【中学受験】渋谷教育学園幕張中学国語後編① 論説文の解き方・読み方
- 投稿日:2018.09.24
- 渋谷教育学園幕張中学校
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前回記事はこちら。
今回は渋谷教育学園幕張中学の平成30年度の大問1を題材にやっていきます。大問1は論説文(説明文)です。論説文(説明文)には確固とした読み方があります。
解き方と合わせて読み方もやっていきます。
今回は問題がないと訳が分かりません。問題を見ながら読んでいってください。
読み方
接続詞に二重線、その前後に一本線
まずは文章を流し読みしながら接続詞に二重線を引いていってください。なるべく機械的にいきましょう。
次に「つまり」の後の文章に一本線を引きます。
「でも」の後の文章に一本線を引きます。
「しかし」の後の文章に一本線を引きます。
「だから」の前後の文章に一本線を引きます。
以上、これがこの文章を読み解く上で大事な箇所です。
文章構造を読み解く
一本線を引いた箇所を全て見ていきます。線を引いた箇所だけでは意味が分からないと思いますので、()で注釈を入れました。
「ああすれば、こうなる」という思考法です。この思考法は強力、強烈で、人の人生をつまらなくし、場合によっては人を不幸にしている原因の一つです。
そんなこと、当人が実際に体を動かして何かをやってみなければわからないじゃないですか。ああすればこうなる。だから、ああしてみよう。こういう思考の仕方が習い性になっている。これが間違いのもとなのです。
(近代人が体は意識でコントロールできると考えているという前段を受け)真実は、意識は部分、体全体なのです。
(脳が事象を物質的・感覚的に捉えていることと対比して)心はそうはいきません。
(心がよく分からない=意識できないものである点に触れた前段を受けて)心は概念的であるわけです。
(虫捕りには天候が大事であるという事実を受けて)天候を自分で決めることはできません。
(自然はリスクだらけであり、賭け事みたいなもの。人生も賭け事みたいなものなので)僕は賭け事をしません。
(自然を知るためには「森に行け」とは言ったものの、自然の不確実性はどんなところにも存在しているという自説をもとに)本当は森じゃなくてもいい。川、海、空、あるいは自分の体と入り口はどこでもいいのです。
引用元 平成30年渋谷教育学園幕張中学校入試問題 国語 大問1
養老孟司『養老孟司の幸福論 まち、ときどき森』より
これだけでこの文章の趣旨と構造が分かります。
この人は「ああすれば、こうなる」という意識による思考を批判し、コントロールできないものによって自然は成り立っていると言っています。
すなわち二項対立です。
意識と体
意識と心
予定と自然
脳と心
と、様々な表現で二項対立を表現し、前者の意識とか予定とか脳とかによる思考を批判し、後者の体とか心とか自然に依りなさい、と言ってます。
そして最後に後者に関心を持つと自然をより良く知れると結論づけています。
論説文(説明文)を読む上では必ず構造と筆者の意見を把握しましょう。
接続詞に二重線を引いて、その前後の文章に一本線を引くだけでなんとそれが可能になってしまいます。
これ、問題を解くのに本当に重要ですからね。
なぜこの作業で論説文(説明文)の構造と趣旨が分かるかというと、接続詞というのは筆者がとくに言いたいことを強調する箇所に使用されているからです。
接続詞とその前後の箇所だけに線を引っ張って、構造と趣旨が分かるのは偶然ではありません。
解き方
ではいきましょう。説明(同義)問題、理由問題、空欄問題の3つがちゃんとありましたので一つずつ問題を抜粋して解き方をやっていきます。
問2 空欄選択肢問題
A
空欄問題は空欄の前後に線を引っ張って、空欄以外の箇所の文章の意味を明らかにします。
Aの前後の文章に線を引っ張ります。
「意識は【 A 】だとする脳科学の本が出版されるようになりました。」
これを本文中の言葉を用いて言い換えます。
意識=体をコントロールすること
脳科学の本が出版されるようになりました=前の段落で「意識は部分、体が全体」とあり、それを受けております。
つまり、「体を意識によってコントロールすることは部分的なものであり、全体ではないという本が出版されるようになった」という正解形となるようなAを以下の選択肢から消去法で落としていきます。
ア 砂上の楼閣
イ 机上の空論
ウ 氷山の一角
エ 青天の霹靂
引用元 平成30年渋谷教育学園幕張中学校入試問題 国語
部分であり全体ではないという趣旨に合致するのはウの氷山の一角です。
B
同じく空欄Bの前後の文章に線を引っ張ります。
「もちろん、都市にも、犯罪や交通事故など、都市ならではの予測できない危険は付きものですが、自然と相対している場合とは【 B 】のでしょう。」
自然と都市を対比して【 B 】に適当な言葉を選択させる問題です。
「もちろん〜、しかし〜」という良くある構文に目をつけます。「もちろん」の直後を否定し、「しかし」以降で著者の意見を述べる場合に使われる構文です。
「もちろん」の直後は「都市の危険」。「しかし」の直後は「自然の危険」。著者の論旨からすると自然は訳分からないもので、人の意識によるもの=「都市」はコントロール可能なものであるというところから、【 B 】には「全然違うもの」を指す言葉が入ると推測されます。
ア 五十歩百歩な
イ 雲泥の差がある
ウ 紙一重な
エ 馬が合う
