【中学受験】塾の選び方決定版 日能研、SAPIX、早稲田アカデミー、四谷大塚の特徴比較

【中学受験】塾の選び方決定版 日能研、SAPIX、早稲田アカデミー、四谷大塚の特徴比較

塾によってかなり大きく特徴に違いがあり、向く子供と向かない子供がいます。なので、中学受験大手4塾とその特徴をまとめていきましたよ。

各塾の特徴

日能研

私がさんざん「資料が分かりにくい」とこき下ろしてきた日能研ですが、テキストは素晴らしいです。思想を感じます。

ただし、中学受験に成功する、という目的に冷徹になれていません。

授業も「なぜなんだろう」「どうしてそうなるのか」と、子供に考えさせ、テキストに書き込ませる訓練を通して思考力を培っていくスタイルです。中学受験塾というよりは子供の潜在能力発掘塾です。

だから、(中学受験塾の資料としては)分かりにくい、分かりにくい、と私が資料に文句を言っていたんですね。

日能研は本気です。本気で子供の能力開発をやろうとしています。

その意気込みがテキストや授業スタイルから伝わってきます。こき下ろしてごめんなさい、日能研。

 

あえて遠回りをしてでも中学受験の学習にとどまらない本質的な思考力を身につけさせようとしているのが日能研です。

しかしながら、中学受験で求められるのは本質的な思考力ではありません。

算数だったら、基本的な解法を覚え、解くための勝ちパターンを覚え、勝ちパターンに結びつけるため問題文の算数的読解能力を身に付けるのが近道です。

国語だったら、類型的な問題を解くための方法を覚え、問題文から解答のパーツを拾い集める技術を習得し、解答のパーツを組み上げて解く技術を身に付けるのが近道です。

理科、社会は教えたことがないので知りません。

 

そんなこと日能研の偉い人たちは百も承知でしょう。それが合格実績を上げることにつながるのも当然知っているでしょう。

でもやらない。

圧倒的思想ッ・・・!!!

 

かつてはNのリュックサックを背負った子供たちがわんさかいたものですが、最近は見る機会も減ってきました。寂しい限りです。

日能研の学習理念に基づく学習法では冷徹に中学受験合格を目的にして勉強してきた子達には普通はかなわないと思います。だから、難関校を狙いたいと親が強く考えていたとしたら日能研は向かないです。

さて、総括します。

日能研に合う子供

じっくりと問題に向き合って、どうしてそうなるのかという裏側のロジックに興味を持てる子。

言うなれば、花を見て「どうしてお花が咲くんだろう?」とか、あるいは空を見て「どうして空は青いんだろう?」と疑問を持って、親の話に耳を傾けたり、自分で調べるのが苦にならない子。

学校の成績は良くないかもしれませんが、鋭い観点を持って時々親をも「はっ」とさせるような一言を放つことができる子。

日能研に合わない子供

競争が大好きで、人に勝つことを至上目的としている子。いや、言い方悪いですね。負けん気が強い子と言い換えましょう。

こういう子は日能研の学習に飽きてしまいます。刺激に乏しいからです。

例えば、ゲームをして負けるとコントローラーを放り投げ、泣きわめき、もう一回勝つまでやらないと止めない!と言う子、こんな子供は日能研に向いていません。

SAPIXの特徴

SAPIXのテキストは目的に対して合理的です。つまり、中学受験に受かるための冷徹なテキストになっています。小学生では消化不良になってしまうのではと心配になるくらいの量と、一つの単元(たとえば植木算とか食塩水とか)においても多角的に問題を解く方法があると教えてくれるのがSAPIXのテキストです。

量が多いのは問題を解くためのパターンをたくさん身につけさせることを意図しています。

目的に沿った学習という意味では大変優れたテキストです。誤解を恐れずに言うと受験ターミネーター育成塾です。

 

ですから、SAPIXでは復習主義です。さすがに一度の授業で学べる分量ではありません。復習によって、解放パターンを体にしみこませるのを眼目としています。「らせん階段状学習」を提唱しているのもそれが理由でしょう。

習う→繰り返し学習する→記憶に残る→体に定着する

そして未知の問題でも解放パターンの何を使えば良いのかがわかる。まさに学習の本質をついています。

 

また、競争という点でも徹底しています。

SAPIXのクラス分け

SAPIXでは成績によって冷徹にクラスが分かれています。A〜Kまでの一般兵卒クラスとα以上の士官クラスです。Aが突撃二等兵で、α1が受験サイボーグもとい受験ターミネーターが入るクラスです。

 

親たちは一つでも上のクラス、あわよくばαクラスに入るために血眼です。

 

このクラス分けは組み分けテストとマンスリーテストの成績に基づきます。

子供達は何度も何度もテストによって組み分けされ、それによって親からの愛情を勝ち得て、自分の存在意義を発見する、と言ったら大げさですかね。いやいや、私が講師を行なっていた経験上、そんなところだと思いますよ。

SAPIXに合う子供

とにかく競争が大好きで、人に勝ちたい、人よりも知識を得てギャフンと言わせてやりたい、という子供に大変向いています。

 

人に勝つため、自分の存在意義を見つけるためだったらゲームの時間も我慢して勉強に勤しむことを苦にしない子供。

 

ちょっと否定的な言い方になってしまいましたね。ただ、私はそれでいいと思います。勝ちたい、という欲求は人の本質的な欲求ですから。

人に勝つために努力しているうちに、努力は裏切らない事実に気づき、努力の大切さを知る、これだって大切な学びじゃないですか?

