家庭教師業は無理ゲー!?ビジネスモデルから優秀な家庭教師を探してみる
家庭教師業が無理ゲーである理由は昨日書きました。収益構造から見て、普通にやっていたら儲かるわけがありません。
とはいえ家庭教師という職業がある限り、無理ゲーを乗り越えてやっている人たちは確実に存在します。
今日は検索で出てきた家庭教師関係のWebサイトから、優秀な家庭教師のWebサイトをピックアップします。
優秀な家庭教師とは
①正社員である
②家庭教師が専業である
③難関校の問題が解ける
これが優秀な家庭教師の最低条件です。
ところで、私が知っている本当に優秀な家庭教師は勉強を教えませんでしたが、生徒の成績を爆発的に上げていました。
家庭教師に教わっている時間はせいぜい週1回、2時間程度ですので、1ヶ月で8時間です。それに比べて自分で学習する時間は1日4時間として1ヶ月で120時間です。
圧倒的に自分で学習する時間が長いです。折角、授業中に蒙を啓かれても自分で行う学習が効果的でなければ、成績など上がりません。だから、家庭教師の最も大切な資質は生徒が自分で正しい学習ができるようにすることです。
その最低条件が上の3つです。
さて、最低条件を満たす家庭教師の特徴は以下であると仮説を立てたところまでが前回の記事でした。
①会社組織ではなく
②ごくごく少人数(1人か2人)
③講師料が高い
家庭教師のWebサイトをビジネスモデルで分類する
で、本当にそんな家庭教師がいるのか調べてみたわけですよ。検索で。
1ページ目、いない!2ページ目、いない!3ページ目、いない!
と、・・・諦めかけたその時、4ページ目にいました!!!5ページ目にもいますいます!ヒットォォォ!
と、その前に家庭教師関係で検索して出てきたサイトを何百と見て、ビジネスモデルによって分類ができることに気づきましたので、まずはそこから書いていきます。
家庭教師派遣業
入会費ってなんだ?
この人たちは主に検索結果の1ページ目とリスティング広告を独占しています。家庭教師派遣センターとか〜会というのが家庭教師派遣業です。
ちなみに検索した時にURL(アドレス)の横に「広告」と書かれて出現するリンクがリスティング広告です。クリックされると、広告出稿主に費用が発生します。
ちなみに「中学受験 家庭教師」でリスティング広告を出すと1クリックで500円〜1200円です。ざっくり言いますと、一番上に出てくる広告をクリックすると1回で1200円広告出稿主に費用が発生します。500円の広告は下の下の下の方です。
さて、計算していきましょう。
教育関係のコンバージョンレート(クリックに対して資料請求や申込に繋がった割合)は他の業界に比べて高く平均して5%〜10%程度です。一番打率が良かったと仮定して、10回クリックされたら1回くらい資料請求とか無料体験授業に繋がるわけですね。
10回のクリックを広告のみによって発生させていて、1クリックの費用が1000円だとすると資料請求とか無料体験授業1件を獲得するのに10000円かかります。
資料請求や無料体験授業をしたとしても契約に至るかどうかは分かりません。資料請求や無料体験授業だけで「やーめた」となる人もいますから、入会する人はさらに少ないです。
申し込みを1件獲得するのに20000円〜50000円というところでしょうか。
ところで、家庭教師紹介業の人にしてみると広告にかけた費用を回収する必要があるわけです。
で、家庭教師紹介業のWebサイトを沢山見るうちに違和感に気づきました。彼ら、ほぼ必ず入会金を取っているんです。しかも判で押したように20000円。
入会金は十中八九、広告等生徒獲得にかけた費用を早期に回収するための策です。広告以外にも自然に検索結果に表示されて資料請求や無料体験授業を獲得し入会に至るケースもありますが、それらも加味したとして
生徒一人当たりの獲得コスト=20000円
くらいになるのではないかと推測します。
なぜ獲得コストを最初に回収するのかって?