引用元 平成30年渋谷教育学園幕張中学校入試問題 国語
お分かりですよね?こういう分かりやすい問題でも必ず選択肢問題の答えは消去法で選んでください。
正解はイです。
問3 説明(同義)選択肢問題
ー部①「都市の生活やそこでの流行は、意識がつくられなかったものをみな排除しようとします」とあるが、その具体例として適当でないものを一つ選びなさい。
ア 農家から無農薬で栽培された米や野菜を取り寄せて食べる。
イ トレーニングジムに通い、体を鍛えて、均整のとれた体にする。
ウ 空き地を大きな公園にして、樹木を植え、池や遊具を作る。
エ 部屋に空気清浄機を設置し、除菌効果の高い洗剤で洗濯する。
オ クラス替えで、席が隣になった女の子に恋をして、告白する。
引用元 平成30年渋谷教育学園幕張中学校入試問題 国語
傍線部①「都市の生活やそこでの流行は、意識がつくられなかったものをみな排除しようとします」を分解してパーツに分け、文章中の言葉を使って別の言葉に置き換えます。
「都市の生活」・・・健康を保つことのできる食事
「そこでの流行」・・・健康のためのダイエットやジョギング
「意識がつくらなかったものをみな排除」・・・意識的に日常生活をコントロールすること
これを繋げて正解を作ります。
「健康を保つことのできる食事や健康のためのダイエットやジョギングによって、意識的に日常生活をコントロールすること」
つまり「意識的な行動」というのが傍線部の趣旨です。
これとそぐわない選択肢を消去法で落とします。
ア・・・意識的な行動ですので落とします
イ・・・意識的な行動ですので落とします
ウ・・・意識的な行動ですので落とします
エ・・・意識的な行動ですので落とします
オ・・・偶然席が隣になって恋をしてしまったのであり、意識的ではありません。これが正解です。
問5 理由記述問題
配点が非常に高いのでこれは正解しておきたいですね。これだけで10点です。つまり100点満点中の10%。解答までの手順を追っていけば絶対に解けますので大丈夫です。
ー部③「ああすればこうなる。だから、ああしてみよう。こういう思考の仕方が習い性になっている。これが間違いのものなのです」とあるが、なぜ筆者は「ああすればこうなる。だから、ああしてみよう」という「思考の仕方」が「間違いのもと」だと述べているのか。その理由を、傍線部のあとから、本文後半の「間違う人がよくいるのですが、〜心は概念的であるわけです。」の段落までの内容を踏まえて、説明しなさい。
引用元 平成30年渋谷教育学園幕張中学校入試問題 国語
問題の中に「なぜ」という言葉が出てきました。ですからこれは理由問題です。
理由問題の解き方は、
1.傍線部に至る過程を文章中から拾ってくる
2.文章中から拾ってきたパーツを組み合わせて再構成する
3.傍線部に至った理由を定義する
です。
では1からやっていきましょう。文章中から傍線部の結論に至る過程を拾います。
「近代人は、意識が体に先立つと考えます。」
「体は、意識でコントロールできるものだと結論しています。」
「でも真実は、意識は部分、体が全体なのです。」
さて、手順2と手順3の通り、こいつを理由になるように再構成します。
「意識が体に先立つと考え、意識によって体をコントロールできると考えているが、これは間違いであり、真実は意識は部分、体が全体であり、意識で体をコントロールできるというのは幻想に過ぎないから」
はい、簡単ですね。
構成要素としては、「間違いの元となっている近代人の勘違い」「意識は部分、体が全体」「意識では体をコントロールできない」という3つが盛り込まれていれば正解です。
論説文(説明文)が出たらガッツポーズ
ちなみに大問1は基本的な3つのフレームワークと9つのバリエーションを知っていて、訓練していれば全問正解できます。
大問1の配点は47点。
55%の正答が目標だったら残すは8点。80%を目指すんだったらあとは33点。
物語文はロジックだけで解けないものもありますが、論説文(説明文)はロジックだけで解けます。
全問正解を目指すべきです。受験生諸君!論説文(説明文)が出題されたらガッツポーズですよ。用意はできてますか?
本当にガッツポーズすると、試験会場では消しゴムを落としたのかと思って試験員が飛んでくるのでやめましょう。
渋幕で頻出する説明(同義)問題の解き方
説明(同義)問題っていうのは出題される問題文から、傍線部と同じ意味を持つ言葉に置き換える問題です。
傍線部は大抵分かりにくいので、それを分かりやすく文章中の趣旨を元に文章中の言葉で置き換える問題です。
つまり言葉の置き換え問題です。
この問題を正答するということは問題文の趣旨が分かっているということと、適切に問題文中の別の言葉に置き換えられる能力を持っているということ。すなわちきちんと問題文の趣旨を把握している=読解できている、ということなんです。
私が絵本の読解でしつこく読解訓練をやるべきと言っているのも説明(同義)問題が他の中学でも頻出の問題であることがが理由です。
ともあれ、説明(同義)問題は問題文の趣旨を把握し、傍線部と同じ意味の言葉を拾い出す問題です。この問題を制する者は受験を制します。
大げさではありませんよ。
とにかく訓練、訓練、訓練です。
次回は物語文の読み方と解き方をやっていきます。
方法を知っていれば絶対に解けるようになりますから。8割以上は絶対取れますから。
国語を得点源にしましょうよ。
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