【中学受験】渋谷教育学園幕張中学国語後編② 物語文の解き方・読み方
- 投稿日:2018.09.26
- 更新日:2018.10.12
- 渋谷教育学園幕張中学校
- 中学受験, 国語, 渋谷教育学園幕張中学校
どうやら渋谷教育学園幕張中学の入試問題は想像力が豊かで本質的な思考力がないと解けない問題らしいです。
と、ネットで調べたら書いてありました。
まあ、そりゃそうなのかもしれませんが、それって本質的には何にも言ってないですよね。アクションプラン、すなわち学習方法に結びつかない言説が跋扈しているから、よくよく定義もされていない想像力とか思考力というオバケを生徒やその保護者も追い求めてしまうのだと思います。
そういった意味では想像力とか思考力とかいう言葉は害悪だと私は考えています。
その代わりに私は再現性のある解き方(=つまり同様の問題を何度解いても正解できる方法)と、再現性のある解き方を身に付けるための方法を提案したいと考えております。
つまり、技術です。入試問題を解く技術です。
さあ今日もやっていきましょう。
問題は絶対に買ってください。下のリンクからでなくても構いませんから、渋幕に合格したい人は絶対に買って読んでください。
渋谷教育学園幕張中学入試問題 国語大問2
難易度
大問1に比べると圧倒的に難易度が上がってます。これ、すっげえ難しい。なぜかって、大問1は問題文をロジックに当てはめて解けば解けたものの、大問2はロジックを適用しにくいように見えるからですね。
大問2は物語です。ちなみに物語って、登場人物の気持ちを想像しながら、登場人物の気持ちになりきって読むとかって学校で習いませんでした?
その読み方、大嘘ですよ。
書いてあることだけを手がかりに、書いていないことまで飛躍なく読み解くのが物語の読み方です。
このあたりはあれやこれやと以前、私が解説してます。
これは小学4年生の国語の教科書で必ず出てくる「ごんぎつね」の読解。
これは小学校低学年向けの絵本「ぐるんぱのようちえん」の読解。
拙い解説ではありますが、上記を読んでいただいて、一体物語を読むとはどういうことなのか感覚的に掴んでいただければ幸いでございます。
さて、大問2です。小学生にとっては非常に理解が難しい文章ですが、きちんとした思考方法をもって読み、そして解けば全問正解できます。
読み方
芥川龍之介の「死後」という小説から出題されております。内容としては、
主人公の僕が妻の横で眠れずにいたのですが、じきに眠りに落ちました。夢の中では自分は死んでしまっており、死後に妻が別の男と再婚しておりました。仕方ないことかと思うもののその男のことが気に入らず妻にキレ始め、家を出ていきます。ふと夢からさめると、自分は何て利己的なんだと頭を抱え、睡眠薬を飲んで再び寝ようとする。
という内容でございます。
おいおい、小学生に読ませる内容じゃねーだろ。
ところが勇敢なる受験キッズたちはこの文章を読んで登場人物の気持ちを理解しちゃうんです。すごいですね。
物語の読み方の基本は構造化です。物語をそのまま頭からお尻まで読んでなんとなく理解するのでなく、構造として捉えるんです。
構造を捉えるには転換点に着目します。物語における登場人物の行動や場面が変化するポイントです。
転換点
この文章の転換点は、
①主人公の僕が眠りに落ちてしまったこと
②夢からさめたこと(起きたこと)
の2つです。
構造化
そして、構造化しますと、
①眠れずにいた主人公の僕がふと寝入ってしまうまで
②自分が死んでしまった後のことを夢で見る
③目を覚まし、自らの利己的な思考を反省する
という3つの構造に分けられます。
物語の趣旨
夢の中での自らの利己的な行動が、現実のそれと変わらないことに自責の念を覚える
というのが趣旨でございます。
いいですか、物語と論説文(説明文)の読み方は違います。論説文(説明文)にはパターンがあり、どのパターンの文章なのか、そして論旨は何なのかを把握すれば簡単に解けるんです。
論説文の読み方はこんな感じ
物語においてはそうもいきません。
ただ、構造化する、という物語を正しく読むための方法はあります。構造化するには転換点に注目するんです。そうすると文章の全体的な構造が見えてきます。
これにより、どこに何が書いてあって、なぜそうなったのかが把握しやすくなります。
物語を読む時には必ず構造化してください。始めはざっくりでいいんです。自分の構造が正解か不正解かは大した問題ではなく、自分が理解しやすいように構造化すればいいんです。
気楽にいきましょう!
every little thing gonna be alright!