入会金取らなかったとしたら、生徒を獲得しても2〜3ヶ月はトータルで儲けゼロです。なぜって?家庭教師の月謝が月50000円だとして、マージンが20%だったら紹介業に入ってくる金は月10000円。生徒1人あたりの獲得コストが平均20000円だとしたら、3ヶ月目でようやく利益が出る計算です。
そんな悠長な商売するわけありませんよ。
家庭教師派遣業のビジネスモデル
楽して稼ぎたいと思うのは人の常。家庭教師をやっていても儲からないことは前回も書いたとおりです。
労働集約モデルだからです。
労働集約モデルというのは人の労働力に依存するモデルです。
まさに家庭教師は労働集約モデルの最たるものです。
このモデルでは労働者一人当たりの売上に限界点があり、規模の拡大をしようとするとそれに比例して人を雇わなければいけないという特徴があります。
設備やIT技術によっても労働者の生産性をあげにくいビジネスモデルなんです。
このモデルから脱するためには、規模を拡大しても労働者の人数が変わらないようなビジネスモデルを考える必要があります。
家庭教師派遣業であればそういったモデルを構築できます。
生徒からの月謝の20〜30%をマージンとし、残りを登録された家庭教師に支払うようにすると、家庭教師派遣業の人たちは働かずに月謝の20〜30%の定額収入を得ることができます。更にWebサイトを成長させ、広告をかけることで生徒を家庭教師に紹介していき、どんどん定額収入が増えていきます。
営業力のない家庭教師の人たちからすると中間マージンを抜かれるとはいえ随分ありがたい存在だと思いますよ。登録しておくだけで自分の暇な時間を金に変えられる可能性があるのですから。
営業力のない家庭教師というのは、紹介だけではコマの埋まらない家庭教師です。
家庭教師派遣に登録されている家庭教師はひとまず候補外とします。
家庭教師センター紹介型
例えば、こんなWebサイトが該当します。
家庭教師の派遣ではなく、家庭教師派遣業の紹介を行なっているサイトです。上から並んでいるのはこんな感じです。
家庭教師のトライ
家庭教師学参
家庭教師のノーバス
塾ナビの場合、トライや学参、ノーバスにリンクで飛ばしておらず、塾ナビ内で資料請求や問い合わせに繋げようとしていますので恐らく成果報酬型です。資料請求1件につき、〜円みたいな。
あるいは掲載料+成果報酬でしょうかね。
で、掲載料もしくは成果報酬単価が高いところから順番にランキングされているのでしょう。
OK、経済合理性!
また、塾ナビと似たようなサイトで、家庭教師比較ネットというWebサイトもありますが、こちらも見事に家庭教師センターにリンクを飛ばしておらず、自社のWebサイト内で資料請求まで完結させる作りになっています。
中学受験家庭教師選びの決定版というWebサイトでは塾ナビや家庭教師比較ネットとは異なり、それぞれの家庭教師センターにリンクを飛ばしています。こちらは成果報酬型ではなく、掲載料をメインとして金を取っているのでしょう。アフィリエイトではない(URLの後ろに「?ad=****」みたいなのが付いていない。あとはアフィリエイト用のタグがソースにない)ので、掲載料でしか儲ける術がありません。
「中学受験家庭教師選びの決定版」の厳選五社は上から順番に、
家庭教師のノーバス
家庭教師のトライ
中学受験ドクター
中学受験鉄人会
東大家庭教師友の会
です。
ノーバスとトライはどのサイトに行っても出てきますね。あと、サイトに掲載するだけでなくリスティング広告もかけてます。
つまり広告費に金をかけられる収益力のある会社だということが分かります。かけた費用の回収もしっかりするんでしょうね。
さて、ノーバスとトライ、入会金を見てみましょう。
トライ:書いてない!
