【中学受験】暗記は最強の学習方法 暗記とは何か・暗記の仕方について(後編)

というわけで本日も最強の学習法、暗記についてやっていきます。暗記の仕方、方法論、ダメな暗記法についてなるべくわかりやすく書くつもりでございます。
前回のまとめ
前回記事では暗記についてと、暗記の方法についてさわりだけやっていきました。本日はより詳細にいきたいと思いますが、まずは導入編から知りたい方は前回記事を読んで見てください。
記憶とは
①情報を受け取り②情報を保ち③呼び出す、一連の所作のことを記憶と呼称しております。私たちは、②の情報を保つ部分に着目してしまいがちですが、記憶が記憶であるためには一連の所作が必要なんですね。
とくに「③呼び出す」が衰えてくると、それは忘れっぽいとか、もの忘れとか称されるようになります。また、衰えなくとも記憶を呼び出すための神経回路がしっかりと出来上がっていないと、試験では当たり前のことながら良い点数が取れないわけです。
ちなみに人の脳ってのは一度保った情報は頭の中にしばらく消滅せずに保持されているそうですよ。
というわけで実は覚えられないのではなく、呼び出せない。これが記憶力が悪いと言われる現象の本質であります。
効果的な記憶のポイント
記憶の一連の所作のうち、「③呼び出す」ステップを鍛えることが記憶、つまり暗記にとっては重要です。脳の働きを考えてみてもね。
だから、効果的に記憶するには覚えようとするよりも、呼び出そうとする方が効果があるんです。これって、経験的にもしっくりきますね。
したがいまして、呼び出そうとする訓練を繰り返し行って、呼び出すための回路を脳に作り出すのが暗記のポイントでございます。
暗記の種類
単純暗記
単語、漢字、ことわざ、都道府県、県庁所在地、元素記号など、単純な言葉や物事を覚えるための暗記を私は勝手に単純暗記と呼んでおります。
わざわざ単純暗記と言っておりますのは、もう一つの暗記である概念暗記と暗記の方法が違うからです。
概念暗記
そのものズバリ概念を暗記するのが概念暗記です。例えば、フェーン現象ってなに?とか、浮力ってなに?とか、日ソ共同宣言の歴史的意義ってなに?とか、登記の第3者対抗要件ってなに?みたいな。
こういった概念の暗記は単純暗記と違う方法で暗記します。その辺りは後ほど。
暗記の効能
ちゃんと暗記をすると基本問題がたちどころに解けるようになります。なぜなら基本問題ってのは暗記した知識を呼び出すだけで解ける問題だからです。
また、応用問題を解くための基礎的な知識を身に付けることができ、身につけた基礎的な知識を組み合わせたり、基礎的な知識を使って隠れた条件を発見し、解答することができるようになります。
もっと分かりやすく言いますと偏差値40くらいの子供が1ヶ月暗記をしっかりやると偏差値が20上がります。
なぜなら偏差値40くらいの子供はそもそも覚えるべきことを覚えていないからです。覚えるべきことを覚えたら偏差値20くらいは余裕で上がります。逆に言うと、一般の模試で偏差値60未満の子供ってのは覚えるべきことを覚えていない状態で模試に臨んでるんです。
何の根拠があってそんなこと言ってるのかって?私ね、基礎知識をしっかり身につけていない子達をマルキ・ド・サドも真っ青の暗記責めにして成績を上げてきたんですよ。中学受験界きってのサディストなんですね。
その時の様子はこちらで書いてます。
基本問題を解けるようになる
ちゃんと暗記すれば基本問題が解けます。実際の入試問題でも基本問題出てきますよ、バッチバチの基本問題。基礎知識の暗記だけで解けちゃう問題。
応用問題を解く基礎的な知識が身につく
何度も言いますが応用問題というのは基礎知識の組み合わせ、あるいは基礎知識を活用できる条件が隠れている問題のことです。
基礎知識がないと応用問題が解けないのは、解くための土台がないから解けないということなんです。
で、基礎知識って何なの?ということが参考書にはきちんと定義されていないから、ハテナ?となる。よく過去問集とか、参考書とか、合格体験談で言ってますよね、「基礎をしっかりやると成績が伸びる」って。でも成績が悪い子は基礎が何なのかよくわかりません。そうした子の親御様だって、「基礎って何?それ食えんの?」という状態になっていると思います。
そこまでひどくないって?じゃあ、しっかりやると成績が伸びるとかいう基礎についてちゃんと定義してみてくださいよ。できないでしょ?だから困ってるんだと思います。私だって中学受験やってた時は困ってたんです。
基礎って何なんだ?と。
はい、そこで正解を言ってしまいます。
基礎というのは暗記で身に付けることができる知識のことです。
考える力に逃げてはいけませんよ。考えるためには基礎的な知識が必要です。基礎的な知識がないのに考える、ってのは野球のルールを知らないのに野球の試合をするようなものです。
まずは基礎知識、そしてそのための暗記。
暗記の大原則
暗記にはちゃんとした方法があります。自己流でやるのも結構でございますが、まずは人生の先輩の言うことをちょっぴり聞いてみるのも一興ですよ。
暗記の大原則を紹介していきます。
大量に一気にやる
例えば100個の漢字を覚えるのに、20ずつ小分けにして5日間でやろうとする人がいます。ファッッッッッック!違います、違いますよ!
