【中学受験】国語物語文で満点取る3つの読む技術 構造・関係性・テーマ
国語の問題文には大きく分けて論説文、物語文、随筆の3つがあります。
その中でも圧倒的に難しいのが物語文。物語文の方が取っ付きやすい気がなんとなくしますので、意外かと思いますが圧倒的に読解技術が必要になるんです。
だって、論説文とか随筆は構造把握と、著者の一番言いたいこと=テーマがそのまま文章に書いてありますし、それを把握すれば解けちゃうんですもの。
それに比べて物語文は構造やテーマの把握に加えて、登場人物の関係性および関係性の変化の把握が入ってきて、かつ論理的に推測するプロセスが必要なんです。つまり読解です。
論説文や随筆と比べて読解が複雑になるんです。だから難しい。
本日は物語文を読む技術を紹介し、かつ、平成26年早稲田中学第一回大問1の物語文の読解を通して、読解のテクニックやらコツやらを解説していきます。
国語の物語文で問われていること
国語の物語文では大きく分けまして二つのことを把握できているかが問われております。
その二つをまずは頭に叩き込んでおいてください。
①登場人物の気持ち
一つ目は登場人物の気持ちです。もうちょっと正確に言いますと、初期状態の気持ちとそこからの変化です。
初期状態とは物語が始まった当初のことです。
例えば、A君がB君のことを苦手だったとします=初期状態
ところが、ある出来事がきっかけでA君はB君と打ち解けます=気持ちの変化
これが初期状態の気持ちと、初期状態の気持ちからの変化です。
そして国語の問題では「なぜ気持ちが変化したのか」とか「どのように気持ちが変化したのか」が問われます。
よーく中学入試の問題をご覧になってください。気持ちの変化の理由、どのように気持ちが変化したのかを問うてますから。
②登場人物の行動
二つ目は登場人物の行動です。これも正確に言いますね。登場人物の行動が変化した背景・理由です。
具体例をあげます。
「B君をいじめていたA君は、B君が転校するのを知ってB君に自分のこれまでの行いを謝る」
国語の問題では「A君がB君に謝った理由」や「そもそもA君がB君をいじめていた時の心情」が問われます。
行動の変化や、行動そのものの背景、心情、理由が問われます。
気持ちの変化も行動の変化も実は同じこと
いいですか、気持ちが変化するのも、行動が変化するのも根っこは同じです。
根底にある心情が変化しているから気持ちが変化したり、行動が変化したりしているんです。
つまり心情を把握すること、これが国語の物語文を読む上では最も大切になってまいります。
登場人物の気持ちと行動を明らかにする3つの要素
では、気持ちや行動を把握する、つまりは心情を把握するにはどうしたらいいでしょうか?
ちゃーんとした読み方と解き方があります。
マスターしてれば満点取れます。少なくとも8割以上は取れないとおかしいんです。だって、問題文に答えが書いてあるんですもの。
ただ、実際のところを見ると、御三家レベルの難関中学においても国語の合格者平均点って6割〜7割くらいです。国語の授業って週に2〜3コマあって、2年以上通っているのにそのレベルです。
本当にちゃんとした読み方と解き方を教えているのでしょうか?とても怪しいです。
てな訳で読解のための3つの要素を紹介します。
と、その前に読解の超基本は書いてあることだけを読むことです。書いていないことを妄想しちゃだめですよ。
これ、結構できてない生徒さん多いですからね。
①物語の構造
まずは構造把握です。論説文でも物語文でも、最初にやるべきは構造把握です。
構造把握をすると、
1.どこに何が書いてあるのか分かる
2.構造同士の関係性が分かる
3.物語全体の大きなテーマが分かる
という3つの「分かる」が漏れなくついてきます。
どこに何が書いてあるのか分かれば、問題で問われていることを文章中のどこから見つければ良いのか分かるようになります。
構造同士の関係性が分かれば、どうしてそのような出来事が起きたのか、行動したのか、気持ちになったのかが大雑把に分かるようになります。
大きなテーマが分かると、物語全体を通して何の話だったのかが分かるようになります。
こういった理解は問題を解く上で間接的、あるいは直接的に役に立ちます。
ですから、覚えておいてください。
まずは構造を把握する、と。
②登場人物の関係性
次に登場人物の関係性を把握しましょう。
そんなに難しく考えないでくださいよ。関係性って言ったって「父と母、仲が悪い」とか、そのくらいでいいんです。
そして、重要なのは初期状態の関係性を把握することです。
