GIGAスクール構想って何?日本の公教育に何が起きているのか?
- 投稿日:2021.04.02
- 更新日:2021.04.22
- 教育一般
- chromebook, GIGAスクール, 文科省
2年ぶりのブログ更新の第一発目、中学受験の奥義なぞを披露してさぞかしたまげさせてくれるかと思いきや、一発目はGIGAスクール構想のお話でございます。
知っている人は「受験と関係ねーじゃん、真面目にやれこのヤロウ」って感じでしょうし、
知らない人は「何それ?もしかして携帯料金の話?」と思われるかもしれません。
後者の方はこんな記事なんか読まずにahamoでも契約するととてもいいと思いますよ。
GIGAスクール構想ってのは一言で言うと、公立の小中で一人一台タブレットが貸与されて、学校のWiFiを整えようぜって構想です。
偉い人がこれを読んだら「それだけじゃねーぞ!日本の教育を変える・・・うんたらかんたら」と仰るでしょうね。
でもね、保護者の目線で考えると日本の教育だのなんだのってどうでも良くて要はなんなの?ってことさえ分かればいいわけです。
ってわけでGIGAスクール構想について適度におふざけしつつ分かりやすくお話していこうと思います。
何しろ皆さんに関係ある話ですしね。
で、タブレットとWiFiが整備されてどうなんのよ?
今まさにタブレットとWiFiが日本中の公立小中学校で整備されております。
そして、一人一台学校でタブレットをインターネットにつないで使えるわけですよ。
これってすごくないですか?
だって今までって学校にパソコンが導入された、とか言っても視聴覚室とかPCルームだけの話でしたもんね。
それが各教室に配備されて、しかも一人一台貸与されるわけです。
じゃあこれまでどうだったのって言うと、パソコン使うのにいちいち教室を移動しなきゃいけなかったわけです。当然、面倒臭いので(とくに教員が、ですね。子供たちは割と使いたがってましたよ)、カリキュラムにある程度目処をつけて時間に余裕ができた時に、
「さぁー、今日はパソコンでも使っちゃおうかー!」
という感じでいそいそと教室を移動してなんとなくパワポとかを使って発表用の資料を作るみたいな感じだったんです。
ところが、です。
これが教室にやってきて一人一台になる、と。
今までのように学校で40台しかありません、みんなで仲良く使いましょう!みたいなケチ臭い話じゃないわけです。
すごくないですか?
もうすでに実現されている学校もあればそうでない学校もありますが、たいていはこの4月の新学期からはそういう体制になるわけです。
で、どんなパソコンがくんの?って、一台4.5万くらいのなんとなく微妙なパソコンなんですがそんなことを気にしちゃいけません。
くることに意味があるんです!イエスGIGAスクール!
いやいや、どんなパソコンがくんの?
えーっとね、GIGAスクール構想でやってくるパソコンって大きく分けて3種類なんです。
これ↓
- ChromeBook
- Windows
- iPad
2と3は大体お分かりかと思いますが、1のChromeBook。知ってますか?あんまり知りませんよね。
これね、Googleが叡智を結集して教育機関向けに作った安くて丈夫でやたらと重いパソコンです。
家電量販店でも売ってますが、教育機関向けのChromeBookは一味違います。2階から落としても壊れなさそうなタフボディに、ケンカで振り回したら一撃でノックアウトできそうな重量感のある仕上げになっております。
このGIGAスクールパソコン三銃士を比較したら、「普通はiPadでしょー!直感的に使えるし!」ってなるもんですが、文科省はChromeBook推し。だからこれを導入する小中学校って日本中で半分近いんです。
参照)https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/09684/
ってわけで皆様のお子さんも新学期からはChromeBookを授業中に使い倒している可能性が高いわけです。
何が良くて鈍器みたいなパソコンを導入する学校が多いかというとずばりコストです。
協働学習やら、校務支援やら、学習指導やらを実現するためのGoogle for Educationというソフト群が端末代金のみで使えるんです。
iPadとかWindowsだとかだとそうはいかず別途購入する必要があるんですね。つまり金がかかる。
※もちろん、iPad、Windowsでもやろうと思えばできます。ただGoogle for Educationは一つ頭が抜けてます
安くて、機能を備えていて、安全で使えるパソコンというとChromeBook。というわけで落ち着くべきところに落ち着いたという感じです。
使い勝手は置いておくとしてやっぱりコスパ!
そもそも一人一台になって何ができるようになるの?
