【中学受験】楽しい理科第1回 一問一答と解説 生物編①植物「種子と発芽」
中学受験の理科を自分で学習するために一問一答を作成し、一通り覚え終わりましたので解説と併せて徐々に公開していきたいと思います。
暗記学習の仕方のところで書きましたが、概念を暗記するには一問一答形式にするのが最も効率が良いです。が、そんな時間は中学受験勉強で忙しいお子様にはございません。
親御様にそんな時間があるかというとこれもない、ということで作成したので公開する次第でございます。
暗記と併せて解説も載せていきます。無味乾燥な暗記だけにならず、楽しく学習して、「勉強って楽しいんだ!」とお子様に気づいて頂けましたら本望です。
ところで、私がお金を頂戴して教えていたのは国語と算数の2科目です。理科と社会は到底プロの仕事はできません。
ですから、解説、一問一答の作成にあたっては必ず文献・論文を参照し一切自分の考えを入れておりません。
楽しい理科では毎回必ず一問一答、解説作成に参照した参考文献を入れていきます。興味があれば読んで頂けると良いと思います。
なお、「楽しい理科」と銘打ったのは一緒に楽しく学習して、理科って楽しいと思って頂きたいという思いを込めております。解説には高校レベルの生物知識も出てきますが、きちんと知るべきと思いあえて載せてます。
ではいきます。
参考文献)
「新しい植物分類学 1」日本植物分類学会/監修 講談社
「新しい植物分類学 2」日本植物分類学会/監修 講談社
「しくみと原理で解き明かす 植物生理学」佐藤直樹/著 裳華房
草木の種子と果実 (ネイチャーウォッチングガイドブック)鈴木 庸夫/共著 誠文堂新光社
予習シリーズ理科 四谷大塚出版
岡山理科大学 生物地球学部 生物地球学科 植物生態研究室(波田研)ウェブサイト
※とくに日本植物生理学会ウェブサイトの「みんなのひろば」は素晴らしい!何度も参照しました。
一問一答プリント
種子ってそもそもなんだろう?
種子について勉強してるかな?
有胚乳種子とか、無胚乳種子とか、種子のつくりとか覚えたかな?きちんと覚えてたらGOOD。でも覚えただけじゃもったいない。
だってつまんないでしょ、それじゃ。それにつまんないことはすぐ忘れちゃう。すぐ忘れたら試験でいい点数取れないよね。だから、楽しく勉強していい点数とったほうがいいと思うんだ。
そもそも種子って何だろう?植物から種子ができるのはなんでなんだろう?
植物だけに限らず生き物っていうのは子孫を残していくことが大事なんだ。生き物の目的ってのはそれだけと言ったっていい。
植物ってのはね、子孫を残す戦略として種子を作っているんだ。
でもどうして、種子を作ることが子孫を残す戦略につながるんだろう?
