【中学受験】私が今まで見た中で最高の先生の授業 競争と自力学習と成長実感と

世の中すごい人はいるものです。
流血のし過ぎがたたって、とうとうちょっと引っ掻くだけで流血できるようになったアブドーラ・ザ・ブッチャーとか。
魚が好きすぎてついには海で暮らすようになったさかなクンとか。
え!?さかなクンは陸で暮らしているって?
申し訳ございません。顔が魚類に似ているのでつい海で暮らしているのかと勘違いしてしまいました。
身近にもすごい人っているんじゃないですかね。
例えば灘中学・高校の人とか。
以下引用です。
「東大入試の、最後の科目が始まる前の休憩時間、隣の隣の席にいた灘の同級生に『オレ、最後の科目0点でも合格やわ』と言ったら、同級生は『スゴイなー。ま、オレもあと10点やけどな』と答えた。オレらの間にいた他校のヤツは必死で参考書読んでたけど、合格発表見たら、そいつはやっぱり落ちてた」
ある灘高OBが朗らかに語る。
朗らかに語っている割には内容が真っ黒ですね。
「朝起きて歯磨きをする」のと同じ感覚で東大に合格するのですから、普通の人はやってられません。
もちろん、学校や塾の先生の中にもすごい人はおります。
「いつやるの?今でしょ!」の人とかね。ただ、今回ご紹介したいのは「今でしょ!」の人ではございません。だいたい、私、あの方の授業受けたことないですからすごいかどうかも分かりません。
今回は私がこれまでの人生でいっぱい出会った先生の中でも最も優秀だった先生の授業を紹介していこうと思います。
成績が上がる、勉強ができるようになるカラクリを少しでも伝えたいと思いまして。
ちなみにこの先生、授業らしい授業をしませんでした。そして習った生徒ほぼ全員、成績が上がりました。
詳細を書いていこうと思います。
最高の先生が最高たるゆえん
今も先生をやっているのか、どの組織に所属しているのか、ご存命なのかも分かりませんので、仮にK先生と呼ぶことにいたします。
前述の通り、この先生、いわゆる授業をしませんでした。
あ、これ家庭教師とか個別指導塾講師の話じゃありませんよ。集団授業です。
集団授業で授業らしい授業をしないなんて、とんだやらずぶったくりですよね。
でもK先生は授業をしなかった。
そして、授業をしないくせに生徒ほぼ全員の成績が上がった。
何よりもすごいのは、K先生に習うとみんな勉強が好きになるんです。成績が悪かった生徒はもちろん、やる気がなく授業を中断させるような生徒ですらも魔法をかけられたかのように勉強が好きになっていきました。
K先生の授業風景
K先生はいつも紙袋を片手に持って教室に入ってきました。
で、間髪入れずに紙袋からお手製のプリントを取り出し、教室の全員に裏にして配っていきます。
「制限時間10分、はじめ!」の声とともに生徒はプリントをひっくり返して、カリカリカリカリ一所懸命解いていきます。
その間、K先生はご自分の時計をチラチラ見ながら、一言も発しない。
10分経つと、K先生は「やめ!」と言い、答えを読み上げていきます。
生徒は自分で丸つけをします。丸つけをし終わり、各自が点数の計算まで終えると、K先生が「10点!」と言い、0〜10点までの生徒が立ち上がります。
「20点!」と言うと11点〜20点までの生徒が立ち上がり、同時に0〜10点までの生徒が座る。
そんなやり取りを繰り返して、「90点以上!」とK先生が言い、そこで立ち上がった生徒にみんなで拍手をする。
こういうのを50分くらいの授業で3〜4回くらい繰り返し、最後に「次の授業はテキストの××ページから××ページまでやるから予習しておきなさい」と言い授業終了。
これ授業っすよ。何も教えてくれない。
聞きにいくとかろうじて教えてくれますけどもね。まるでペッパーくんです。
では、生徒たちはこの授業を受けてどう変わっていったのか?
K先生の授業を受けて生徒はどう変わるのか?
