働き方改革について 2118年「せいかつ」の教科書P32〜P40より抜粋

働き方改革について 2118年「せいかつ」の教科書P32〜P40より抜粋

以前、何かの記事で2118年の「せいかつ」の教科書を紹介いたしました。

その時はQOL(Quality Of Life)をディスりましたが、今回はもう少し真面目に2118年の「せいかつ」の教科書を紹介いたします。

 

中でも「21世紀初頭の働き方改革についての基礎知識」がなかなか示唆に富んでおりましたので一部を紹介していきたいと思います。

以下、全て2118年の「せいかつ」の教科書のP32〜P40より引用。

満員電車(Man-in-densha)

21世紀初頭、労働者を運搬するための奴隷列車のことをこのように呼んでいました。

密集した車内では暴言や痴漢、暴力が発生し、力の弱い子供や女性はしばしば脅されたり、怪我をするなど怖い目にあいました。

 

使用例)昨日、私は満員電車で痴漢をしました。

終身雇用制(Shu-shin-koyousei)

会社(Kaisha)と労働者の不平等契約にもとづく社会制度です。

労働者は人生を会社(Kaisha)に差し出すことによって金銭と交換していました。人生と金銭の交換が成立していた旧制度下の一時期、社会において広範に影響が及んでいた制度です。

 

使用例)終身雇用制のもとでは君の意志など無関係なのだよ。

マトリックス(Matrix)

20世紀終わりにワーナー・ブラザースによって配給された映画です。

人々は脳にプラグを刺されて機械に電力を供給する代わりに、機械から仮想現実を与えられるという内容の映画です。当時の人々はそれが自分たちのことだとは気づかずカンフーアクションに見入っていました。

 

使用例)マトリックスはあらゆる所にある。私たちを取り囲む全てだ。

上司(Jo-shi)

会社(Kaisha)から指示されて労働者の見張りをする役割を与えられた人々のことです。

課長(Ka-cho)とも呼ばれていました。米国の奴隷制度では、しばしば使用人は鞭を振るいましたが、上司(Jo-shi)は人事権を振るい労働者を管理していました。

 

使用例)有給を与えてくださる私の上司は素晴らしい人です。

ご指摘(Go-Shiteki)

上司(Jo-shi)が会社(Kaisha)の意向を忖度(Sontaku)して、労働者を操作する一つの手段です。

役に立つアドバイスとご指摘(Go-shiteki)を織り交ぜることによって、労働者を混乱させ意のままに操る上級上司のことを部長(Bu-cho)と呼びます。

 

使用例)この前の飲み会では部長の、ためになるご指摘が身にしみた。

課長(Ka-cho)

労働者を直接管理する下級上司(Jo-shi)のことです。

しばしば部長(Bu-cho)と労働者の板挟みになり、労働者に自分オリジナルのご指摘(Go-shiteki)をして、ことを収めようとします。しかし、部長(Bu-cho)ほどの説得力がないため双方からの信用を失いがちでした。

 

使用例)うちの課長は今月も予算を達成していない。

部長(Bu-cho)

課長(Ka-cho)を管理する上級上司(Jo-shi)のことです。

人心掌握にすぐれ、経営者の意向を忖度(Sontaku)するスキルを持っていました。人の心を読む力があり、役員(Yakuin)からは超能力者として重宝されていました。

 

使用例)部長、次の会議では社長にどう布石を打つべきかな?

役員(Yakuin)

労働者を使って会社(Kaisha)の利潤を高める方法を思案し、ストックオプションの価値を高めようとする人々のことです。

何をやっているのか分からないと労働者からは批判されていました。彼らは役員(Yakuin)間での政治的駆け引きにより事業部に予算を引っ張ってきたり、社長(Sha-cho)を籠絡する政治家です。

 

使用例)私は役員なので賞与が出ません。早稲田アカデミーの合宿は無理かもしれません。

社長(Sha-cho)

会社(Kaisha)の顔になってしまった人のことです。

任期の間に何も不祥事がないことを祈るため、神社へのお参りと労働者への感謝の気持ちを表すスキルに長けていました。本(Hon)をライターに書かせて人気取りをするのが得意な社長もいました。

 

使用例)うちの社長は麻雀最強戦に出場している。

有給(Yu-kyu)

労働者に与えられた、体を休められる可能性のあるクジのことです。

疲れた労働者は有給(Yu-kyu)に当選するため、上司(Jo-shi)に言うタイミングを見計らっていました。最適な時刻は昼休憩の後の13時か、仕事が終わる18時なので、労働者はそこまで待つ必要がありました。

 

使用例)「その有給を使う理由は何かな?」「コンサートです」「周りの気持ちを考えなさい」

忖度(Sontaku)

人の利害を見破ることができるスキルのことです。

部長(Bu-cho)は超能力者なので役員(Yakuin)が眉を1mm動かすのを見ると手に取るように気持ちを把握できました。しばしば役員の気持ちを読み取って先回りし、課長(Ka-cho)を飛び越えて労働者に指示を出していました。

 

使用例)「忖度の度がすぎるんじゃないかな、あの部長は」「それによって私たちは助かっているんですよ」

出社時間(Shu-sha-jikan)

満員電車(Man-in-densha)の通過儀礼を経ることで、精神力を鍛えるために決められたルールです。

間に合わない労働者はしばしば腹痛や電車遅延を理由にして出社時間に遅れることを上司(Jo-shi)に伝えていました。上司(Jo-shi)はそれが嘘だと分かっていましたが、ことを荒立てないように振舞っていました。

 

使用例)申し訳ございません。電車遅延のため、出社時間に間に合いません。

定時(Teiji)