ノーバス:21600円
一説には43200円だそうです。
トライは広告宣伝費にすごくお金を使っていて、他の家庭教師派遣の倍の入会金じゃないと回収できないんでしょうね。営業努力が素晴らしいですね。
なお、家庭教師派遣に登録している家庭教師は営業力がない=紹介が得られないとみなし、家庭教師センター紹介サイトに載っている会社も優秀候補から落とします。
優秀な家庭教師はここにいる!
そしてそして、無理ゲーに果敢に挑戦している人たちの紹介です。
あ、ちなみに、私とこの人たちは無関係です。報酬ももらっていないですし、知り合いでもありません。
ただ、己の家庭教師としての実力に対する揺るぎない自信と教育への熱意に惚れたから紹介するだけです。そして困っている親御さんに本物の確率が高い家庭教師を伝えたいだけです。
ではいきます。
第1位 細川さん
【中学受験専門 国語プロ家庭教師 細川】東京23区・千葉県北西部
Webサイト内全部読みましたがこの方本物です。一人でやっておられて、国語を解く技法を超詳細に解説しておられます。研究熱心で、テクニカルな印象がありますがめちゃくちゃ誠実です。
ウィンドサーフィンとドラム演奏が趣味です。写真の印象ですと「理屈っぽいおじさんかな・・・」と思ってしまいますが、ウィンドサーフィンが趣味ということで少し安心しますね。
習志野市在住で1時間あたり6500円、基本は週1回2時間ですから月額にして52000円。超格安です。
第2位 熊野さん
この人のWebサイトも全部読みましたよ。細川さんほど気合いは感じさせませんが、Webサイトから自信がみなぎっています。
算数で我が子が困っていたら熊野さんに相談したい・・・、そう思わせてくれるものがあります。
ちなみに熊野さんの料金設定はこうなっています。
【5年生】 90分:16,000円、120分:19,000円
【6年生】 90分:17,000円、120分:20,000円
月2回もしくは1回の授業が前提のようです。すごい自信!普通だったら生徒1人あたりの収益を最大化するために週1回以上に設定します。ところがこの方、多くても月2回に設定してるんです。
結構な量の生徒と、顧客候補を抱えているに違いありません。
茅ヶ崎駅の周辺に住んでおられますので神奈川の方は要チェックです。
第3位 原田さん
算数の教え方+受験アドバイス ~教育パパ・ママを応援します~
東大寺学園中・高等学校、京都大学経済学部卒という鉄壁の経歴。苦労をされて、今は奈良に住んでいるようです。
料金体系は、
近鉄奈良駅から電車で60分未満 → 1時間8000円(1回3時間・週1回から)+交通費
近鉄奈良駅から電車で60分以上90分以内 → 1時間9000円(1回3時間・週1回から)+交通費
3時間未満の授業を認めていないあたり、少人数の生徒で収益を確保したい、つまり本気で向かい合いたい気持ちがめちゃくちゃ伝わってきます。
私が最も共感したのは、
教え方の特徴は「出来るだけ教えないように教える」「解き方を見つける勉強」「泥臭い勉強」「徹底的にやり抜く」
引用元 原田さんWebサイト
ここです。
Webサイトをくまなく見て原田さんのファンになってしまいました。
その他、第一位の細川さんが個人的なつながりで紹介してくれている家庭教師もいます。
西村さんのWebサイトは細川さんのWebサイトをそのまま流用しているあたり、細川さんから「Webサイトが作れない!?俺が作ったのを使ってみろよ!」と言われたんじゃないかと勝手に想像してしまいます。でも西村さん、肝心の国語の学習方法が準備中なんですよね。。。
なぜ個人の家庭教師を執拗に推すのか
個人事業として家庭教師をやっている人たちを私がなぜ推すのか。主に3点の理由があります。
①個人でも食える
