【中学受験】引き算ってなに? マイナスの数で引くとプラスになる理由と植木算の関係

「マイナスの数で引き算するときはプラスにするのはなんでなの!?」
と、お困りのみなさんハロー。今日も元気にヤってますか?
いきますよぉ〜、3引く−3は?
6!
算数、数学を勉強していてわけわかんなくなる2つの問題のうちの一つがこの「マイナスマイナスプラス問題」でございます。もう一つは「分数の割り算をするときは分母と分子をひっくり返してかける問題」です。
すなわち、2大巨頭。
ビートたけしとビートきよしみたいなものですね。あるいはミライトワとソメイティ?
きよしは巨頭ではないって?失礼ですね。きよしに謝りなさい。
ちなみに、これ、私が勝手に2大巨頭だと決めつけてるだけで本当かどうかは知りません。
ともあれ、そんな算数、数学界のゴジラとモスラのうちのモスラをやっつけていこうというのが今回の趣旨でございます。
最初に結論だけ言ってしまいますと、引き算を「引く」方法として捉えているから訳が分からなくなるんです。引き算は「差」を求める方法と捉えると「マイナスマイナスプラス問題」はたちどころに理解できるようになります。
どういうことか?
3引く−3は正の整数の3と負の整数の−3の差を求めているんです。で、この答えは6になる。この6という値は3と−3の差です。
分からない?じゃあ詳しく話していきましょうか。
マイナスの数の引き算が納得できなくなる理由
中学に入学すると初っ端にやるのがマイナスの概念です。
小学校から中学に進学した、まだ幼い顔の子らはいきなりこう習います。
「いいか、マイナスの数で引き算をするときはプラスにするんだ。例えば、「3引く−3」は「3ー(ー3)」と書く。マイナスとマイナスが二つ出てきたらプラスの合図だ。つまり「3+3」と変形して、答え6と出すんだ。いいな。覚えちまえYO!」
分かったような分からないようなマイナスの数の引き算について説明を聞きながら、「まぁいっかぁ!そういうものなんだな!」と思えたらしめたものですが、引っかかる子は少なからず存在します。
なぜだ、と。
そういう子はまず、マイナスの数で引くという行為自体が意味不明に感じます。そもそもマイナスってなんだよ、と。
だって、マイナスの数なんて普通に生きてて遭遇します?
マイナス3個のリンゴを食べてる人とか、マイナス3人のお母さんがコメダ珈琲店でお茶してる現場とか、遭遇したことないでしょ?
小学校の頃の引き算ではこんな感じの文章題が出題されると思います。
「リンゴが全部で6個ありました。花子さんはリンゴを3個食べました。残りは何個ですか?」
6−3=3で答えは3ですよね。
ではこんな感じの文章題は出題されましたか?
「リンゴが全部で6個ありました。花子さんはリンゴをマイナス3個食べました。残りは何個ですか?」
見たことないですよね。
だいたいマイナス3個食べたってなんだよ、と。花子さんゲロ吐いたのかよ、と感じるはずです。
「リンゴが全部で6個ありました。花子さんはリンゴを3個食べました。残りは何個ですか?」という問題に慣れると、引き算ってのは何かから何かを引く、つまりさっ引いたり、消去したりするものだと認識するようになります。
このような認識ですと、マイナスの数で引き算をするということがよく理解できません。
そらそうですよね。
マイナスの数なんていう訳の分からない数で差し引くなんて現実的に経験したことないでしょう。
だからマイナスの数で引くときはプラスにする、という理屈がよく分からない訳です。
ところが、引き算を差を求める方法と理解しているとマイナスの数で引くときはプラスになる理屈がめっちゃ理解できます。
得意の絵を描きますよ。6ー(−3)=9を絵にして説明します。
変な形をした赤いやつはリンゴです。0地点を境にして、左側がマイナス、右側がプラスです。
6個のリンゴと−3個のリンゴの差を数えてみましょう。左から数えてみてくださいね。
ひとーつ、ふたーつ、みっつ・・・、全部で9個ですね。差は9個。つまり、6ー(−3)は9と答えが出ます。
これがマイナスの引き算の正体です。
決して6個のリンゴから−3個のリンゴを引いているのではないです。
6個のリンゴと−3個のリンゴの差を求めているんです。
なぜ、マイナスの数で引くとプラスになるのか理解できましたか?
理解できた?OK!
そして、どうしてマイナスの数で引くとプラスになるのか納得できないのかも理解できましたか?
