受験国語(論説文)の「傍線部選択肢問題」を徹底解説!5つの「解く技術」で満点をとる
前回、一気に問題を解いていってしまいましたので、これから「解く技術」の手順と考え方を丁寧に説明していきます。
今回対象とするのは、国語の中でも論説文、説明文の傍線部選択肢問題です。物語は別の解き方がありますので説明の対象外とします。なお、この解き方で随筆も対応可能です。
対象は中学受験ですが、大学受験でも十分使えます。本質は同じです。
↓では実際に問題を解いてみてます。一回読んで頂くと今日の内容が更によく理解できると思います。
傍線部選択肢問題とは
文章の中に傍線が引いてあり、傍線部の理由や意味、傍線部と同じ内容の選択肢を選ばせる問題を傍線部選択肢問題と呼んでおります。
基本となる考え方:消去法で落とす
傍線部選択肢問題では、問題文にて「適当なものを①〜⑤の中から選べ」と聞いてきます。
「選べ」というのが曲者で、適切な選択肢を選ぼうとする人がいます。
絶対に「選んで」はダメです。
そうじゃなくて、消去法で選択肢を「落とす」んです。
なぜかというと同じものを選ぶよりも違うものを落とす方が簡単だからです。ですから、選択肢が5つあったら、5つ全部を消去法で落とすために検討していくんです。
技法1 傍線部の内容と問いを理解する
はーい、選択肢をいきなり選び始めちゃダメですよー!
まずは傍線部の内容を読んでください。内容は理解しましたか?それは自分の勝手な考えじゃないですよね?文章に沿った理解じゃないとダメですよ!
次に問いをよく読んでください。説明を求められてますか?同じ意味の選択肢を求めて欲しいんですか?理由を求められてますか?最適な選択肢を選んで欲しいんですか?それとも違うものを選ぶんですか?
問題文はよく読んでください。当たり前ですがこれができてない人結構いますよ。
コツは解こうとしない。まずは理解しようと努めること。頭の中で「解くんじゃない、まずは理解だ」と落ち着くこと。
技法2 解答のパーツを探す
消去法で落とす作業に移る前に、問いにしたがって自分で解答を作ります。
このときに自分で考えて解答を作っちゃダメですよ。文章中から抜き出して解答を構成するんです。
というわけで文章中からパーツを探す作業が技法2です。
この問題は平成30年センター試験国語の大問1です。先日、解説いたしました。
問題文がPDFで公表されていますのでこちらもご参照ください。
傍線部A「講義というような、学生には日常的なものでさえ、素朴に不変な実在とは言いにくい。」とあるが、それはなぜか。その理由の説明として最も適当なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選べ。解答番号は6。
①ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言によって学生が授業内容の暗記をこころがけていくように、学習の場における受講者の目的意識と態度は、授業者の働きかけによって容易に変化していくものであるから。
②ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言がなければ学生にとっての授業の捉え方がさまざまに異なるように、私たちの理解する世界は、その解釈が多様な可能性をもっており、一つに固定されたものではないから。
③ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言がなければ学生の授業の聴き方は一人ひとり異なるように、授業者の教授上の意図的な工夫は、学生の学習効果に大きな影響を与えていくものであるから。
④ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言がなければ学生にとって授業の目的が明確には意識されないように、私たちを取り巻く環境は、多義性を絞り込まれることによって初めて有益な存在となるものであるから。
⑤ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言によって学生のふるまいが大きく変わってしまうように、特定の場におけるひとやモノや課題の間の関係は、常に変化していき、再現できるものではないから。
引用元 平成30年センター試験国語
この問題では、傍線部の理由として最もふさわしい選択肢を聞いています。
いきなり選択肢を落とそうとしないでください。慌てなさるな!
最初にするべきは傍線部A「講義というような、学生には日常的なものでさえ、素朴に不変な実在とは言いにくい。」の理由になるパーツを自分で文章中から拾ってきて作るんです。
なぜ、「講義が不変な実在とは言いにくい」と言っているのか。その理由が傍線部周辺の文章のあちこちに書かれているので、それを拾ってくるんです。
2段落目 授業の冒頭でこう宣言されたら 〜中略〜 暗記に向けた聴き方へと、授業の聴き方を違える。
3段落目 考えごとをしているものにとっては空気のふるえにすぎず、また誰かにとっては暗記の対象となる
4段落目 授業者の教授上の意図的な工夫、または意図せぬ文脈の設定で、その場のひとやモノや課題の間の関係は変化する。
引用元 平成30年センター試験国語
これが傍線部Aの解答のパーツです。ここでは傍線部Aの理由になる箇所を集めてきました。文章の末尾に「から」をつけてみてください。全部傍線部Aの理由になります。
技法3 集めてきたパーツをまとめて解答を作る
さあ、集めてきたパーツをまとめて解答を作りましょう。
↓自分の作った解答(集めてきたパーツのまとめ)
授業の冒頭で教授が宣言することにより学生の聴き方が変わるように、授業者の意図的な工夫や意図せぬ文脈の設定でその場のひとやものや課題の関係は変化するから
ここまでできればほぼ8割正解したようなものです。
技法4 自分が作った解答と選択肢を比較する
では実際に比較していってみましょう。
①ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言によって学生が授業内容の暗記をこころがけていくように、学習の場における受講者の目的意識と態度は、授業者の働きかけによって容易に変化していくものであるから。
引用元 平成30年センター試験国語
↓の部分までは自分の作った解答とバッチリ合ってますね。
「ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言によって学生が授業内容の暗記をこころがけていくように」
↓の部分は一見すると合っているように見えますが、自分の作った解答では「ひとやものや課題の関係が変化する」のであって、「目的意識と態度の変化」を言っているのではないですね。
「学習の場における受講者の目的意識と態度は、授業者の働きかけによって容易に変化していく」
自分の作った解答は「関係性の変化=事物に対する解釈の変化」について述べているのであって、受講者の目的意識と態度ではないからこの選択肢はズレているのです。
②ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言がなければ学生にとっての授業の捉え方がさまざまに異なるように、私たちの理解する世界は、その解釈が多様な可能性をもっており、一つに固定されたものではないから。
引用元 平成30年センター試験国語
↓は自分の作った解答と合っていますね。ここまではOK。
「ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言がなければ学生にとっての授業の捉え方がさまざまに異なるように」
↓は「多様な可能性」というのが自分の作った解答と異なるように見えますが、「授業者の意図的な工夫や意図せぬ文脈の設定でひと、もの、課題の関係が変化する」という部分が「多様な可能性」と同じ意味を持つため正解に近い選択肢です。
「私たちの理解する世界は、その解釈が多様な可能性をもっており、一つに固定されたものではないから」
③ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言がなければ学生の授業の聴き方は一人ひとり異なるように、授業者の教授上の意図的な工夫は、学生の学習効果に大きな影響を与えていくものであるから。
引用元 平成30年センター試験国語
↓までは自分の作った解答と同じですね。
「ありふれた講義形式の授業でも、授業者の冒頭の宣言がなければ学生の授業の聴き方は一人ひとり異なるように」
↓の「学習効果に大きな影響を与えていく」が違いますね。自分の作った解答は関係性の変化や、解釈の変化が起きると言っているのであって、「学習効果」のことではないからです。
「授業者の教授上の意図的な工夫は、学生の学習効果に大きな影響を与えていくものであるから」
このようにして自分の作った解答と選択肢を比較していくんです。同じかなー、違うところはないかなー、と比較検討をしていくんです。
自分の作った解答とまるっきり同じでなくとも趣旨や意味が同じであれば、同一のことを述べていると判断する点に注意してください。
また、私は上では①②③の選択肢しか比較検討していませんが、問題文は「最適なもの」を見つけなさいと言ってますので、ちゃんと①〜⑤まで比較検討してください。もしかしたら②より適切なものがあるかもしれませんよ。
技法5 解答のパーツの集め方
とは言ったってこれ、解答のパーツを見つけなけりゃ正解できないじゃん。と思った方、素晴らしい!とても勘がいいです。
そう、傍線部選択肢問題を解く最も大事な技術のうちの一つが解答のパーツの集め方なんです。
傍線部選択肢問題の集め方にはパターンがあります。ただ、パターンは大きく分けて2つしかありません。
①傍線部の説明として最も適切な選択肢を求めよ
こういう問題の場合は、傍線部と同じ意味の文章を探しにいきましょう。表現ではなくて、意味が同じ文章を探す点に注意です。
②傍線部の理由として最も適切な選択肢を求めよ
傍線部の理由になるような文章を探しにいきます。末尾に「から」をつけると、傍線部の理由になるような文章を探すのがポイントです。「傍線部のようになったのはなぜか」という問題であっても同様です。
解答のパーツの探し方は分かりましたか?
傍線部選択肢問題を解く大事なポイント
とにかく手順です。上の5つの技法を使って手順通りに解くことです。
上の技法の、技法1→技法2→技法3→技法5→技法4の順番です。とくに技法3と5の解答のパーツを見つけることと、技法4の消去法で落とすこと、これが超重要。
だから、国語の「解く技術」を勉強するときは「解答のパーツを探す訓練」と「選択肢を消去法で落とす訓練」をしてください。
学習は反復訓練です。反復訓練によっていかなる問題でも再現性を持って解けるまで能力を高めるのが学習です。
これ、算数でも同じですよ。一例として算数の解き方を参照してみてください。ここでもSTEPに分けて、解き方に再現性を持たせてますよね。
なぜセンター試験の問題は簡単なのか
難しい傍線部選択肢問題は、こんな特徴を持っています。
①解答のパーツが傍線部から遠くにある
②解答のパーツが色々な箇所に散らばっており、全て集めて統合しないといけない
③選択肢がどれも自分の作った解答と同じに見えて落としにくい
センター試験の国語はこんな特徴を持っています。
①解答のパーツが傍線部から近い
②比較的近くに散らばっている
③選択肢を落としやすい
だから文章で書いてあることは難しそうに見えますが、問題としては簡単なんです。よほど開成中学の国語の方が難しいですよ。
受験国語を解くには「読む技術」と「解く技術」が必要
中学受験でも大学受験でも国語の問題を解くには「読む技術」と「解く技術」が必要です。ここでは「解く技術」について書いていきました。
「読む技術」は何処へ?
センター試験の問題が「解く技術」だけで解ける理由は問題が簡単だからです。例えば、解答のパーツが遠くの方にあり、色々な場所に散らばっている場合、「読む技術」によって文章を構造的に把握しないと見つけ出せません。
また選択肢がどれも合っているように見える場合は、微妙な意味の違いを正確に読み取らないと解けません。センター試験の問題の選択肢はざっくりしてますので高度な「読む技術」を要求されないのです。
あとは、物語文の場合は論説文よりも「読む技術」が必要とされます。「解く技術」だけでどうにかなるのは中学受験で言えば中堅校くらいまで。それ以上は「読む技術」が必要です。
難関中学を目指す小学生たちの助けとなるよう願っております。
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