なぜなら初期状態の登場人物の関係性から何らかの出来事や行動によって、心情が変化し、関係性が変化するからです。
国語の問題では関係性の変化の元となった心情の変化が問われます。あるいは、心情の変化をもたらした出来事や行動が問われます。
ですから構造把握を行った後で登場人物の関係性を把握していきましょう。
③物語のテーマ
物語にはテーマがあります。これもそんなに難しく考えないでください。
例えば、
「A君とB君の仲直り」とか「お母さんとお父さんの気持ちのすれ違い」とか「僕がどうしてAちゃんのことを好きになったのか」とか、そういうことがテーマです。
テーマなんて言うと難しそうに聞こえるでしょ?でもね、テーマってのは、噛み砕いて言いますと物語の中心になる出来事のことなんです。
テーマってのは必ずと言っていいほど問題で問われます。直接的に「テーマは何ですか?」と聞かれることもあれば、間接的に「傍線部を説明せよ」と聞かれることもございます。
いずれにせよ、物語の中心的出来事であるテーマを把握しておくと、その物語が何の物語だったのかが分かり、問題を解く上で大変重要な手がかりとなるんです。
構造、関係性、テーマを把握するテクニック
①構造把握のためには転換点を捉える
構造把握が大事だと書きましたが、構造把握のための技術・テクニックは転換点に注目する、これに尽きます。
転換点というのは物語が変わるきっかけとなった行動、出来事、あるいは場面の転換です。
転換点を見つけるコツは登場人物(特に主人公)が今までと違う行動をとった瞬間の発見だったり、突飛な出来事が起きた瞬間の発見だったり、場面の転換の発見です。
例えば今までおとなしかった主人公が怒り狂っていじめっ子に向かっていく場面とか、3ヶ月間日照りにおそわれていた砂漠に雨が降ったとか、沖縄の小学校から東京の小学校に転校したとか。
こういった出来事が起きると、必ずその後物語は変化=進行します。ここが構造の変わり目です。
最後に早稲田中学校の問題を例にやっていきますから、今は何となく理解して頂くだけで構いませんよ。
②関係性は図にする
登場人物の関係性は図にしましょう。よく、テレビドラマでも人物相関図ってあるじゃないですか。アレです。
ドクターXのウェブサイトを参照してみてください。
見ていただけましたか?そう、これを作るんです。こんなに立派なのじゃなくて構わないですよ。自分が分かればそれでいいんです。
平成26年早稲田中学第1回大問1の関係性の図はこれ。
ね、立派じゃないでしょ。それどころか子供の落書きですよ、これ。一体誰が描いたんだか。
なになに試験は50分なのにそんな時間ないって?試験で相関図をしっかり作ってたら時間がなくなるのは当たり前ですよ。人物相関図は試験ではなく、日々の学習の際に作るものです。
日々の学習で登場人物の関係性を図にする訓練をしていたらそのうち、そんなもの作らなくても頭に自然と浮かぶようになります。
その域まで訓練するんです。
③最も大きな感情・行動の変化にテーマが隠れている
テーマは登場人物(特に主人公)の最大の変化に注目すると浮かび出てまいります。
優等生だった友人が道を踏み外した出来事とか、のび太がジャイアンと対決して未来に帰ってしまうドラえもんを安心させる出来事とか、両親の離婚とか、何しろ物語の中で最も大きな変化の背景にはテーマが隠れています。
ですから、テーマを捉えるには物語の中の最も大きな変化は何だったのかを特定するようにしましょう。
大きな変化は何かなぁ?と意識的に読んでいると必ずや発見できるはずです。
平成26年早稲田中学校第1回 大問1を読む
さて、理屈ばかりこねてまいりましたが、最後は実践で締めたいと思います。ここで読むためのコツを感覚的に理解して頂きますと満点への道が拓けてくることと思います。
①構造を把握する
ざっくり大問1の問題文を紹介していきます。
第一の構造
繁田喜代美という女性の生まれ変わりであるフミ子は前世の記憶があり、喜代美が育った地に兄とともに赴きます。
そしてフミ子は喜代美の父親と、父親の娘(おばちゃん)と思しき人物と出会い、弁当箱に花を詰め喜代美の父親のもとに弁当箱を持たせて兄をやります。イタズラをしにきたものと思った喜代美の父親は兄をとっ捕まえます。
ところが、花が詰まった弁当箱を見て、喜代美の父親の娘は喜代美がいつもそうしていたことを思い出し、喜代美の父親も弁当を食べる真似をします。
兄をとっ捕まえた喜代美の父親が油断した隙に兄は逃げ出します。
第二の構造
逃げ出した兄はフミ子の元に戻り、電車で実家に帰ろうとしますが、喜代美の父親が駅の改札のところで二人を待ち受けております。
