのでして、それくらい根拠に乏しい「伸びる神話」が魅力的だったんです。
思考を停止するくらいにね。
この手の話はある種のギャンブルです。
そりゃ確かに急に伸びる子はいるでしょうよ。ただ、それって全員に等しくおとずれる現象なんですか?再現性あるんですか?
成長曲線の話を信じきって正しい努力を探求するのをやめちゃったらどうするんですか。
発達とやらが起きなかったら運がなかったで済ますんですか。
受験勉強というのは決して神の見えざる手の支配している世界ではありません。論理の支配している世界であります。
今となってはなぜ私が志望校の問題を解けなかったのか、どのように勉強したら解けるようになったのかを理屈で語れます。教えられるのなら教えてやりたいのですが、でもまぁ、過去には戻れません。
ところでなんで成長曲線やら発達やらという話がはびこっているんでしょうか?
そこには少しばかりの理があるように感じます。
急激に成績が伸び、成長する瞬間
振り返ってみますと、実は過去問でウンウン唸っていた頃の私は、あともう少しで突破できるところまで来ていたように思います。中学受験のラスボスの前くらいまでは来ていたわけですね。
ところがラスボスはとうとう倒せなかった。そこには応用問題の壁が存在しておりました。
↑でも書いていますように超難関校で出題される入試問題は応用問題がいっぱい出ます。この応用問題に手も足も出なかったから私は落ちたのですが、この時に私が気づいていなかったことがあります。
それは、応用問題とは基本的解法の組み合わせである、ということです。
実は基本的解法をうまく組み合わせると応用問題って割と簡単に解けちゃうんです。で、私がつまづいていたのは応用問題を解くための初めの一手でした。
応用問題が難しいのは初めにどこから手をつければ良いのか発想する点です。切り込み方とでも言いましょうか。
一つの問題でもいろんな解き方があって、基本通りに解法を使う方法もあれば少しひねって別の解法を使うやり方もあります。そういった、角度を変えた思考が決定的に苦手だったんです。
難関校の応用問題に正面から当たっても解けそうにない場合は、「この解き方は?」「ここに補助線を引いたら?」「これは?」「これは?」と発想を変えていく必要があるんです。
こういった思考を習得するには、同じ問題でも違う解き方で解けないだろうか、と角度を変えて考える訓練をすれば良かったんです。基本問題でね。何事も練習です。
しかしながら、そういったアドバイスをくれる人が皆無でしたので残念な結果に終わった、と。チーン、でございます。
では、もし小学生当時の私が何かのきっかけでこのことに気づいて、「エウレカ!」となっていたらどうだったでしょうか。おそらく、飛躍的に解けるようになったはずです。
そうなっていたとしたら、多分、「あの子は最後に伸びた」と言われたことでしょう。もしかしたら発達とか成長曲線を持ち出されて語られたかもしれません。
ちげー、って。
大事なことに気づいたかどうかですよ。今まで学習してきたことが線を結んで閃いたかどうかですよ。
気づき、線を結び、腑に落ちた瞬間、急激に伸びる。突破する。
この現象をもって、第三者からは「二次関数的な成長曲線」に見えるだけなのかと思います。
発達が関係ある科目
さて、ここまでずいぶんとこき下ろしてきた「発達」でございますが、これが関係する科目はございます。
国語です。
さらに言いますと、国語の物語文です。国語の物語文で大事なのは登場人物の心情を捉え続けることであります。ところが、登場人物の心情は心情を表す語で表現されていなかったりします。
例えば、「彼女は彼の後ろ姿をいつまでも目で追っていた」みたいな感じで、行動で感情が表現されていたりします。
これを心情として理解するためには経験や経験を消化できるだけの心の「発達」が必要となってまいります。
小学4年生、5年生くらいでしたらアニメを見たり、友達と遊んだりする中で学んでいくのでしょうが、小学6年生にもなりますとそんな余裕はございません。
大人だったら何となく理解できる行動が小学6年生の子供には理解できない。さりとて理解できるまでの「発達」を待ってる余裕はない。
じゃあ大人が解説して差し上げると良いのでしょうか?
いいえ、お子さん自身が自分の言葉で説明し、自分自身で納得しないと先に進めません。
大人ができるのは「自分の中に答えを持っておきながら、それをあえて言わず、子供に整理させること」くらいです。
「発達」を待つのも良いのかもしれませんが、人生の先輩として見守りながら手を差し伸べる、そんな行いも必要になるのが国語の物語文でございます。
発達だの、成長曲線だのとかいう話はオカルトである
成績が伸びない、問題が解けない子にはそれなりの理由があります。そして理由があるからには解決策もあります。なら、なぜ解決策を講じない、と言いますと恐らくは伸びない理由、解けない理由を把握できていないからであり、よしんば把握できていたとしても解決策が分からないからでしょう。
そういう時にふっとささやいてきます。まるで船場吉兆の女将のようにね。
「ふっと伸びる瞬間があるんですよ〜。成長曲線ですよ〜」
ってね。
心が弱っているとかつての私や私の母のように無根拠に信じ込んでしまいます。なるほど、と。
ただ、それは思考停止の気持ちよさかもしれませんよ。心の隙間に入り込んでくる悪魔のささやきかもしれませんよ。
そう言いたい。
なぜなら伸びない理由、解けない理由はきちんと説明できるからです。そして、伸びない理由、解けない理由をつぶすための勉強をさせればできるようになるものだから。
何も考えずに伸びるなんてことはありえません。こと、受験勉強においては。そんなことは冷静なうちであれば理解できるはずです。でも冷静でいられなくなる時がやがてくる。
そう、受験直前期。
なんか分からないけど急に伸びる中学受験生がいるとかいう神話。ウドやジャックの豆の木じゃねえんだぞ。
この神話は心の弱さと願望と親子が求めた救いが作り出したオバケなのだと私は考えます。
もし、心の弱さに負けそうになったらどうするかって?
論理です。誰にも負けない論理を持ちましょう。人の言うことなんて気にしない。情報に惑わされない、自分だけの論理。一枚一枚積み上げ、崩れることのない論理。
LOGICAL PROGRESSION by L.T.J Bukem
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