重すぎるランドセル問題 何故重い?そして現役革職人に話を聞く

重すぎるランドセル問題 何故重い?そして現役革職人に話を聞く

ランドセルが重すぎて小学生に負担をかけており、腰痛の小学生まで出て来る始末。

というわけで文部科学省が適切に工夫することを全国の教育委員会に求める方針を決めた、というニュースは皆さんご存知かと思います。

「重いランドセル」解消へ工夫を 文科省が通知へ(日本経済新聞)

このニュースを見て「わーい!これでやっと解放される」と思った人はよく読みましょう。これ、教育委員会に工夫するように求める方針を決めた、だけなんです。

つまり何もしてないんです。これでよくニュースになるな。重い腰をあげたみたいなニュアンスで書いてますが、腰すら上げてませんよ。「腰を上げようかなと思った」くらいです。

政治家が良く言う「遺憾である」「検討する」「慚愧の念に耐えない」みたいな感じです。

今日は一人でも多くの親が声をあげた方が良いかと思い、ランドセル問題について書いていきます。

重いランドセルを背負った小学生の実態

通勤で駅まで歩いておりますと毎朝、異様な光景を目にします。

揃いも揃って腰が曲がった小学生たちが生気のない顔をして登校班で通学してるんです。まるで死の行軍です。初めはギョッとしましたが、毎日見ているとまぁこんなものかなんて思ってしまうのが怖いところです。

 

で、本当のところどんなものなのか、実際のランドセルの重さを色々なパターンで測りました。

実際持ってみるとずっしりきますねえ。

パターン 装備 重さ
ランドセルのみ 1.5kg
ランドセル+教科書+筆箱+ノート 4.7kg
ランドセル+教科書+筆箱+ノート+体操着+水筒 6.1kg
ランドセル+教科書+筆箱+ノート+体操着+水筒+給食袋+上履き 6.7kg
ランドセル+教科書+筆箱+ノート+体操着+水筒+給食袋+上履き+ピアニカ 7.6kg
ランドセル+iPad+筆箱+ノート+体操着+水筒 4.1kg

どうですか。最高重量7.5kgです。ちなみにこれ、小学1年生の装備です。

小学6年生は副教材も増えますし、教科書自体も厚みを増します。そこで小学6年生の装備も測ってみたところ、おおよそ上記の数字に+2kgです。で、ランドセルがパンパンになってしまいました。あ、⑥のipadは除きますよ。

 

どうやら識者によると体重の10%〜15%程度の重量が限界とのこと。

えーと、⑤のパターンですと体重51kg〜76kgの人が限界ということですね。これ、成人の体重ですよ。

20歳の成人女性の平均体重は51.6kg、成人男性の平均体重は64.6kgです。

総務省統計局 日本の統計2015 第21章 保健衛生 21- 2 身長と体重の平均値より

つまり、⑤のパターンは20歳にならないと背負えない、と。小学生にタバコ吸わせてるようなものですね。不健康さから言いますと。

 

ちなみに上図の③は火〜木曜を想定、④は月、金曜を想定、⑤は新学期を想定してます。厳密に言いますと新学期には他にも持っていくものはありますので、7.5kgでは収まりません。

こりゃ腰痛になる小学生が出てくるわけです。

では昔と比べてみます。

昔のランドセルの重さ

押し入れから30年前に私が使っていたランドセルを引っ張り出してきましたよ。

んん?なんか小さくないか?

そこで、今のランドセルと比べてみますと一回り小さいんです。なぜかと思い、また押し入れから教科書を引っ張り出してくると、教科書のサイズもまた一回り小さい。

そこで教科書のサイズを測ってみると、昔の教科書は概ねB5サイズ以下なんですね。ところが現在はA4サイズの教科書もあります。だからランドセルの大きさも違うんです。

 