よく考えてみてほしい。昔、朝顔のタネを学校で植えなかったかな?春にまいて、夏に花が咲いたのを覚えているんじゃないかな。その朝顔どうなったか覚えてる?そう、寒くなってきたら枯れちゃったよね。
植物が生きていくためには適切な温度ってやつがあるんだ。ただ単に子孫を残したいだけだったら、どんどん自分の周りに子株をばらまくようにすればいい。でも植物はそうしなかった。なぜなら、それでは冬を越せないから。
そこで植物は種子を作って冬を越す、という戦略をとったんだ。硬い種皮で守って、外からの寒さに耐えられるようにしたんだね。
種子の中には寒さを経ないと発芽しないのもある。例えばコウボウムギという植物はいったん低温条件下に置いて、それから温度を上げて発芽させるんだ。
これは、種子に冬の寒さを通過したという疑似体験をさせてあげているんだ。ただ単に温度を上げるだけじゃ種子は発芽しない。子孫を残すために「寒さを経験する(冬)、暖かくなる(春)、発芽せよ」こんな風に種子に対してプログラムされているんだね。これが子孫を残すための戦略なんだ。
種子っていうのは休眠状態にある。そして一定の条件をクリアすると発芽し始める。
やったよね?発芽の3条件だ。
発芽のカラクリ
発芽の3条件はやったかな?水、空気、適当な温度の3つだ。
じゃあ、なんでこの3条件が必要なのかな?ちゃんとした理由がある。
水が必要な理由
休眠状態だった種子が発芽するためにはまず水が必要だ。
どうしてかって生物が生きるためには水がいるからなんだ。逆に水がない環境で発芽してしまったら、生きていけない。つまり子孫を残せない。だから、水がないと発芽しちゃだめ、と種子にはプログラムされているんだね。
種子に水を与え、胚が水を吸うとジベレリンという物質が出てくる。これは休眠状態の種子に「起きろ!」って命令する物質なんだ。目覚まし時計みたいなものだね。
ジベレリンという物質が出てくると種子の中でアミラーゼという物質が作られる。こいつは胚乳とか子葉の中にたくわえられている養分をエネルギーに変えるための物質なんだ。
何しろ発芽ってのはエネルギーがいっぱい必要だ。だから、エネルギーを作る必要がある。君だって朝起きてから、学校に行くのはだるいだろう?だからちゃんと朝食を食べて元気に出かける。それと一緒だ。
正確にいうと、アミラーゼは種子にたくわえられた養分をブドウ糖に変換し、呼吸によって得られた酸素とブドウ糖がくっつくとエネルギーの元になる物質(ATP)と二酸化炭素と水が出来上がる。
養分をそのままエネルギーにしちゃえばいいんじゃないかと思うかもしれないけど、デンプンとか養分ってのはそのままじゃエネルギーにならないんだ。何しろエネルギーを作っているやつは小さい。デンプンってのはエネルギーを作ってるやつからすると大きすぎるんだ。
だから、ブドウ糖っていう小さい物質に変えないとエネルギーを作れない。ちょうど、赤ちゃんにとっての離乳食みたいなものなんだ。ご飯そのままだと食べられないから、煮たり、すりつぶしたりする。それでやっと赤ちゃんは食べることができる。エネルギーもそういう感じなんだ。
まずは水が必要な理由がわかったかな?胚が水を吸うとジベレリンという名の目覚まし時計がジリリリリと鳴る。すると、寝ていた種子が起きて、発芽の準備をし始めるってわけだ。
空気(酸素)が必要な理由
これはもう分かるよね?発芽のエネルギーを作り出すためには酸素が必要なんだ。よく、発芽の3要素で「空気」って習うでしょ?正確に言うと「酸素」なんだ。
種子ってのは何もしてないように見えて実は呼吸してるんだ。呼吸して酸素を取り入れて、その酸素を使って発芽のエネルギーを作ってる。
人だって呼吸するだろう?呼吸ってのは、生きていくためのエネルギーを作りだす酸素を体に取り入れる活動なんだ。
ところが、ややこしい植物もいる。なんと水の中でも発芽する。
イネだ。
発芽の条件を空気に触れていること、と覚えているとイネの存在はさっぱり意味がわからない。ただ、根本的には「酸素が必要」と知ってたら理解できる。そう、水の中にも酸素は溶けている。
イネは水の中に溶けている酸素を使ってエネルギーを作り出して発芽しているんだ。
ここまでの話で発芽に土や肥料が必要ない理由がわかったかな?土や肥料がなくても種子の中には発芽に必要なエネルギーを作り出すカラクリがあるからだ。
適当な温度
適当な温度が発芽に必要ってのは戦略的な理由によるものだ。寒いのが嫌いな植物が真冬に発芽してしまったらどうだろうか?生きていけないよね。
だから、適当な温度になるまで種子は眠っているようにプログラムされている。
それから適当な温度っていうのは「暖かい」って意味じゃない。その植物が生きていくために適した温度って意味だ。植物は好きな温度、嫌いな温度がある。ちょっと寒いのが好きな植物もいれば、めっちゃ暑いのが好きなのもいる。
自分が生きていくのに最適な温度って意味なんだ。
また、寒い時期が終わって徐々に暖かくなってくる頃が好き、という植物もいる。そういう植物は低温状態から温暖状態になってきた時点で発芽しようとする。もちろん水も空気(酸素)も欠かせないけどね。
ちなみに、種子に発芽の合図をおくるのはジベレリンだ。発芽するな!という物質もある。アブシジン酸だ。
中学受験では出てこないけど、覚えておいて損はない。物事には必ず仕組みがある。理科は自然の仕組みを教えてくれる科目だ。なぜ発芽するのか、どういう仕組みなのかを知っておくと自然の仕組みが分かってくるようになる。
そして、テストでいい点数が取れる。
どうして胚乳がある種子とない種子がある?