物語の中心部分である夢の中ではどんなことが書かれているか
さて、この物語の構造①、③は非常に短く②の夢の中が大部分を占めています。そして、夢の中の出来事から主人公の「僕」は③の構造において反省し始めます。
①は単純な導入部で、③で反省する様子が書かれていますので、重要なことは②の構造中にほとんど書かれていることがわかりますね。
物語の中心部分の②、つまり夢の中では何が書かれているかを見ていきます。
死んでしまった僕がSという友人と一緒に町を歩いている様子が最初に描かれています。Sは死んでしまった僕に同情しているように見えますが、実際は僕が死んだ事を喜んでいると感ぜられます。
その後、Sと別れた僕は自分の家に行きます。すると自分とは異なる苗字の表札が掲げられているのを見て、本当に自分は死んだんだなと感じ、家の中に入って行きます。
家の中にいる妻を見つけると会話をしますが、再婚相手が家にいる事を隠している妻に腹が立ちますが、仕方ないと自分に言い聞かせます。ところが、会話を続けるうちに妻が再婚相手の事を尊敬していないことに不快感を感じ、妻にキレ始めます。「なんでそんな男と再婚したんだ!」と。
これね、「僕」はもともと夢の中で妻が再婚したことをよく思ってないわけですよ。「仕方ないこと」と、なんとか自分を納得させようと思うものの、再婚相手がしょうもない人物だということがわかるとキレ始めます。
そんな相手を選びやがって!という嫉妬です。この人物、妻の事を愛しているかどうかは不明ですが、自己の所有物だと思ってるんです。だから、納得できない相手と再婚したことにキレるんです。
「俺の代わりにそんな奴を選びやがって!」という主人公の傲慢な心情が伝わってきます。でも男と女ってそんなものでしょう?はたから見たらくだらない男(女)だって、好きになったらそんな事関係ないです。
この物語はそうした主人公の気持ちを描いています。小学生に理解できねーだろ、これ。
解き方
問3、問5、問6をやっていきます。
下の「説明(同義)問題」というのが分からなければ以下の記事を読んで理解してきてからですよ。
問3
問3
ー部①「妻は僕の口真似をしながら、小声にくすくす笑っていた」とあるが、この小説表現の解釈として最も適当なものを選びなさい。
引用元 平成30年渋谷教育学園幕張中学 大問2 問3
これは説明(同義)問題です。まずは分解します。そして、分解した部分ごとに文章中の言葉を使って言い換えます。
妻は僕の口真似をしながら・・・「うるさい。うるさい。黙って寝ろ。」と僕の口真似をしながら
小声にくすくす笑っていた・・・直接は文章中に書いていませんが、文章から推測すると笑っていた理由がわかります。つまり、黙っていた僕の口癖を真似する事で「あんたの言いたいことはわかってるんだよ」と先回りできたことが可笑しくなった、と解せます。
したがって、自分の正解形はこうです。
「うるさい。うるさい。黙って寝ろ」という僕の心情を先回りして言うことにより、「あんたの気持ちは分かってるんだよ」という考えを披露できたことがおかしかった。
消去法で落とします。
ア なんの返事もしない夫に腹を立て、この後言われそうなセリフを先回りして言うことで、愛想のない夫をやり込めたのが快かった。
イ こうしたときになんども夫に言われたセリフであり、気心の知れた夫婦として夫の気持ちを代弁して先回りしたのがおかしかった。
ウ いつまでも寝られないために不機嫌な夫がうとましく、小心者の夫の神経質さに対してたくみな皮肉を言えたことが痛快だった。
エ 夫が読書に集中していて会話にならないことはいつものことであり、わかっていながら夫に話しかけた自分の愚かさが情けなかった。
オ とっさに面白おかしく夫の真似をすることで、読書に夢中になっていて会話にならない夫の気を引き、会話を続けたいと思った。