そもそもランドセルの大きさ自体が違うんです。

で、昔のランドセルの重さを測りました。1.2kgです。ちなみに牛革です。

我が家の子供のランドセルも牛革ですが、大きくなったぶん0.3kg重くなってます。

各社のランドセルの重さを調べる

昨今工房系のランドセルが世のお母さんがたのハートを鷲掴みし、やや過熱している傾向が見えます。これもランドセルの重さに一役買っているのかと思い、調べていきました。

素材に違いがありますが各メーカーで最もベーシックなモデルを選んでます。

()は素材です。

系統 メーカー名 モデル 重量
工房系 土屋鞄製造所 牛革ベーシックカラー 1.5kg
鞄工房山本 レイブラック(牛革) 1.4kg
中村鞄製作所 牛革ボルサベーシック 1.3kg
萬勇鞄 ベーシック(牛革) 1.4kg
メーカー系 セイバン モデルロイヤルドラグーン(クラリーノ) 1.2kg
ハシモト フィットちゃん201(クラリーノ) 1.1kg
協和 ロイヤルコレクション(クラリーノ) 1.1kg
流通系 三越伊勢丹 ロイスター(クラリーノ) 1.1kg
イトーヨーカドー Finefitグラディウス(クラリーノ) 1.2kg
イオン みらいポケット アドバンス(クラリーノ) 1.2kg

※各社のカタログ重量を参照。小数点2桁以下を四捨五入

んー、メーカーの違いというよりは素材の違いが重量に関係しているようですね。牛革は大体1.4kgくらい。クラリーノだと1.1kgくらい。ほぼどこのメーカーも変わりがないですね。

流通系はOEMでしょうから、メーカー系と同じと考えた方が良いでしょうね。

工房系が重く見えますが、これは素材の違いです。工房系だってクラリーノ使ったモデルはメーカー系のランドセルの重量と大して変わりはありません。

 

ちなみにクラリーノというのはクラレが開発した不織布を使いつつ、革っぽく加工した素材です。元が不織布だから軽いんです。

 

番外編としてコードバンという素材もございます。ざっくり言うと馬革です。

高級感はあるけど重い、という触れ込みでございますが調べてみると牛革と大して変わりません。

作りによって違いはありますが、各社とも概ね牛革と0.1〜0.2kg程度の違い。ほぼ牛革と同じと言ってもいいんじゃないでしょうか。イメージって怖いですね。

 

で、私、最初はランドセルが重いのは工房系の魔力に取り憑かれるお母さんがたのせいにしようと思ってたんです。ところが調べてみると、工房系、メーカー系、流通系いずれも素材が同じランドセルであれば重さはほとんど変わらなかったんです。

 

じゃ、こんなにランドセルを重くしたのは誰なんだ?

学習指導要領の変化

最初に私が挙げたパターン別ランドセルの重さの表をもう一度ご覧ください。

重さの大半を占めているのはランドセル本体ではなく教材なんです。むしろランドセル本体は各社の努力によりA4サイズの教材に対応して大型になりながらも軽量化が図られています。

昨今の学校では教科書を持ち帰ることを推奨(ほぼ強制)しております。したがって、ランドセル重い問題の真犯人は「教科書の持ち帰り」です。

かつ、2008年の学習指導要領改訂により、脱ゆとり教育をスローガンにした学習方法に変わりました。結果として教科書の厚みが増したんです。

で、小学生が腰を曲げて登校し、腰痛で苦しんでいるんです。

ちなみにゆとり教育は1998年の学習指導要領改訂、2002年頃から現場で実施されるようになり、2008年に脱ゆとり教育として学習指導要領が改訂され、2011年から現場でも実施されるようになりました。

余談ですが、ゆとり教育は1998年の学習指導要領改訂でいきなり持ち出された考え方ではありません。実際は1970年代後半から学習指導要領により、ゆとりの方向性に舵を切っております。

「ゆとり世代だから〜」とか言っちゃってる30代〜40代の方々は自分もゆとり世代の端くれを担っていると自覚した方がいいですよ。

 

さて、「教科書持ち帰り」問題に立ち返りましょう。解決法はとてもシンプル。教科書を学校に置いていけばいいだけです。

どうせ家に持って帰ってきても教科書なんて開きませんし。

 

ところで、もっと根本的なところに目をやってみましょう。

 

そもそも教科書が紙である必要ありますか?