有胚乳種子と無胚乳種子の違いは胚乳があるかどうかだ。でもなんで胚乳があったりなかったりするんだろうか?
日本植物生理学会ウェブサイトで東山哲也先生(回答当時は東京大学大学院所属、現在は名古屋大学の教授)が回答してくれている。
「よくわからない」と。
でも胚乳ができる種子とできない種子が出来上がる仕組みは分かっている。OK、じゃあ仕組みについて見ていこう。
種子ができる仕組みは被子植物と裸子植物で違う。
被子植物と裸子植物は知ってるかな?胚珠(はいしゅ)が子房に包まれているのが被子植物、裸子植物は胚珠(はいしゅ)がむき出しの植物だ。
被子植物では柱頭に花粉がくっついて花粉管が伸びていく。すると花粉管から二つの精細胞が胚珠の中に放出される。一つは卵細胞とくっついて胚を作りだす。もう一つは中央細胞とくっついて胚乳を作りだす。
この二つには順番がある。1番目は卵細胞と精細胞がくっついて胚のもとを作る。2番目は中央細胞と精細胞がくっついて胚乳を作りだす。
胚乳は1番目の受精が起きないと発生しない。1番目と2番目は種子を作る上でセットだ。これを重複受精という。
図にするとこんな感じになる。
重複受精のメリットは、胚ができてもいないのに胚乳を作らなくて済むことだ。無駄が省けるってわけだね。
裸子植物だと胚乳だけつくっちゃったみたいなことが起き得るわけだ。
胚乳のもとになる中央細胞と精細胞がくっついた後、有胚乳種子はムクムクと胚乳が育つ。しかし無胚乳種子は胚乳が育たず子葉に養分をたくわえるってわけだ。
で、なぜ胚乳がある種子とない種子があるのか、どういうメリット・デメリットがあるのかが「よく分からない」と東山教授は言っているんだ。
後記
理科を勉強するにあたって、各種文献、論文、大学の研究室のウェブサイトなどを読んでいきました。当然、中学受験の参考書や塾のテキストも複数読み、過去問も複数の学校の問題を解いていきました。
そして、分かったことがあります。
中学受験のテキストや参考書って受験に必要な知識が網羅されている代わりに、仕組みや理由についてはさらっとしか書かれていないんですよね。
仕組みや理由が分からないと知識が頭の中でつながりません。理科がどうしてもできないというお子さんは知識が頭の中でつながっておらず、必要な知識を呼び出せない状態にあるのではないかと考えております。
なので、一問一答だけでなく、少々学習範囲を逸脱しつつも現象の仕組みや理由を分かっていただく方が良いと考えました。しかも難関中学になればなるほど、単なる知識では解けない問題が出てまいります。
日頃から何故なのかを考える習慣があり、きちんと仕組みや理由を考える頭を身につけていると応用問題をしっかり解けるようになります。
少しでも理科に興味を持ってくださると幸いでございます。
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