パソコンが一人一台になったとはいえ、パソコンなんてソフトが入ってなきゃただの箱です。
何ができるようになるのかが重要なわけですよ。
まず、協働学習が簡単にできるようになります。
今までだと机を移動して大きめの紙を広げて、5色のカラーペンを用意して、ノリとハサミと・・・、みたいな感じだったのが各自のパソコンでできるようになります。
それから資料を作って、それを先生に提出したり、とかもできるようになりますし、逆に先生から宿題を出すようなこともデジタルでできるようなります。
え、今までできたことがデジタルに置き換わっただけじゃん、って思いました?
紙ってね教員にとっては超面倒くさいんですよ。プリントを準備して印刷して配布して回収して・・・、みたいなことが全て端末上で完結するから楽になるんです。
教員の働き方改革ってやつですね。
あと、作った資料をクラスのみんなに共有するのも簡単。デジタル上で先生に提出して、先生がそれをディスプレイに映し出したりできますよね。
鈍器のようなパソコンだなんだとディスってきましたが、結構良さそうでしょ?GIGAスクール。
ん?だから何なの?そもそもなんで今、そんなことやろうとしてんの?という声が聞こえてきますね。
では、次にいきましょう。
なぜGIGAスクールなのか?
わかった!重いランドセル問題を解消するためにデジタル教科書になるんだ!
と思った方、大外れです。
デジタル教科書はまだ先の話です。GIGAスクール構想のパソコンにはデジタル教科書は入っていません。
おお、じゃあプログラミング学習教材が入っていて、これまで以上の学習ができるようになるんだな!
思った方、あなたも大外れ!
それは別料金です。
なるほど、じゃあ最近良く聞くAIを搭載した教材が入っているんだな!
と思った方、全然違います。そもそもAIを搭載しているとは言いつつも実際はAI風味な教材が跋扈しております。
あ、ちなみにAI風味でも有料でーす!
じゃあなんだ、協働学習やら先生の負担軽減やらが目的なのか?
というと、それもそうではあるんですけど、1番の目的はこれまでの教育(集団授業)の知見をベースに、こぼれ落ちてしまっていた子供達を取り残さないために一人一人に合った教育を提供していこうってことなんです。
その役割を担っているのがGIGAスクール構想におけるパソコンなんです。
たとえば今までだったらフォローしきれなかった子供の学習状況をデジタルで把握して、個別にフォローしてあげるとか。
授業中に手を挙げる子だけじゃなくて、おしとやかな子も含めて活躍の場を与えてあげるとか。
お互いの意見や考えをリアルタイムに共有して学びを深めるとか。
そういうことが一人一台パソコンが与えられるとできるだろう、そういう目論見なんですね。
素晴らしい。
本当にこれが実現できたらICT後進国の汚名をすすげますね。
でも、そうは問屋がおろさない。
GIGAスクール構想の恩恵が十分に受けられるかは運次第
運次第ってどういうことだよ、公教育に運もクソもあるかって話ですが、これが実はあるんですね。
ソフトの問題です。
プレステ買ったってソフト入ってなきゃちっとも面白くありません。まさにただの箱。
もちろんGIGAスクールのパソコンも同じです。
パソコン配られただけじゃせいぜい今までの延長線上のことくらいしかできないんです。よっぽどICTに長けた先生だったら別ですけど、エクセルの関数すら怪しい先生が大多数です。
だから、便利なソフトが入ってた方がいいし、そうじゃなきゃ本当にただの箱に成り下がる危険性があるんですよ。
いやいや、文科省肝いりの施策でしょ?便利なソフトいっぱい入れさせてるんでしょ?と思うかもしれません。
が、文科省がやったのは「補助金出すからパソコン導入しろや!ゴルァ!」ってな感じで、パソコンの導入を推進しただけです。
では、その後のことは誰が考えるのか。
ズバリ言うわよ。
教育委員会です。
教育委員会がノータッチの場合は学校です。つまり校長先生。
校長先生すらノータッチの場合は現場の先生が自力でいいソフトを見つけてきて管理職に相談して、ただでさえ忙しいのにそこに新たなタスクをのっけて、気づけば職員室は自分一人みたいな状況になります。
いやいや、文科省が率先して・・・と思われるかもしれませんが、基本的に公教育ってのは大号令は文科省がかけるけども、実際のところは地方公共団体、つまり各市町村の教育委員会がやってね、って立て付けになってるんですね。
だから隣の市は良さそうなソフトが入ってるけど、うちの市は箱が納入されただけってことが起き得るんです。いえ、実際に起きてます。
ところでなんでこんなことが起きると思います?普通だったらいいものは真っ先に入れたいですよね。
その理由は簡単。金がないからです。もっと言うと教育に予算をつけてくれないからです。
