【中学受験】公立中高一貫校を目指すメリット、倍率、併願校について

【中学受験】公立中高一貫校を目指すメリット、倍率、併願校について

近年、中高一貫校の受験(受検)といっても私立だけの話じゃなくて公立も含めての話になっております。

親世代がまだランドセルを担いでいた頃は中学受験と言えば私立と相場が決まっていたものです。

が、今現在はそもそも中学受験(受検)と言っても私立を目指すのか、公立を目指すのかによって勉強法も、塾選びさえも変わってくると喧伝されております。

 

じゃあ、そもそも私立を目指すのと公立を目指すのとで何が違うのか、その辺を今日はお話ししていこうという算段でございます。

そもそも公立の中高一貫校ってどんな学校があんの?

私立はだいたいイメージがつきますが、公立はあまり馴染みがないかもしれません。

ですから公立中高一貫校について話していくことにしましょう。

 

首都圏だけでも色んな公立の中高一貫校があります。

都立うんちゃら、県立うんちゃらとまぁ一校ずつ紹介していったら日が暮れてしまいます。

 

こういう時は分類して考えましょう。公立中高一貫校には3種類あります。

これだ!

  1. 連携型
  2. 併設型
  3. 県立(市立)・都立中等教育学校

 

はい、この3種類です。連携型?併設型?なにそれ?と思われるかもしれませんね。

 

いわゆる中学受検をして入るような高等学校附属中学校は併設型です。連携型は学力云々じゃなくて中学校と高等学校の結びつきが強い地域、主に田舎の方にあるような学校です。

そういった地域では中学と高校が連携して教育を進めてくれます。もちろん中学校には受検なしで入れます。高校にも簡単な試験で入学できます。うらやましい。

中高一貫校ついて↓

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/2/1316125.htm

 

で、受検が必要な併設型と中等教育学校でございますが、こちら市立・区立と都立・県立に分けられます。

市立高等学校附属中学校、市立(区立)中等教育学校について

東京の人は市立附属なんてあるの?思われるかもしれませんね。だって、区立の附属中学校なんてありませんものね。

もちろん市立附属ありますよ。

例えば川口市にある川口市立高等学校附属中学校とか、川崎市にある市立川崎高等学校附属中学校とか、千葉市にある市立稲毛高等学校附属中学校(ここは22年度から中等教育学校になる予定)とか。

県立と何が違うのかっていうと、原則として市内に住所があることが条件ってのが大きな違いですね。(都立や県立は都や県に住所があればOK)

※一部の市立中高一貫校は市外からの入学も一定数認めています

 

ちなみに区立でも付属中学校ではなくて中等教育学校はございます。千代田区立九段中等教育学校です。

 

試験の形式は県立中高一貫校と同様に適性検査、面接・作文(ないところもある)。県立と同じです。

 

合格倍率は総じて結構高いです。東京、埼玉、千葉、神奈川に絞ってご紹介しますと、

地域学校名募集人員倍率
埼玉県川口市立高等学校附属中学校80名7.0倍
埼玉県さいたま市立浦和中学校80名6.9倍
千葉県千葉市立稲毛高等学校附属中学校80名7.3倍
神奈川県横浜市立南高等学校附属中学校160名5.6倍
神奈川県横浜市立サイエンスフロンティア高等学校附属中学校80名6.4倍
神奈川県川崎市立川崎高等学校附属中学校160名2.9倍
埼玉県さいたま市立大宮国際中等教育学校160名3.9倍
東京都千代田区立九段中等教育学校160名3.6倍(A、B混合)

※2021年度、一次検査データ

 

どこも超人気です。記念受検で受かるようなレベルではございません。

県立・都立中高一貫校について

さて、都立・県立の学校とその入学倍率は以下の通りとなっております。

 

県立・都立高等学校附属中学校

地域学校名募集人員倍率
埼玉県県立伊奈学園中学校80名4.9倍
千葉県県立千葉中学校80名7.5倍
千葉県県立東葛飾中学校80名10.2倍
東京都都立武蔵高等学校附属中学校160名3.0倍
東京都都立両国高等学校附属中学校120名6.7倍
東京都都立白鴎高等学校附属中学校135名5.5倍
東京都都立大泉高等学校附属中学校120名5.7倍
東京都都立富士高等学校附属中学校160名3.1倍