 

上図⑥のランドセル+iPad+筆箱+ノート+体操着+水筒のパターンですと4.7kgに収まります。

ノートも筆箱もiPadでまかなう前提で重さを測ってみると3.8kgとなりました。

3.8kgの荷物だったら体重20kg〜30kgの小学生だったらギリギリ許容範囲ですかね。

7歳の平均体重は男子で23.4kg、女子も23.4kg。うーん、体重の15%を超えてはいますが今よりははるかにマシです。

総務省統計局 日本の統計2015 第21章 保健衛生 21- 2 身長と体重の平均値より

 

さらにランドセルにこだわらずポリエステル製のバッグ(公文のバッグを使いました)にiPadのみを入れると、、、1kg!

これに体操着と水筒を加えても2.4kg。

これでいいじゃないですか!これで小学生の腰痛問題解決ですよ!文部科学省の方々、小学生のバッグ自由化(脱ランドセル化)と教科書・ノートのiPad化をいますぐ実施した方がいいですよ。これで何人の小学生が腰痛から救われるか。

ランドセルの重さ お母さんがたの意見

今回、これを書くのに小学生の子供がいらっしゃるお母さんがた数人に話を聞きました。

「私が持っても重い」

「子供が腰が痛いと言っている」

「ランドセルのせいなのか姿勢が悪くなっている」

「子供が泣いてランドセルを背負いたくないと言っている」

「どうせ帰ってきても教科書なんて見ないのになんで持って帰るの?」

嘆きと怒りの意見が続出しております。なぜランドセルなんですか。なぜ教科書を持ち帰るんですか。意味がありませんよ。

 

どうか、文部科学省の方々、合理的に判断してください。

 

ランドセルじゃなくて、ポリエステル製のリュックを認めてください。そして教科書をPDF化して、iPadで授業を受けさせてあげてください。

なんでポリエステル製のバッグじゃダメなんですか?どうして教科書は紙なんですか?

日本人は上からの圧力がないと動きません。そういう国民性ですからね。なのでお国を運営している方々が言って頂くのが最も効果的です。

本職革職人に聞きに言った

私この問題について本職革職人にも聞きに行きました。

 

私「最近のランドセルは重すぎて子供が悲鳴をあげてるんですけどどう思います?」

職人「重いよねえ。まあ牛革とかコードバン使ってるんじゃ仕方ないよね」

私「工房系のランドセルについてどう思います?」

職人「本当にね、うまくやってると思いますよ。土×さんとか、×村さんとかは昔からやってるからねえ。ちなみに土×さん、昔は・・・。それが今では・・・(愚痴が延々続く)」

私「やっぱりブランド化って大事ですよね」

職人「そうだよ。×田さんだってポーターでうまくやったよね。うまくやったと言えば×××マートだよ。知ってる?あそこ、ピー(コンプラ違反のためピー音を入れます)なんだよ。俺は好きじゃないね」

 

ちなみにアルファベット3文字が入る「×××マート」の裏話ややっかみは耳にタコができるくらい聞きます。

 

私「で、オススメはなんですかね?」

職人「この前孫にランドセルプレゼントしたよ」

私「え!?何をプレゼントしたんですか?」

職人「天使のはねだよ。あれはいいよ。クラリーノだから軽いし丈夫で、手入れも必要ないんだよ」

私「いや、クラリーノって傷つきやすいって聞きますが・・・」

職人「そんなことないよ。そりゃ昔の印象。十分、6年間持つよ。縫製もしっかりしてるしね」

私「牛革とかコードバンの方が・・・」

職人「天然の素材ってのは湿気とか雨とかで水分を吸うの!水分吸って伸び縮みしたらどうなる?」

私「素材が劣化するんですかね?」

職人「そう、ひびが入ることだってあるの。だから手入れしないといけないんだよ。クラリーノは大して手入れしてなくても大丈夫。」

私「・・・、革の良さってなんですかね?」

職人「風合いだよ。でもさ、小学生に風合いなんて関係ないだろ?ちなみにうちで作ってるの持ってみてよ。ほら軽いだろ」

私「ああ、確かに軽いですね。」

職人「これだけ軽くて、しっかりしているのは(・・・その後延々と話が続く)。」

 

というわけでランドセルの重さの本質である教科書、ランドセルの自由化については文部科学省の偉い人たちの良心に期待です。

 

なおランドセルについて、本職の人曰く素材はクラリーノが一番いいそうですよ。

 

何かの参考にしていただければ。

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