そう、引き算を「差し引く」と理解しているとマイナスの数で「差し引く」ということが現実的にあり得ず、わけわからないからです。
植木算で引き算を理解する
さて、引き算は差を求めること、というのが理解できましたかね?
小学校では多くの生徒は習いません。
ところが習う生徒もいます。
中学受験をしている生徒です。
どの単元で習うのか?
植木算です。
中学受験をする生徒だったら小学4年生で勉強する植木算で引き算とはなんぞやを習います。
では直線的に木を植えていく場合の植木算の問題を見てみましょう。
直線的に木を植えていく場合の植木算
「8本の木を20m間隔で直線的に植えていきました。端から端までの距離は何mか答えなさい」
(8−1)×20=140
答えは140m。簡単ですね。
これを絵にします。
木の本数は8本ですが、差は7ですね。
植木算で求めるべき距離は左端の木から右端の木までの「差」であって、要素の数ではないんです。
問題で求められているのは左端から右端までの距離、つまり「差」です。だから、「8−1」とするわけです。
さっきマイナスのところで描いたリンゴの絵でも同じことが言えます。
ではリンゴで植木算をやってみましょう。
「−3個のリンゴと6個のリンゴを10cmの等間隔に並べていきました。端から端までの距離を求めなさい」
{6ー(−3)}×10=90cm 答え90cm。
これをリンゴの絵で見てみましょう。
はい、青っぽいホニャホニャが差です。数えてみてくださいね。差は9でしょう?
ただ、おや?と思われる点があるかもしれません。
そう、0地点の左右に1つずつホニャホニャがありますね。
実はマイナスとプラスの数字の間には見えざる0地点というのがありまして、−1でも+1でもない見えざる0というリンゴがあるんです。
だから、0地点の左右にはホニャホニャがあります。
周りに木を植えていく場合の植木算
では次に丸い池の周りに木を植えていく場合の植木算を考えてみましょう。
「池の周りに20m間隔で木を8本等間隔に植えていきました。池の周りの距離を求めなさい」
8×20=160m 答えは160mです。
ではロマン派の巨匠が例によって絵を描いていきます。
木と木の間は8つありますね。ですから、8×20で160mです。植木算の超初歩です。
「周りに植える場合は1を引かなくてもいいのね。そんなもん楽勝。覚えりゃいいじゃん!」
って思いました?
アホか。
そんな理解の仕方をしてると後々で苦労しますよ。実体験です。ちゃんと理屈を理解しなさい。
人に説明できるまで噛み砕いて理解しなさい、とかつて失敗して、あとで基礎の重要性に気づいた当人が言っているのですから信じてくださいよ。
円形の池の頂点の木を基準点として、差について考えていきます。
直線的に木を植える場合と円形に木を植える場合で、どうして答えに違いが出るのか。
それは一言で言うと求めるものが違うからです。
では円形の池の絵に色々付け加えてみましたのでもう一度見てみてください。
赤い線は1本目の木から8本目の木までの距離です。つまり、直線的に木を植える場合の植木算ですね。
黄色い線は0本目の木から8本目の木までの距離です。つまり、円形に木を植える場合の植木算です。
違いはわかりましたか?
2つの問題の違いは、求められていることの違いです。
円形に木を植える場合の基準点となる木は0本目の木であり、8本目の木でもあるんです。
ですから円形の池の周りに木を植える場合の植木算は、正確に記述すると、
(8ー0)×20=160m
となります。
植木算の方法を覚えるだけじゃなくて、なぜ方法が異なるのかをしっかり自分の頭で理解する、それが大事なことです。
そして、植木算をしっかり理解すると、引き算の本質が見えてくる。
だから「マイナスマイナスプラス問題」でつまづくことはない、ってわけです。
引き算をきちんと理解しよう
まとめておきますよ。
引き算ってのは「差し引く」ための演算方法というだけでなく、「差を求める」ための演算方法でもあります。
とりわけ「差を求める」演算方法という性質を理解していると、難しい問題や新しい概念にも対応できるようになります。
これって、植木算だけの話じゃありません。
中学受験、いえ、今後習うであろう算数や数学の基礎になる理解です。
よく基本が大事と言われますが、基本の学習ってのは基本演習のことじゃありません。
自分の頭で考え、基礎の本質を捉えることです。
んなこと子供は考えもしないって?
いえいえ、考えますよ。
でも、立ち止まって考えて自分の頭で理解できるまでに至らず、中途半端に終えている子が多い。時間的な余裕のなさとか周囲のサポートの不足とかでね。
一つ一つきちんと立ち止まって考えて、粘り強く問題と向き合える子ほど成果を残します。
スピードだけじゃモスラには勝てません。
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