個人で食える=家庭教師登録センターに登録せずに食える、ということは生徒から高い評価を受けており紹介があるはずです。家庭教師の営業を個人でやるのは非常に難しいです。したがって紹介や口コミが営業のメインとなっているはずです。紹介は優秀である証です。
紹介がなかったら、派遣センターに登録して中間マージンを抜かれながらやらざるを得ません。
②儲からない業態でやっていこうとする心意気
例えば細川さんは四谷大塚の講師、市進学院、駿台小中学部、家庭教師派遣センターを経て独立されています。見込み顧客がいなければ独立できないですよ。
恐らく家庭教師派遣センターで一定の評価を得て、独立できる手応えを掴んでから独立されたのだと思います。家庭教師が収益面で苦しいことは百も承知で、見込み顧客がいる事実と自身の教育にかける情熱をもとに独立されたと推測します。
また、大人数の塾から家庭教師センターを経ている点でも、「個別で教えてあげないと子供たちを救えない」と考えた気持ちが伝わってきます。
③事業の拡大を目指していない
事業の拡大を目指すのであれば、派遣業や掲載業に移行するように考えるはずです。ただ、上のお三方はそうではなく、自分が家庭教師を行う道を選んでいます。
生徒と向かい合う収益的に厳しく不安定な道をとった、その意味で私は本当に尊敬しているのです。
個人の家庭教師が収益最大化を実現するには
理論的には生徒一人当たりの収益を最大化すべきです。
①生徒1人あたり月10万で5人抱えていたとしたら、50万の収益
②生徒1人あたり月5万で10人抱えていたとしたら、50万の収益
どちらが難しいでしょうか?正解は②です。個人家庭教師にとっては生徒の獲得が難しいでしょう。また、スケジューリングも人数多い方が難しいです。さらに②の方が①よりも総移動時間が多くなります。
とはいえ流石に生徒一人当たり月10万以上かかるとしたら顧客層が限られてしまいますので、大体、月6万〜8万の範囲に収めようとします。
ところで紹介やホームページからの問い合わせが折角来たとしてもスケジュールの都合で断らざるを得ないケースが出て来ます。でも断ってしまうのはもったいない。
収益を最大化したかったら断らず知り合いの家庭教師に紹介します。紹介料としてその家庭教師に月謝の10%のキックバックを毎月要求します。20%だと紹介業とあまり変わらなくなってしまうため、10%に設定しておいて知り合いの家庭教師が気持ちよく受けてもらえるようにします。
というのを重ねていきそのうち「中学受験プロ家庭教師 最強列伝」みたいなWebサイトを立ち上げて、優秀な仲間たちで生徒をシェアしあう仕組みを作って胴元になると儲かるんじゃないですかね。
「国語界のラオウ 佐藤講師」「算数が一目惚れして泣いた 鈴木講師」「ニュートンに理科を教えた 田中講師」「社会をおかずにご飯10杯 高橋講師」みたいなキャッチフレーズつけて。
番外編 中学受験ドクター
今回見ていった中で中学受験ドクターは異質でした。
無理ゲーであるはずの法人組織で、かつ正社員の家庭教師。一般企業並みの待遇(給与は月給30万円+授業手当別途支給)。
しかも広告をかけていて、校舎まで存在する。
こんなビジネスモデルが存在するわけない、と思い色々見ていくと、ここが個別指導塾と家庭教師を兼業しており、かつ家庭教師にランクをつけているのに気づきました。
正社員とバイトを併用し、給与の高い正社員は個別指導塾で生徒を見て、個別指導で成績が伸びない子供は家庭教師を紹介して個別指導塾と家庭教師で収益を得るモデル、と推測します。
家庭教師派遣業+個別指導塾のハイブリッド型です。正社員は家庭教師よりも利益率の良い個別指導塾の講師として活躍。更なるアップセルを見込めそうな生徒を見つけて家庭教師をつける。
入塾者の数で収益を競うのではなく、入塾者一人当たりの収益を最大化するってのは合理的だなと思います。
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