※2021年度、一次検査データ

 

県立・都立中等教育学校

地域学校名募集人員倍率
神奈川県県立相模原中等教育学校160名7.0倍
神奈川県県立平塚中等教育学校160名5.7倍
東京都都立桜修館中等教育学校160名5.8倍
東京都都立三鷹中等教育学校160名5.4倍
東京都都立小石川中等教育学校159名4.6倍
東京都都立南多摩中等教育学校160名4.9倍

※2021年度、一次検査データ

高等学校附属中学校と中等教育学校の違い

ざっくり言っちゃいますよ。

高等学校附属中学校はあくまで高校の附属です。

ですから、中学は中学、高校は高校。中高一貫というよりは中学から試験なしで高校に行けるくらいのイメージです。

当然、高校から人が入ってきます。

 

でも中等教育学校は、

中高一貫教育を実施することを目的とする新しい学校種として設けられたもの

引用)文部科学省 中高一貫教育の概要

ですので高校から人が入ってきません。いわゆる中学受検時にしか入れない学校です。

 

「中等教育」というのは中学校と高校の教育課程を指します。中学校の教育課程を前期課程、高校の教育課程を後期課程と言います。

同じ中高一貫と言っても附属型とは似て非なるものです。学校種が違います。

 

最近、私立でも中学からしか入れない学校って多くなってるじゃないですか。で、中高一貫のカリキュラムのもとで学習する学校。中等教育学校ってのはあれとほぼ一緒です。

昨今、私立は高校入学をストップする学校が増えています。

なぜかと言うとそのほうが大学受験を見据えて6年間のカリキュラムを構築できるからです。

 

要するに中学の教育課程と高校の教育課程とで一貫していた方が都合がいい、より良い教育ができるぞ、というわけです。つまり中高一貫らしい教育を受けられる学校が中等教育学校です。

公立中高一貫校人気、喜んでいいものか

これだけ人気の公立中高一貫校。公教育の逆襲。きっと公教育は真っ赤なのでしょうね。

参照)シャアの逆襲 ウェブサイト

 

でもね、これ本当に公教育の逆襲なんでしょうか?

公立中高一貫校を目指している、もしくは目指そうとしている親御様は公教育の理念に共感して公立目指しているんですかね?

 

きっとちょっぴり理由が違うんじゃないでしょうか?

 

私立よりも金がかからない、近所にあるから通学時間が短い、何より中高一貫で高校受験がない

 

入塾説明会(営業)の時にこんなこと言われませんでしたか?

「今や中学受験(受検)は公立を選ぶか私立を選ぶかの時代death!そもそも中高一貫校のメリットは何たるか!それは高校受験がないことdeath!県立の進学校に入るには3年間内申点を意識しながら学校生活を送ることになりmath!いいですか、9教科全てオールマイティにこなさなきゃいけないんですヨ!一回でも赤点取ろうものなら、それで進路は閉ざされます!だから中学受験(受検)で頑張って中高6年間をノビノビ過ごした方がいいんdeath!私立だって高校入学を絞ってます!選択肢が狭まるんですヨ!」

 

必殺内申点トーク。

これ一発でだいたいやられちゃいます。

 

ご自身が経験された公立中学校での理不尽な記憶、勉強も音楽も技術も美術も頑張って、そして部活に半強制的に入らされて、生徒会活動にいそしみ、積極性アピールのために先生に質問に行く、と。

やっと勝ち取る進学校への切符(ただしまだ切符は切られていない)。

 

これ、パワハラですよね?

 

我が子にはご自身が経験してきたパワハラまがいを経験させたくない。

だから中高一貫校に魅力を感じているんじゃないですか?