 

日能研に合う子は花を見て「どうしてこんなにきれいなのかな?」と考えるとしたら、SAPIXに合う子供は「この花の雌しべと雄しべの形状はこうで、花弁は6枚、多年草なのでほにゃらら。どうだお前ら知らないだろ?」という具合です。

ま、合う合わないの前に入室テストに受からないと入れないですけど。

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SAPIXに合わない子供

空を見て「どうして青いんだろう?ママ?」と聞いてくる子供はいけませんね。SAPIX向きじゃないです。

空を見たら「光のスペクトルは波長によっておおよそ7色と人間には認知され、そのうちでも青は散乱しやすいため、空は青く見えるんだよ。ママ知らないでしょ?」と言う子供がSAPIX向きです。

のんびりした子供をSAPIXに放り込んだ日には、ライオンの檻にウサギを放つようなもの。そういう子は違う道を歩ませてあげたほうが良いです。

 

のんびりした子が頭が悪いと言っているわけではないですよ。人は辿るべき道を辿るべきだと思うだけです。行き着く先なんてそうそう変わるわけじゃないですから。

 

特性によって過程が違うだけですよ。どんな道を辿ったとしても開成は開成です。

 

SAPIXで下位クラスに甘んじているとしたら、その子に合っていませんのでとっとと転塾したほうがいいと思います。

何故、SAPIXで下位になるのか、どうしたらいいのかは↓で書いてます。お子さんが頭が悪いのではありません。やり方が合わないだけです。

 

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早稲田アカデミー

熱血指導だとか、ねじりハチマキだとか昭和の雰囲気が漂ってくる早稲田アカデミー。

いいじゃないですか!昭和!

野球選手はみんなどでかい犬の顔をプリントした灰色のトレーナーに下はジャージ、ピッカピカのエナメルの靴にセカンドバッグ。それが昭和。

合格ハチマキを頭に巻いて、「お前ら!この一問が解けなかったら第一志望は受からねえぞ!気合い入れろ!」という講師の檄に思わず鉛筆を動かすスピードが速くなる。それが早稲田アカデミー。

 

なわけないでしょう。

 

早稲田アカデミーがこんなふざけた印象を持たれているのは、講師が生徒に積極的に介入するからですよ。

日能研は思想の塾です。SAPIXは冷徹な学習メソッドの塾です。両者は学習システムで授業の質を担保しているんです。早稲田アカデミーは講師が生徒に積極的に介入することで質を担保しているんです。

早稲田アカデミーが熱血だとか、前時代的だとかいうのは表面的な理解です。

ただ、講師の力に依存している点は注意です。良い講師だったらいいのですが必ずしもそうとは限りません。

ちなみにテキストに日能研やSAPIXほどの特徴はありません。

早稲田アカデミーに合う子供

思想と冷徹の間あたりにいる子供ですね。

つまり、ボケーっとした子供には向いてます。あ、すごく言い方悪いですね。生来の知的好奇心が乏しく、かと言って競争心のない子供ですよ。あ、もっと悪くなってしまいました。

いい意味でも悪い意味でも中庸な子供のやる気スイッチを入れてくれるのが早稲田アカデミーです。こんな子が日能研に入ったら頭がお花畑になってしまいますし、SAPIXに入れたら心身をやられます。

早稲田アカデミーに合わない子供

人の言うことを聞かない子供や妄想癖のある子供は向かないでしょう。基本的に人の言うことを素直に聞く子供に向いてます。なぜなら講師が積極的に介入してくるからです。人のいうことは素直に聞くけど凡庸に見える子供にはうってつけの塾です。

人の言うことを聞かない子供はSAPIXへ、妄想癖のある子供は日能研へ。そして普通の子供は早稲田アカデミーへ。

早稲田アカデミーは普通の子供が集まるという意味で学校的です。これは想像に依りますが、イジメや嫌がらせは一定数あるのではないかと思います。SAPIXの生徒だったら「くだらねえなあ」と思うようなことをする子、日能研の生徒だったら「人の気持ちを考えようよ!」と制止するようなことをする子がいるのでは、と思ってしまいます。あくまで想像ですが。

