【中学受験】やる気のない子がやる気を取り戻す方法 やる気スイッチはどこにもない
やる気がなけりゃ始まらない。
やる気がない子をお持ちの親御様は苦心惨憺、臥薪嘗胆、あの手この手でやる気を出させようと釣り出して、最後はくぉらっ!と一喝。
そんな毎日に疲れ果て、髪を振り乱して中学受験本を読んでみると、
「感情的に怒ってはいけません。怒るよりも子供の目線に立って一緒に考えてあげることが大切です」
いやはや素晴らしいお言葉ですよね。誠に親のかがみ、いえ、人として正しい姿ここにあり、でございます。
But…
お前、それ、うちのぐうたら息子(娘)目の前にして同じこと言えんの!?ふぇーい!
込み上げてくるイライラでぺんぺん草も生えませんよね。
さて、自分のお子さんだけ見ていると「やる気がなくてやべえ」と思いがちなのですがやる気がない状態って結構普通です。
って言うか、最初からやる気がある子なんてほとんどおりません。
なぜか?
結論から言ってしまうとやる気があるから頑張るんじゃなくて、頑張るからやる気が出るからなんです。
実は多くのみなさまが考えている「やる気→頑張る」という順序ではなく、本当は「頑張る→やる気」です。
逆なんです。
ではやる気がない状態とは何か?
頑張るとやる気が出る。だから、頑張ればいい。でも頑張れない。だからやる気がない。
言い換えますと、やる気がない状態は、頑張るための最初のきっかけが見つかっていない状態なんです。
だから最初のきっかけを見つけよう、そんなお話でございます。
まずは私が教えた中で最もやる気のない生徒と向き合った経験談からいってみましょう。
やる気のない生徒たちと向き合った時間
家庭教師やら何やらで結果を出し、感謝され、親子のキャンバスにスマイルを描くのがだいぶ板についてきた頃、私は家の近くの個別指導塾を本拠地にすることにいたしました。
故郷への凱旋。
さらに多くの子供たちを笑顔にしたい・・・、って理由でしたらキレイな話なんですけど全然違います。
中学受験生教えるのって辛いんです。
親御様もお子さんも2、3年という短期間で人生をかけた戦いにのぞんでいる。
1〜2時間程度の授業の進め方を練るのに1日考える時だってあります。
それでも成績が上がらない子もおります。
休憩時間に「どうぞ」と言って出されるお茶菓子も喉を通らない。
お母様の冷静でいながら雄弁な表情が夢にまで出てくる。お子さんの困ったような、疑念を抱いているかのような目の奥。
まぁ労力的にも精神的にも割に合わないわけです。
んで、地元で復習専門の個別指導塾で働くことにしたんです。家庭教師と掛け持ちで。
中学受験生を教えていた経験から、教えるのには結構自信を持っておりました。
さぁ、次は君たちだ。私の偉大なる薫陶を授けよう!未来は明るい!GO WEST!
私が働くことにしたのは中学生向けの復習専門の個別指導塾でした。
基本的には成績の良くない子たちが集まってくるわけです。
ヤンキーを担当することになったらどうしよう、とか、護身術を習っておいた方がいいかな、とか要らぬ心配をして最初の日を迎えたのですが、現れたのはメガネをかけた大人しそうな中学生の女の子。
あれ?想像と違うぞ?
学校の教科書に書いてあることを一通り教えて、問題をやらせてみて、はいおしまい。
おお、なんかいける。大丈夫だぜ。予習要らねーじゃん!超楽!さすが中学生!
その後も担当するのは大人しそうな男の子や女の子。みんな真面目そうなんですね。ちゃんと聞いてくれる。反抗もしない。
でも質問もしない。
びっくりしたのはその翌週。教えたはずのことが全く頭に入ってない。綺麗さっぱり抜けている。おいおいおい、激落ち君でも使ったのかよ!?
で、教科書の内容をもう一度教えてみて、やっぱり「はい、はい」と答えてくれるのですが何とも言えない違和感があったんです。
言葉が入っていかない、言葉がぬるっと通り過ぎていく感覚とでも言いましょうか。
で、試しに教科書を音読させてみたんです。
そしたら全く意味が分からない。語と語がつながってない、全然何も伝わってこない。
日本語のはずなのに日本語に聞こえない衝撃。
この時、初めて気づきました。
この子、いえ、この子らは問題を解くとかなんとかいうレベルに到達していなくて、そもそも教科書に書いてあることの意味が分かってない。
しかも今やっていることを説明しても、もっと前の段階の理解がないから意味が分からない。
つまり、どこかでつまづいていて先に進めていない、そう考えましてどんどん縮んでいって原因を特定しようとしたわけです。
移項の意味が分からない?プラスとかマイナスの演算が頭に入ってない?計算の順序?
で、記憶が少々曖昧なのですが確か小学校で習う計算のルールまでさかのぼって教え、やっと今やっていることが何なのかを説明できるようになった、つまりスタートラインに立てたというわけです。
おそらくこの子らは学校で勉強していることの意味が分かっていない。意味が分かるにはもっと前段階からやり直す必要がある。基礎が大事だ。ただ、そんなことを教えてくれる人もいなかったに違いない。どこかで努力したかもしれないがうまくいかなかったはずだ。そして復習専門塾に来ている。なんとか成績をあげたいと思っているから。親が。
この時、気づきました。
頭が悪いのでも、努力していないのでもなくて、諦めちゃってるんです。
失敗して失敗して失敗して、努力をしてもうまくいかなくて、やがて心が閉じてしまった。
この子たち、表面的にはめちゃくちゃやる気なかったです。
宿題もやってこないし、覚えろといったことも覚えないし、こうした方がいいよということも全然やらない。
でもね、厳密に言うとやる気がないわけじゃなくて、努力は意味がない、すなわち自分は勉強しても無駄だと悟ってしまった状態なんですよね。
よく失敗から学ぶとか言われますよね。
勉強で言うなら間違えた問題をきちんとやり直してみよう、とかね。
確かに真理をついていると思いますよ。
ただ、私は失敗から学ぶってのは強者の理屈だと思ってます。
なぜなら、失敗から学ぶってのは、
失敗した→失敗の理由を考えた→失敗しないように工夫した→もう一度やってみた→成功した→失敗から学んだ
っていうプロセスを経ないとダメだからです。
それができる子でしたらノープロブレム。
でも、できない子はどうしたらいいんですか?