最初は私もとまどいました。そもそも今まで受けてきた授業とやり方が全く違いますし、予習をしなくても全く怒られないんです。
復習にいたっては、やれという指示すらない。勉強しろ、とも言わない。
これ、予習しないでサボっちゃうんじゃないの?って思いますよね。
ところが、サボる生徒はほぼいませんでしたよ。
この先生、怒りもしない、やれとも言わないのですが、その代わり予習していかなかった時は胸にこんな思いが去来します。
恥ずかしい。
そう、恥ずかしいんです。最初の方で立たないといけない自分がとにかく恥ずかしい。情けない。
で、またお手製のプリントが見事なんです。
基本を分かっていないと解けない問題がズラッと並んでいて、しかも普通に予習しただけだと絶対に解けないくらいの分量なんです。
相当、テキストを読み込んで自分のものにしておかないと最後の問題までたどり着かないってわけです。
授業を受けたあとは本当に消耗しましたね。かなりきついですよ。
でも、楽しいんです。K先生の次の授業が楽しみ、という気分になってしまうのは私だけではありませんでした。
とくに、それまで成績が振るわなかった生徒の変わり方がすごかった。
最初はね、得点が低くて晒し者になるのが恥ずかしいので仕方なく勉強するわけですが、勉強することによって自分の得点が明らかに上がってくるんです。
自分の努力と成長が結びついていることに気づく。
すると、これまで勉強しなかった子が嘘のように勉強し始めるんですね。
勉強に興味の薄かった子が、自分で勉強して、どうやって予習しているのか成績の良い子に聞いたりするようになりました。
自分の力で競争し、自分の力で成長する
プリントで出てくる問題を全部解けるようになりたい。
まぁ、ちっぽけな欲望なんですが、子供にとってはそれが全てです。少なくとも私たちはそうでした。
先生は何も教えてくれない。
でも授業ではプリントが出てくる。
解けないと恥ずかしい。
だから自分で必死で勉強する。
結果が少しずつ付いてくる。
楽しい。
もっと解けるようになりたい。
努力は裏切らないなんて簡単に言う向きがありますよね。必死で勉強すれば結果は付いてくる、と。
でも、大多数の授業は努力が裏切ったのか裏切らなかったのかすら分からない。
だって、必死に努力しても目に見える結果が現れないんですもの。
そりゃ鉛筆を持つ手が止まる子供は出てきますって。
今から考えれば、成績の振るわなかった子たちの方が正常だったんだろうなぁと思います。
目的がぼんやりしている、努力が何につながるのか分からない、成長の実感も感じられない。
こんな状態でそれでも勉強し続けられるって、「うさぎ跳び校庭10周!」とか言われてもヘラヘラしながら10周できちゃう人と同じですよ。
自学自習でプリントを解けるようになるってのは、大げさに言うと自分の努力で未来を切り開ける、っていう肯定的な思いと同じだったんです。
そういうことを私はK先生から学ばせて頂きました。
しかしながらK先生、3ヶ月のピンチヒッターでした。
先生がいなくなってどうなったか?
K先生がいなくなった教室
いなくなってからも生徒は自ら勉強し続けた、なんて言葉が聞きたいですよね。
きれいな物語はきれいなまま終わって欲しい、正常な思いです。
でも現実はそうなりませんでした。
普通の授業をする先生が戻ってきてしばらくすると、また成績の振るわない生徒は振るわなくなりましたし、できる子はできるまま。
また、元の日常に戻ってしまいました。
指導者の責任はかくも重いってわけですが、ここではそんなことを言いたいわけじゃないんです。
自分の力で努力して、自分の力で競争して、自分の力で成長していければ人は変われるって事実をお伝えしたかったんです。
親御様は色々な情報やら、成績の上下やらで悩んでおられると思います。
でも大事なのは、そうした表面的な現象ではなくて、努力を成長として積み上げられているかどうかです。
少しずつでも前に進んでいる実感を持てていれば、多少の成績の上下なんかクソみたいなものです。
成績が振るわないとか、伸び悩んでいるのであれば、打開するためのテクニック以上にお子さんが努力によって成長を実感できているかを考えて頂きたいと思います。
成長の欲求は人の本能だと思いますから。
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