四谷大塚

最後に四谷大塚です。昔は準拠塾の子供が日曜教室に通って、正会員やら準会員やらの称号を手にするために必死になっていた象牙の塔、それが四谷大塚の印象でした。

日曜にテストやってるクソ面倒臭い塾という印象しかなかったですね。

ところが最近は直営店舗が幅を利かせ、準拠塾以外でもテストを受けられると言うオープン体質に変わってきました。

 

四谷大塚のテキストは今も昔も「予習シリーズ」です。このテキスト、すごくいいんです。素晴らしいの一言。30年以上前から生き残っていて、その間にブラッシュアップを重ねているテキストです。「予習シリーズ」を手に入れるためだけに四谷大塚に入ってもいいくらいです。

何がいいって説明が分かりやすくて、思想に偏ることもないですし、受験ターミネーターを養成するためのテキストでもなく、読んでいて飽きがこないんです。

ただし、非常に優秀なテキストなのですが偏った思想がないんですよね。思考力を鍛えるとか、受験サイボーグを養成するとかいった一貫性を持った思想がないので、他と比べると凡庸に見えてしまうのが欠点です。分かりやすいんですよ。でも凡庸なんです。

四谷大塚に合う子供

一部の妄想癖のある子供とか、競争心の塊のような子供を除けばかなり広い範囲の子供が向きます。一般的とも言い換えられるでしょう。だから、特殊な子供を除けば誰でも大丈夫です。

間口が広いのが四谷大塚の特徴です。

どこの塾に入れるかで迷ったら四谷大塚。そう断言します。

四谷大塚に合わない子供

極端な性質の子供は向きません。なぜならテキストも授業も中庸だから。想像力が豊かな日能研向きの子供は「もっとたくさん教えてよ!」と思うはずですし、競争が大好きなSAPIX向きの子供は「刺激がねえ!バーボン持ってこい」となります。

子供の性質別、向く塾・向かない塾

大手中学受験塾の特徴とそれぞれの塾に向く子供を図にしてみました。

大手中学受験塾ポジショニングマップ

というわけで、それぞれの塾に向く子供の特徴と、自分の子供が通うべき中学受験塾が理解できましたでしょうか?

何にでも疑問を持つ子供だったら日能研、競争心と負けん気が強い子供はSAPIX、そのどちらでもない子供だったら早稲田アカデミーで講師と必死の特訓、決め手に欠いたらカバー範囲の広い四谷大塚

塾によって優劣あるのか?

私は子供を中学受験させるのだったら絶対に大手塾に入れるべきと考えています。

テキストの錬成度、講師の経験、最新の傾向、全てにおいて頭数に勝る大手塾に中小塾はかないません。かなうとしたら講師の質です。それも一人か二人の講師が情熱を持ってやっている塾であればの話です。

講師の人数が多くなると経営合理性が求められるからです。一言で言うと、向いている方向が生徒じゃなくなるんです。

 

なお塾による優劣があると考えて塾選びをするべきではありません。あくまで自分の子供の特性から塾は選ぶべきです。ぴったりハマればSAPIXじゃなくても御三家にいけます。

 

だって、中庸だと私が言っている早稲田アカデミーの御三家実績だってこれですよ。

中学名早稲田アカデミー合格者数全合格者数早稲田アカデミーの合格者割合
開成中学93名388名24.0%
麻布中学54名378名14.3%
武蔵中学67名185名36.2%
桜蔭中学63名280名22.5%
女子学院中学73名275名26.5%
雙葉中学40名120名33.3%

武蔵中学はSAPIXを上回ってます。SAPIXが武蔵中学を軽視しているというよりは、武蔵中学に対応しようとしたらテキストを見直さなくちゃならないのでSAPIXは武蔵中学の合格実績が少ないのでしょうね。

SAPIXは開成中学、桜蔭中学に対応しておいた方が合格実績にも箔がつきますし、特化した方が実績が出るという経営的判断で武蔵中学をあえて捨てているのだと思います。

大手4塾の経営的ポジショニング

さて、大手4塾ですら想定する生徒の特徴に大きな差があります。

この差は経営上のターゲット選定によるものでしょう。ターゲティングと差別化は事業戦略においては基本中の基本です。

大手4塾のうち、3塾、すなわち、日能研、早稲田アカデミー、SAPIXは想定ターゲット層が被らないんです。この主要ターゲット層は子供の特性によって分けられます。子供の特性別にうまくポジショニングを考えていますね。

四谷大塚は全ての層に対してアプローチができる分、顧客層が広いと言えますが、その分、全ての層における塾と競合関係にあります。経営的に考えると、四谷大塚は戦略を変更する必要性に迫られていると考えます。

四谷大塚は「予習シリーズ」と言う優秀な教材に支えられて全国津々浦々に準拠塾という形でそのネットワークを伸ばしています。それは強みです。

ただ決め手に欠く、と。

 

そのうち四谷大塚は優秀な教材を持っている強みと、教材を編纂する優秀な講師たちの力で中高一貫公立中学市場に力点をうつしていくんじゃないですかね。そこにはenaという競合兼パートナーがいるわけですが。

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