何度もチャレンジして、失敗し続けやがて諦めちゃった子にそれでもまだ挑戦しろとか言うんですか?
私はそれでも頑張れと言うのは恐ろしく非人間的だと思うんです。
ですから、やる気がない子に頑張れ努力しろって掛け声、残酷非道にしか聞こえないんですよね。
しかしながら、言っちゃいがちじゃないですか。「頑張れ、努力しろ、なんでやらないの」って。
さて、私が教えることになってしまったやる気のない子たち、この子たちでも実はやる気を持って取り組んでいた分野があったんです。
さあ、なんだと思います?
正解を言います。
ゲームです。
なぜゲームはやる気があって勉強はやる気がないのか
勉強はちっともやる気のない無気力ガールズ&ボーイズの多くはゲームが超好きでした。
勉強の話は上の空でしたけど、鬼武者とかゼルダとかFFの話を振ると、食いつくわ食いつくわ。
おいおい、一応お金もらってるからゲームの話しかしてないと怒られるんですけどー、なんてこちらがアワアワしてしまうくらい話してくれます。
その中の一人が放った言葉が今でも胸に突き刺さっております。
私「なんでゲームをそんなに長い時間やってられるの?」
やる気ない子「だって、アイテムをゲットしたり強くなったりするの楽しいじゃん」
そうなんです。
ゲームに時間を費やしているとアイテムが得られたり、強くなったりして、やがてボスとか倒せる、つまりは努力に費やした時間が結果になって返ってくるんですね。
面白いゲームってのは努力とレベルアップのバランスが絶妙です。頑張らないとクリアできないけれども、頑張ればクリアできるようになってます。
「たけしの挑戦状」がクソゲーと言われる所以は先に進むのが難しすぎたり、理不尽すぎるからです。
勉強を全くやる気のない子にとっての学校とは「たけしの挑戦状」の世界そのもの。そりゃ行きたくなくなりますって。
学校はクソゲーだと思っているはずです。もしくは塾はクソゲーとかね。
こういう子たちは学校では勉強という努力で何も得られないんですね。それどころか努力すればするほど惨めになるし、お母さんやお父さんや先生から怒られる。
そんなんで努力なんかするわけねーじゃん。
当たり前です。
そんな子には何が必要か?
努力と成果が結びついた、たった一つのささやかな成功体験です。
つまづいちゃった箇所までさかのぼって丁寧に穴を埋めていく。埋まった穴が今やっていることとどうつながっているのか説明し理解させ、解けることを確認する。
「あ、なんかできるかも」
と少し表情が明るくなったら、とにかくできる問題をやる。
考える訓練やら、応用力やらは全く必要なく、必要なのはどこかに埋めてしまった希望を掘り返すことだけ。
中学受験勉強のやる気がない子について
うって変わって、中学受験でございます。
ある程度勉強ができるから中学受験勉強をしている、もしくは塾で授業を受けているから全くできない、学力壊滅状態なんてことは普通ないと思います。
ただ、やる気がない子は確実にいます。
なんでなのか?
塾でやっている学習についていけない。
勉強自体が好きじゃない。
やってもやっても成績が上がらない。
そもそも何のために中学受験をするのか分からない。
あるいは継続的な努力を継続的にほめてくれない、とかね。
色々なケースがあると思いますが、根本的には希望や自信や未来を埋めちゃってる状態にあると考えております。
どうしたらやる気が取り戻せるのかに対して一般的に通用する具体的な解はございません。
なんで埋めちゃったのかは人それぞれだからです。
でも一つだけ言えるのは、頑張った経験が週一のテストや月一のテスト、組み分けのテストで結果として出たら心を塞いでいた何かがふっと軽くなるってこと。
テストでなくても構いません。
「お、すごいね」という一言でも。
そのためには正しい努力が必要です。希望を埋めてしまった「何か」をピンポイントで打ち抜く正しい努力。
大げさな言い方をしてますが、案外些細なことだったりします。
具体的には、
第〜回の図形の基礎が理解できてないとか
登場人物の心情を表す言葉が分からないとか
語彙が少ないとか
場合の数をパターンごとに書き出して理解・納得する努力を惜しんだ結果、何やってるのかさっぱり分からず解き方だけでぶん回しているとか
私は「中学受験生はふとしたきっかけで伸びる」だの「直前期に信じられない伸び方をした」だの「最後の1日まで成績は上がる」だのという言葉が大嫌いです。
これらの言葉は無根拠に何かを信じさせてしまうからです。
再現性もへったくれもない奇跡任せのクソみたいな中学受験ギャンブルに身を投じてしまうのでなく、心を塞いでいる何かを特定して解決していきましょうよ。
まずは少し。少し頑張ったことを結果につなげる。つなげてあげられるよう意図的に仕組むのでも構わないと思います。
仕組むなんて作為的だから引くって?
お子さんが希望を埋めようとしているのに放っておく方がよっぽど私は引きますね。
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