 

塾はそのあたりの事情をよーく分かっております。最近の塾のセールストークはほぼこれです。

 

だからと言って塾が悪どいと言いたいわけじゃないんです。事実そうなんですもの。塾は事実を突きつけているだけ。

じゃあ親御様の中高一貫校への進学熱を焚きつける燃料はなんなのかというと、そもそもは現在の公立中学〜高校進学システムに対する不信感。

 

公立中高一貫校を目指す気持ちってすごくねじれた構造になってるんです。

 

公立中は嫌→だって内申が理不尽だから→それがない中高一貫がいい→でも私立は学費が高いし、長時間の通学もさせたくない→あ、近所に公立の中高一貫校があるじゃん!→おっしゃ!そこ目指すぞ!

 

公立中学校は嫌だと思いながら中高一貫の公立を目指す。

学費の問題もありますから、中高一貫だったら公立でとお考えの親御様は多いかと。

 

また、地方ほど内申があまり関係のない私立の選択肢が少ない。だから県立高校を目指すわけですが、ご自身を振り返ってみるとだいぶ窮屈さを感じていたはずです。で、ご自身が嫌だったシステムに我が子を預けるかっちゅう話です。

これって公教育の勝利って言えますかね?

 

むしろ中学と高校が分かれていることの弊害に気づかれちゃったってだけだと思うんですが。

 

先ほども申し上げましたが、私立も高校入学を絞ってます。中学から入学した生徒と高入生とでは学力や進度に差があって、正直なところ高入生の方が劣るし、クラスまで分けてフォローしてますよ。

私立が高入生を絞るのも合点がいくというものです。

適性検査型入試の流行

公立の中高一貫校で実施されている適性検査。ここ数年、私立でも適性検査型入試を取り入れる学校が増えております。

 

そもそも適性検査ってなんなのっつーと、国算理社という科目にとらわれない横断的な思考力・処理能力を問う試験形式です。

 

よくわかんないっすよね。

↓のリンク先に神奈川県立中等教育学校の適性検査の問題があるので見てみてくださいな。

神奈川県立中等教育学校 適性検査

 

見てみました?私立と全然違いますよね。

 

特殊算出てきました?

超難解な図形の問題ありました?

理社の細かい知識を問うような問題ありました?

テクニックだけで解ける国語の問題ありました?

 

出てきてませんよね。

それもそのはず、公立中高一貫校では小学校範囲の学習内容の範囲内から出題されるので、小学校の学習指導要領から逸脱した私立式の問題は出てきません。

その代わり、正しく文章を読んで、書いてある情報を正確に読み取り、正解を導く方法を思考して処理していく能力が求められています。

 

適性検査は一言で言うと、思考・判断・表現を問うている試験です。

 

思考・判断・表現ってなんだ?という話をする前に、みなさま昨年度の通知表(あゆみ)から評価項目が変わったのに気づきましたか?

気づかなかった方は通知表(あゆみ)を見てください。下の3つの観点で評価されているのに気づくはずです。

 

①知識・技能 ②思考・判断・表現 ③主体的に学習に取り組む態度

 

2020年度から小学校では新学習指導要領が実施され、上の3つの観点で評価がされるようになったんです。

で、公立の適性検査で問われているのは主に②の思考・判断・表現。

私立の受験で問われているのはもちろん②もありますが、①の知識・技能が小学校範囲を超えた高いレベルで求められておりました。もっと言うと①の知識・技能が一定水準に達していれば真ん中くらいのレベルの私立中学受験には対応できました。

 

でも、公立の適性検査では①の知識・技能の占めるウェイトが低い。問題文をよく読んで正確に処理できれば、知識・技能がそこまでなくてもいけちゃいます。

知識バカ、計算バカには解けないのが適性検査です。

例えて言うなら割り算を正確にする能力よりも、どういった場面で割り算を使うべきか思考し、判断する能力、そういったものが求められます。

 

この傾向は私立にも波及しております。そのうち適性検査型の入試(思考・判断・表現を問う)の方が多くなるんじゃないんですかね。

大学入試の共通テストで記述型になるとかって話あったじゃないですか。あれも思考・判断・表現をどのように大学入試に組みこむかという話から発生しております。

 

日本の教育全体が今までの知識・技能偏重から思考・判断・表現に変わってきている、と。

なぜか?