引用元 平成30年渋谷教育学園幕張中学 大問2 問3
ア・・・腹を立てているというのはどこにも書いてありません。正解候補から落とします。
イ・・・自分の正解形と趣旨が合っています。正解候補として残します。
ウ・・・「うとましく」というのは、文章中には書いてありません。正解候補から落とします。
エ・・・「自分の愚かさが情けなかった」とはどこにも書いてないですし、示唆もしてないです。正解候補から落とします。
オ・・・「会話を続けたいと思った」とはどこにも書いてありません。正解候補から落とします。
よって、正解はイです。
問5
問5
ー部③「僕は半ば僕自身を説得するように」とあるが、このときの「僕」の心情を、どのようなことに対しての心情であるかを明確にして説明しなさい。
引用元 平成30年渋谷教育学園幕張中学 大問2 問5
これも説明(同義)問題です。夢の中で妻が自分の死後、別の男と再婚した事実を前にして言う言葉です。
この主人公、妻のことを自己所有物だと思っており、本心では再婚に不満を持ってます。ですが、「まぁそれは仕方ないことだと思うから、再婚の事実も無理やり納得するかぁ」と無理やり納得しようとしています。
そして自身を説得するように、
「俺はもう死んでいるんだしー」
と言うのです。
これらを踏まえて「半ば僕自身を説得するように」という文章を文章中の言葉を使って言い換えます。
「自分の死後、妻が別の男と結婚したことに対して不快感を感じつつも納得しようとしている心情」
この正解形がそのまま答えになります。
問6
問6
ー部④「僕は妻に対しては恐しい利己主義者になっている」とあるが、どういうことか。「僕」が妻に対してどう思っているのかを明確にして「利己主義」である意味がわかるように説明しなさい。
引用元 平成30年渋谷教育学園幕張中学 大問2 問6
これも説明(同義)問題です。説明(同義)問題のセオリー通り、傍線部を分解して意味を明らかにします。
「僕は妻に対して」・・・僕は死んでしまっており、妻が再婚するのは仕方のないことであり、妻のとった行動は責めるべきではない、その妻に対して
「恐しい利己主義者になっている」・・・再婚した人物が自分の納得できるような人物ではなく、卑しい人物であることに不快感を感じ、妻に対してそのことを責め、自分の考えを強いようとしている
ではこの二つをくっつけます。
「僕は死んでしまっているのだから、妻が再婚するのは仕方のないことなのに、妻が再婚した人物が僕の納得できない卑しい人物であることを知り不快に思い、そのことによって妻を責め、自分の考えを強いようとしていること。」
これは結構難しいですね。理屈上、再婚は仕方ないことなのだけれども、自分の本心では納得できない。しかもそれが卑しい人物であれば尚更、という気持ちを捉えるのは小学生にはかなり難しいかと。
物語の難しさ
一口に言って、物語が難しいのは書いていないことを、書いていることから正確に推測するスキルが必要だからなんですね。論説文(説明文)は推測のスキルは不要です。正しく書いてあることを書いてあるように理解すればいいだけです。
渋谷教育学園幕張中学の問題で落とすとしたら、大問2の問6と問8くらいでしょうか。これ以外、全部正解したとすると85点。部分点をもらえることを考慮すると90点くらいは普通の子でも解けます。
これだけ国語で点数を稼げれば他の科目がずいぶん楽になります。
あ、ちゃんと読む技術と解く技術があれば余裕で満点ですからね。
今、小学5年生だったら十分に時間あります。国語で満点取れるだけの訓練をする時間が。
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