一気に大量に覚えるんです。なぜならそれが最も効率が良いから。20だろうが100だろうが、翌日には同じくらいの割合の漢字を忘れてます。というか脳から呼び出せません。
小分けにするから覚えやすいなんてことはありません。それよりも、一気に覚えてしまい、思い出せない漢字を特定して、思い出せない漢字にフォーカスして徹底的にやるんです。
覚えるのに時間をかけない
時間をかけて覚えようとする子供もいます。これも違います。
情報は目に入って、読んで、声に出した時にはすでに頭に入ってるんです。だから、あとは呼び出す回路を作るための訓練をするだけです。
単純暗記でしたら、パッと目で見て一回読む。そしてすかさず隠して読んで書いて見る。勢いでいけます。
概念暗記は覚えるのにちょっと時間がかかりそうな気がしますよね。でも、覚えるのに時間かけちゃダメです。パッと見て一回読んで、すかさず隠すんです。隠した直後はあやふやですよね。あやふやなまま必死で思い出し、口に出してみてください。きっとボロボロなはずです。
で、必死で思い出し、ボロボロな音読をやった後、もう一回概念を見て読む。そして隠す。概念暗記は一回で覚えるんじゃなくて、何回も正解を見て、隠して、さらに正解を見て、隠して・・・と、やるんです。そうするうちに10回くらい唱える頃には言えるようになってます。
暗記の初期には覚えることに時間をかけるのではなく、呼び出すための回路を作ることに時間をかけましょう。真面目であることと、試験に受かることは全然相容れないことですヨ。
記憶を呼び出すことに力点を置く
暗記は記憶を呼び出すための回路作りです。
具体的に言いますと、単純記憶では唱える、書く、唱える、書くを繰り返し行いますが、その時に答えを見ずに思い出しながらやるんです。
例えば、漢字の暗記であれば正解である漢字や読み仮名を隠す。隠した上で頭で思い出しながら唱えて、書く。
オススメは緑と赤のマーカーを使い、緑と赤の下敷きを使い正解が見えない状態で唱えて書くやり方です。これなら正解を呼び出す作業を繰り返し行うことができます。
いいですか、もう一度言いますよ。暗記ってのは覚えるんじゃなくて呼び出す訓練なんです。
覚えられないものを何度もやる
暗記をしていると記憶できない、つまり呼び出しにくい言葉や概念は必ず出てきます。
それはすなわちチャンス。呼び出しにくい言葉や概念が出てきたら必ず付箋なり、赤線なり、カードなりに控えておきましょう。これは宝物です。抱いて寝ましょう。そして何度も何度も覚えるように反復訓練をしましょう。
そのうち苦手なことがなくなっているのに気づくはずですよ。
さあ、あとは暗記する対象ごとに暗記する方法を変えて臨むだけです。やればできる。
単純暗記
対象
単語、漢字、ことわざ、都道府県、県庁所在地、元素記号など、単純な言葉や物事が単純暗記の対象となります。
単純暗記の方法
さて、単純暗記の方法をお料理手順式に紹介していきましょう。
①暗記する対象をさっと見て、読む
例)検討 物事をいろいろの面からよく調べ、それでいいかどうか考えること。
1回見て読んだらそれ以上は深入りしないでくださいよ!ここまで5秒。
②唱え、書き、見る
さあ、熟語ドリルを隠してください!
そして、書く。検討。
そして、声に出して読む。けんとう。
そして、意味を唱える。「物事をいろいろの面からよく調べ、それでいいかどうか考えること」
そして、自分の書いた漢字を見る。
この繰り返しを10回やりましょう。
ここまで25秒。
そして間髪入れず次の熟語に移る!
例)忖度 他人の気持をおしはかること。
書く!「忖度」
読む!「そんたく」
意味を唱える!「他人の気持をおしはかること」
これを100個と言わず、500個やって御覧なさい。ZONEに入りますよ。超ヤバい領域に入り、脳みそがトランス状態になります。
500個終わったらどうするかって?寝るに決まってるでしょう!