PISA調査により近年読解力不足が顕著になってきたことが原因なんじゃなかろうかと。何かと文科省はPISAを気にしますからねぇ。

ま、この辺はまた別の機会に話をしますよ。

適性検査型で受けられる私立中学

ってことで国の教育方針が思考・判断・表現にシフトしていく中、その流れに追随する私立中学が年々増えております。

 

全部は多すぎて面倒くさいので主だったところのみ紹介します。あくまで一部です、一部。

校種地域学校名入試日偏差値
女子東京共立女子中学校2月3日50〜55
女子東京光塩女子学院中等科2月1日45
女子東京跡見女子学園中学校2月4日40〜50
女子東京十文字中学校2月1日40
女子東京星美学園中学校2月1、4日30
女子東京文京学院大学女子中学校2月1日38
女子東京東京家政学院中学校2月1日30
共学東京聖徳学園中学校2月1日30
共学東京上野学園中学校2月1日30
共学東京郁文館中学校2月1、2、4日40〜50
共学東京城西大学附属城西中学校2月2日30
共学千葉千葉明徳中学校1月20日30
共学埼玉西武学園文理中学校1月17日40〜50
共学埼玉聖望学園中学校1月11日30
共学神奈川鶴見大学附属中学校2月1日40
女子神奈川聖園女学院中学校2月1日40

ざっくり見ていっただけでこれだけあるんです。

もっと私に根気があればこの5倍くらいの学校を紹介できますよ。面倒くさいのでこれだけですけど。

 

で、これ見て思いませんでした?

あれ、偏差値低くね?ってね。

適性検査を導入している学校の偏差値は総じて低めです。

どこがどうとは言いませんけど、昔はレベル高かったけど落ちてきちゃった学校とか、学校改革やってるところとか、これから上を目指している学校とか、そもそも人集まらねーって学校が導入しているんですね。

 

また、適性検査を実施している学校は、特待なんとかインターナショナルなんとか得意科目なんとか云々、色々な受験形式で人を集めている傾向にあります。適性検査も人を集めるための一つの手段なんでしょう。

 

実のところ、公立中高一貫校を目指しているお子さんにとっては併願校、悪く言うと滑り止めです。

 

がっかりしないでください。

 

今、上にあげた学校、いい学校ありますよ。偏差値で判断しないでください。絶対に一度見に行った方がいいです。

見に行ってみて「あぁー、やっぱり・・・」となる学校もあれば「お、ここだったらいいかも!」と思う学校は絶対あります。

 

ともあれ、公立中高一貫校に絞ったとしても万が一のことを考慮した併願校はあります。

そうした学校も視野に入れつつ、公立中高一貫校を目指すといいと思いますよ。

適性検査対策もろくにしないで合格をかっさらうKIDS

そんな思考・判断・表現型の適性検査の合格を、ちょっとした対策でかっさらう子たちがいます。

難関校を目指している子たちです。

 

私立の受験問題は知識・技能が主と申し上げましたが、難関校の試験はそれだけじゃ太刀打ちできません。

超高い知識・技能の上に、超高い思考・判断・表現の能力がないと難関校には歯が立ちません。そんな能力を持った子たちが適性検査対策を行ったら結果は火を見るより明らかですよね。

 

実際、公立中高一貫校を合格したのに辞退して難関校に行く子たちはいます。

公立中高一貫校は繰り上げ合格も多いんです。

 

ここからは私見です。

私は思考・判断・表現を養うための勉強なんてものは胡散臭いと思ってます。

小学校、中学校レベルだったら演習の量に比例して思考力が養われていくと思ってます。

だから、はじめから思考力だなんだと言うよりも、量やれや!と考えています。

 

身もふたもない結論ですが、確実に公立中高一貫校に行きたいと思ったら、思考・判断・表現を鍛える適性検査対策のみをやるよりは難関校向けの学習を進めつつ、適性検査対策をやるのが確実なんじゃないか、とそう考えております。

 

ってわけで公立狙いだろうが私立狙いだろうがいっぱい勉強しろや!

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