あとは教育委員会のやる気も多少影響してます。こういうのを主導するのは教育委員会の学校教育課もしくは指導課というところの課長さんとか、教育長さんなんですけどこの人たちの視野の広さとかやる気にも依存しています。
つまり、金がない、そして教育委員会の偉い人たちのやる気がないとどうなるかというと、
「箱を入れるからさー、なんとか工夫して使ってねー」
とか
「5年前からさー、××(ソフト名、伏字にしときます)入れてるから、それ使っといてよ。あ、そういや今年アップデートするらしいよ」
なんて感じになるんですね。
そして、結果として子供達のもとには箱のみだったり、使いもしないし使えもしない昭和テイストなデザインの学習ソフトが届くわけです。
で、そういう事情を十分に知っている現場はどう思うか。
「結局、また負担が増えるだけでしょ。使えもしないもの導入して、指導主事(※教育委員会における学校現場担当の人たち)は何考えてるんだよ。まぁ、いいさうちらは好きなようにやるし、今までのやり方変えるつもりもないよ」
そしてたくさんの税金かけ、偉い人たちの思惑をもとにぶっ放したGIGAスクール構想は現場には全く響かず今まで通りの授業が展開される、と。
クソめ。
そうじゃねぇだろ、まずは予算つけろよ、それからクソ安くてクソ使えないソフトを現場に使わせんなよ。
現場のやる気のある教員はこう考えているんですよ。
これを読んでいる親御さんの市町村が金持ってて、教育委員会がやる気あったら、マジでいい学習環境を整えてくれます。
でもそうじゃない市町村にお住まいだと箱、もしくは先生が使いたがらないソフトでGIGAスクール完了。
だから私、運次第って言ったんです。
じゃあなんで教育に予算つけないのって?
教育に金使ってもメリットがない
地方でも国でもいいですけど政治家が誰のために「政治」をやっているかって言ったら有権者のためです。つまり投票してくれる人。
主権者じゃないですよ、あくまで投票してくれる有権者です。
だから政治家は投票してくれる人たちのためには金も使うし、もしかしたら乳首も舐めてくれるかもしれません。
でね、誰が投票してくれるかって言ったら老人です。
カラオケ大会で純烈を熱唱して激烈なクラスターを発生させる人たちですが投票には行ってくれます。
この人たち基本的に暇だから雨が降ってても行楽日和でも投票所に足を運んでくれます。
だから当然この人たちを無視するわけにはいかない。高齢者福祉は手厚くなる一方です。
で、子供達、そしてその親御さんはどうかというとそもそも投票権がなかったり、行楽日和だと潮干狩りに出かけたり、雨が降ってたら家でモンハンやって投票を忘れたりします。ウカウカした人たちなんですね。
フツーに考えて投票しない人たちにお金使いますか?使いませんよね。
だから教育の予算はカットカットカット!政治家は庵野秀明と化すわけです。
そう、教育って政治家にとっては金かけるメリットないし、努力しても報われない分野なんです。だから後回し。
現場はどうなってんの?
先生たちって親御さんが考えていらっしゃるより10倍くらい真面目な人たちの集まりなんです。
同時に100倍くらい頑固な人たちなんです。
どうして頑固になっちゃったかっていうと革新的なことを言うと否定され、前例を踏襲し、変えようとすると上から嫌な顔をされちゃうからです。
「この前の校長会でGIGAの話が出たらしいから、うちの校長もなんか推進する気になってるっぽいけどありゃポーズだよな」
「働き方改革だなんだ言ってるけどどうせ金はおりないし、今までと変わんないよ」
「俺らは俺らで今まで積み重ねてきた授業実践があるんだ。ICTなんか関係ねーよ」
そして、校長先生も
「××くんさぁ、パソコン入れるのはいいけどこのまんまじゃ使われないよ。課長はなんて言ってるの?ちゃんと現場の意見も伝えといてよ。あ、でも教育長には頭あがんないから俺が言ったのは秘密にしといてね」
とか、もうグダグダ。
これがGIGAスクール構想を実践する現場の雰囲気です。
少しは伝わりましたか?
それでも希望はある
ここまで私は現実をお伝えしてきたつもりでございます。
そんなバカなと思われるかもしれませんが、学校現場はだいたいこんな感じです。
私?どう思うかって?
そりゃ決まってますよ。子供たちが大人の事情なんか関係なく、生き生き学んで未来に向かう力をつけて欲しいですよ。
そのためだったら箱だろうが、クソソフトだろうが使いこなしてやろうと思います。
でもね、威勢のいいことは言いましたけど、いいソフト入れて欲しいんですよね。
今後の日本を支える子供達に投資しないってはっきり言って狂ってますよ。
だから親御さんに声を大にして言いたい。
投票行けよ、ゴルァ!
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