そして、死んだ喜代美を懐かしむ喜代美の父親を振り切るようにして、兄とフミ子はその場を去ります。
第三の構造
その後日談として、兄とフミ子は大きくなり、フミ子は喜代美の話をしなくなります。最後にフミ子が嫁ぐ男のことを思い、兄は安心したような心持ちになります。
3つの構造を分ける転換点
第一と第二の構造を分かつポイントは兄が喜代美の父親から逃れたこと、第二と第三の構造を分かつポイントは兄とフミ子が実家に帰るため電車に乗ることです。
この問題文は構造把握が非常に容易です。なぜなら構造の変わり目に番号が振ってあるからです。
3つの構造それぞれの冒頭に番号が振ってあり、番号が出現した時が構造の変わり目です。
ただ、番号が振ってあるからといって構造の変わり目だと単純に理解してはいけませんよ。物語の変化に注目するんです。
②関係性を図にする
構造は分かりましたね。では次に初期状態の関係性を図にしていきましょう。
はい、こんな感じです。
絵が下手かどうかは物語の把握とは関係がありませんよ。
では登場人物の関係性の図を描くポイントを紹介していきましょう。
①主人公を真ん中に置く
主人公は他の登場人物と最も関わりのある登場人物ですので真ん中に置きます。関わりがあるということは関係性が多いということです。
ちなみに主人公は一人称の物語では「私」とか「僕」とか「俺」と呼称しております。物語文の中に「私」「僕」「俺」と出てきたらほぼ自動的にその人物は主人公だと考えてください。
三人称は少々ややこしいです。見分け方は他の登場人物と最も多くの接点を持つ人物は誰かと考えるといいでしょう。その人物が三人称の物語における主人公です。
②関係か心情かは一目で分かるようにする
私は登場人物の「関係」を実線で結び、「心情」を破線で結びます。
上の図では分かりやすいように色を変えてます。ピンクは「関係」、青は「心情」。慣れないうちは色を分けておくと把握しやすいでしょう。
③初期状態を図にする
物語では「関係」や「心情」が変化しますが、変化のたびに図を描く必要はありません。
図を描くのは初期状態のみで構いません。
初期状態の「関係」「心情」を図にすると、「関係」「心情」が変化したポイントに気付きやすくなります。
「嫌っている」のに「プレゼントをした」とか、「苦手」なのに「話しかけにいった」とかね。違和感がありますよね。その違和感に気づくためのツールが関係性の図なんです。
そして、変化に気づくために必要なのは初期状態の関係性の図なんです。
③テーマを把握する
さあ、最後にテーマです。この問題文で主人公の最も大きな感情を捉えましょう。
「この子はそんな名前やないっ!フミ子や。俺の妹や。おっちゃんらとは、何の関係もあらへん!」
引用元:平成26年早稲田中学第1回 大問1 朱川湊人『花まんま』
この場面はおっちゃん=老人がフミ子を見て、自分の亡くなった娘である喜代美が転生した姿だと気づいてフミ子に近づこうとした時に「俺」がおっちゃん=老人に言った時の言葉です。
この部分にテーマが隠れています。なぜ「俺」はフミ子に近づくおっちゃん=老人にこう言ったのでしょうか?
それは、「俺」が後述していますが、「兄貴というものは妹を守らなくてはならない」と考えているからです。
「俺」は近づいてくるおっちゃん=老人からフミ子を守ろうとしたんですね。
ここから推察される物語のテーマは「肉親(兄妹)の絆」です。
「俺」と妹のフミ子の関係だけでなく、おっちゃん=老人と亡くなった娘の喜代美との関係性も描かれ、かつおっちゃん=老人、「俺」になんて言ったと思います?
「なぁ、兄ちゃん。お互い、兄貴は辛いもんやなぁ。その子のこと、しっかりかわいがったるんやで」
実は「俺」と妹の関係を描きつつ、おっちゃん=老人と娘であるおばちゃん、そして亡くなった娘の喜代美に対する心情も語られているんです。
そういった訳でテーマは「肉親(兄妹)の絆」であると読み解くわけであります。
さて、本日は読む方法をやっていきました。明日はこの読解をもとに解く方法をやっていきます。
国語は読む方法と解く方法を身につければ絶対に満点を取れます。知識が問われる問題(漢字、熟語、四字熟語、文学知識など)は一気に暗記しちゃうといいですよ。
次は解く方法です。こちらも同じく平成26年早稲田中学第1回国語大問1を元に解説してます。
とりあえず次回までに以下を読んでおいてください。解く方法を解説してます。
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