単純暗記のポイント
暗記は記憶を呼び出すための回路作りです。ですから、書く、読む、唱えるという各段階で記憶を呼び出しながら行いましょう。つまり、答えを見ない。あるいは答えを隠す。
これが単純暗記のポイントです。
概念暗記
対象
概念に関する暗記が、概念暗記の対象となります。分かりやすく言いますと厩戸皇子が考えた17条憲法の17条を1条ずつ条文を覚えるのは単純暗記、17条憲法の歴史的意義を覚えるのは概念暗記です。
方法
一問一答形式にするのが概念暗記のやり方です。
例えば、こんな風に一問一答にします。
常緑樹:一年中、緑色の葉がある木のこと
落葉樹:冬になると葉が枯れ落ちる木のこと
上記は一問一答になってますね。
なぜ、一問一答にするのかを説明します。塾のテキスト、参考書は大抵一問一答になっておらず、説明書き形式の文章となっております。これを暗記しようとすると、文章をそのまま覚えなくてはなりません。
暗記においては覚える対象の情報量を圧縮した方が効率的です。
単純暗記では既に圧縮されておりますが、概念暗記は圧縮されていません。すなわち一問一答化するというのは圧縮する作業のことなんです。
そして、一問一答化した概念を単純暗記と同じように10回唱えます。この時の注意点は書かないことです。理由はシンプル、効率的ではないからです。
覚えてから1日経ってから、一問一答を見て概念を指す言葉を呼び出したり、あるいは言葉から概念を呼び出したりして記憶を呼び出すための神経回路を強化していくんです。
概念暗記のポイント
一問一答にするのが最大のポイントです。これ、親御様が手伝ってあげた方が良いように思いますが、本来は受験をするお子様が自分でやった方がいいことです。
なぜなら、一問一答にするためには文章を問題化する過程で「何がポイントなのか」を自ら考える必要があるからです。この過程を踏むと、単なる一問一答ではなくその単元におけるポイントが分かり、記憶として定着しやすいんです。
時間があるならば是非、参考書(塾のテキスト)を一問一答化していくことをお勧めいたします。
暗記は最も効率が良い勉強法
暗記をバカにしてはいけません。詰め込み教育だって?詰め込み上等。知識なくして、正しく考えるのは不可能ですよ。
受験勉強(試験勉強)ってのは過去の本当に頭のいい人たちの思考を正しくトレースするための訓練です。オリジナルの思考なんて必要ありません。ちゃんと勉強していない人の考えなんてものは妄想です。妄想じゃ点数は取れません。
だから正しく知識を身に付けるんです。すなわち暗記。暗記ラブ。イェー!
成績上位者は頭が良いのではない
大学に進学した当初、全国模試で1位を取っただの、なんちゃら予備校のトップクラスで1位だっただのという人たちが山ほどいました。
で、そんな人たちを見ていて私が思ったのは、
「こいつら頭の作りは凡人と変わりねぇぞ。(一部を除いて)」ということでした。
でもね、彼らが秀でていたのは、新しい概念や知識を習得するために必要な学習方法を分かっていて、その重要性を理解しているというだけなんです。
彼らは生まれつき頭が良いのではなく、正しく物事を把握し理解するための方法論を確立していたんです。
成績下位者、もしくはその親御様はそういった人たちのことを生まれつき頭が良いとか平気で言ってしまいます。頭がいいからできるんでしょ、あの人たちは私たちとは違う生き物なの、的な。
あえて言います。そりゃ言い訳ですよ。頭がいい、頭が悪い、と勝手にレッテル付けして正しい努力をしない言い訳を作ってるだけです。あるいは成績が悪いことの言い訳ですね。
違います、正しくやりゃできるんですよ。大学受験レベルまでの学習なんてのは正しい方法と努力でどうにかなるんです。成績上位者はそれを愚直にやってきて、そうでない人たちは言い訳を作ってやっていない、ただそれだけです。
頭がいいって言われている人たち、何やってたと思います?ちゃんと暗記学習してましたよ。
正しい暗記と考える力の関係
考えるってのは、考えるための材料がなくては成立しません。
いいですか、材料がなかったら正しく考えられないんです。
材料集めしてますか?してない。あ、そうですか。じゃあ材料集めしましょう。具体的に言いますよ。必要なことを愚直に暗記しましょう。
考えて答えを出すってことは既存の知識を組み合わせて、解答を導くことなんです。つまり、既存の知識がなかったら考えるということは成立しません。
にも関わらず、知識の習得を怠っている人たちが多すぎます。
さあ、暗記しましょう。正しい知識の上に、正しい思考があり、その結果が試験では求められるんです。
暗記や詰め込みをバカにしてはいけません。全ての礎になるんですから。
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