労働者が会社(Kaisha)に差し出した自分の人生のことです。

一般的に9時〜18時ですが、通常は残業(Zangyo)によって更に自分の人生を会社(Kaisha)に安く買い上げられるため、副業(Fukugyo)を考える労働者は多くいました。

 

使用例)定時は仕事が終わるまでだ。仕事はまだまだあるぞ。

残業(Zangyo)

契約時間以上の人生を差し出す義務のことです。

先に帰ると不真面目だと思われるため、誰が先に帰るのかを見計らう忍耐(Shinobi)のスキルを労働者は身につけていました。2015年に起きた痛ましい過労死により働き方改革(Hatarakikata-kaikaku)が大流行しました。

 

使用例)残業代で飯食ってるのに働き方改革なんて余計なことしないで欲しいです。

住宅ローン(Ju-taku-loan)

労働者が逃げないように会社(Kaisha)に縛りつけておく社会の仕組みのことです。

家を手に入れる代わりに35年間労働者として働き続ける契約を金融機関と結ぶ仕組みです。家族を持ち家を持つことが社会から奨励されている理由の一つでもありました。

 

使用例)住宅ローン残高が5年でやっと4500万まで減りました。

働き方改革(Hatarakikata-kaikaku)

2015年に起きた東大出電通の若い女性社員の過労死により大流行した現象のことです。

年間500人程度が自殺を含めて過労死していましたが、東大、電通、若い、女性、というキーワードでようやく興味を持った経営者が流行に乗って始めました。通常は20時に無理やり消灯することを指しています。

 

使用例)働き方改革のせいでオフィスが真っ暗だ。

忍耐(Shinobi)

退社時間(Taisha-jikan)をめぐって会社(Kaisha)の同僚と行うチキンレースのことです。

20時にオフィスが真っ暗になり、課長(Ka-cho)の目を欺くのが容易になりました。これによって労働者は忍耐(Shinobi)のスキルが必要なくなったのと同時に視力が悪くなりました。

 

使用例)新人のうちは忍耐も仕事のうちの一つだぞ。

謝罪(Shazai)

本題に入るための儀式のことです。

一度頭を下げ、「申し訳ございませんでした」と言い、泣きそうな顔をするのが謝罪の形式です。二拝二拍手一拝のように形式が決まっています。間違えることは許されませんでした。

 

使用例)私の謝罪する姿を見て正しい謝罪の仕方を学ぶんだ。

おもてなし(Omotenashi)

忖度(Sontaku)の達人による名人芸のことです。

やらなくてもいいことをやるある種の美徳のようなもので、その分の費用は上増しして請求されることが一般的でした。上増しされた費用はおひねり(Ohineri)とも呼ばれていました。

 

使用例)顧客にはおもてなしの心をもってのぞむんだぞ。

顧客目線(Kokyaku-mesen)

サービス業において労働者必須のスキルです。

きちんと伝えられてもいない顧客の立場や状況、気持ちを推しはかるための心構えのことを指しています。一般的に製品に自信のない会社(Kaisha)が労働者に命じる傾向がありました。

 

使用例)顧客目線が大事なの!お客様の立場に立ったら何して欲しいと思う?

営業マン(Eigyo-man)

情報の非対称性を武器に人や会社(Kaisha)に物を売る人たちのことです。

2018年当時は人々の間に情報格差があり、こういった職業が成立していました。月末に既存顧客に電話をかける習性もありました。

 

使用例)担当の営業マンが優秀だから、いらないものまで買ってしまった。

本(Hon)

主に自分や自分の会社(Kaisha)を売り込むために利用する手段のことです。

ある程度の規模の会社(Kaisha)の社長はライターに依頼して本(Hon)を出しており、営業マン(Eigyo-man)に配るように命じていました。

 

使用例)実は弊社の代表が書いた本が好評でして。

小学校(Sho-gakkou)

均等な能力を持った労働者を育てるための機関のことです。

当時流行っていた「さくらんぼ算」のさくらんぼがうまく描けないと計算結果が合っていても、間違いになることがありました。会社(Kaisha)と同様に、先生(Sensei)によるご指摘(Go-shiteki)があります。

 

使用例)小学校なんか行きたくないよ!

先生(Sensei)

目の前の子供への思いと社会の仕組みとの間で揺れている人たちのことです。

さくらんぼがうまく描けなくてもいいと思っていたとしても、さくらんぼのヘタが描かれていないとバツにせざるを得ませんでした。中学や高校の先生になると、また別の心の揺らぎもありました。

 

使用例)ねえ、先生、わたし、まだ女子高生でいたいよ。

副業(Fukugyo)

労働者が会社(Kaisha)の目を盗んで行う金銭取得行為のことです。

会社(Kaisha)は労働者を安く使っていることがバレると都合が悪いため、規定を設けて対処していました。そのことに気づいて逃げ出した人々は、会社(Kaisha)ではなく労働者から弾圧を受けました。

 

使用例)副業なんかやっているあの人は不真面目だ。

イケダハヤト(Ikeda-Hayato)

労働者による弾圧を受けていた人物です。

後世になって労働者の味方だったことが判明しますが、口が悪く、大金を稼いでいたため、当時は労働者によって厳しい弾圧を受けました。

 

使用例)イケダハヤトは年収150万以上得ている。

会社(Kaisha)

労働者の人生を金に変える仕組みのことです。

マトリックス(Matrix)の機械に該当する存在です。様々な手段で労働者を囲い込み、逃げないように目を光らせていました。

 

使用例)会社員って安定してて最高です。毎日満員電車に乗って、上司の顔をうかがっているだけでお金が入ってきます。

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