【中学受験】楽しい理科第3回 一問一答と解説 生物編①植物「光合成・呼吸・蒸散」
中学受験向け楽しい理科の第3回目は植物のはたらきである光合成、呼吸、蒸散についてやっていきます。
根・茎・葉という植物の体について話をしていくよりも、まずは植物がどんな生き方をしているのかを知った方が、より良く植物の体についても学べるのではないかと思い、今回は光合成、呼吸、蒸散をテーマにしました。
なお、一問一答および解説の作成には自分の考えを一切入れず、文献や論文を参考にして作成しております。
参考文献)
「しくみと原理で解き明かす 植物生理学」佐藤直樹/著 裳華房
「光合成とはなにか (ブルーバックス)」園池 公毅/著 講談社
「予習シリーズ理科」四谷大塚出版
一問一答プリント
光合成ってそもそもなんだ?
光合成については知ってるよね?
そう、二酸化炭素と水と光と葉緑体から酸素とでんぷん(糖)を作り出す植物のはたらきだ。
でも何のために植物は光合成を行うんだろう?栄養を得るためには違いないんだけど、でも栄養だったら根を使って土からでも取れるよね。ということは光合成独特の何かがあるに違いない。
ざっくり言うよ。植物は自分の体をつくるために光合成を行なっている。
植物の体、というか生き物の体っていうのは基本的に炭素と酸素と水素でできている。もちろん他の物質も生き物の体を作っているんだけど、主にこの3つだ。
そのうち、酸素や水素は比較的容易に手に入れることができる。で、炭素はどうかって言うと、人間だったら肉とか魚とか野菜とかの食べ物から体に取り入れないといけない。動物もそう。でも、一般的な植物は食べることができない。
そこで植物は二酸化炭素から炭素を取り入れることにした。二酸化炭素ってのは酸素と炭素がくっついた物質だ。植物は二酸化炭素を酸素と炭素に分けて、炭素を体に取り入れて成長のために使うことにしたんだ。酸素は吐き出しちゃう。で、一部は自分の呼吸に使う。
これが光合成の役割だ。
つまり、光合成ってのは植物が体を作るために二酸化炭素を酸素と炭素に分けて、炭素を体に取り込んで成長し、要らない酸素は外に吐き出す、こういう活動のことを言うんだね。
二酸化炭素を分解するのは大変!
くっついちゃったものをはがすのはなんでも大変。君だって、間違えて接着剤でくっつけちゃったものを引きはがそうとするのは大変だろう。パワーがいる。つまりエネルギーだ。
二酸化炭素も同じ。くっついた酸素と炭素を分けるのはエネルギーがいるんだ。
植物は頭がいい。だてに何億年も生きてるわけじゃない。どうやって二酸化炭素を酸素と炭素に分けようか試行錯誤したんだ。そして、太陽から注いでくる光のエネルギーを使うことにした。
いいかい、光にはエネルギーがある。
そのエネルギーを利用して、二酸化炭素から酸素と炭素を切り離せれば、体を作るのに必要な炭素を取り出せると考えた。
その答えが葉緑素だ。葉緑素という物質を作り出すことによって植物は太陽の光からエネルギーを取り出すことに成功した。
光合成に必要な要素として、小学校の教科書や中学受験の参考書では「葉緑体」と言っている。光のエネルギーを吸収しているのは葉緑素だ。葉緑体は色々なはたらきをする物質が集まった工場みたいなものだ。葉緑素は葉緑体のなかで光のエネルギーを吸収する仕事をしている作業員にあたる。全体と部分、それが葉緑体と葉緑素の関係だ。
これは覚えなくてもいいけど、葉緑体のことをクロロプラストといい、葉緑素のことをクロロフィルという。あくまで葉緑体と葉緑素は別物なんだ。
どうして光合成に水が必要なのか?
二酸化炭素が必要な理由はわかったね。地球に生きている生き物には必ず炭素が必要なんだ。植物は炭素を二酸化炭素から取り出して自分の体を作るのに使ってる。
じゃあ水が必要なのはどうしてなんだろう?
よく思い出して欲しい。生き物の体ってのは何でできてるんだっけ?
そう、炭素と水素と酸素だ。
水は水素と酸素がくっついてできている。植物は自分の体を作るために必要な水素と酸素を水から取り出そうと考えたんだね。
植物の身近で水素を含んでいる物質ってのは水だ。だから、水から水素を取り出そうとしたんだ。
ところで、水素を含んでいる物質っていうのは水だけなんだろうか?いや、実は違うんだ。
硫化水素っていう物質がある。
君は温泉に行ったことはあるかな?温泉の近くでなんだか卵が腐ったような変な臭いがするのをかいだことはあるかな?その臭いの元が硫化水素だ。
実は水じゃなくて硫化水素から光合成をするツワモノもいる。光合成細菌だ。
光合成細菌は水じゃなくて、硫化水素に含まれている水素を取り出して光合成を行なっている。だから、光合成に水が必要だっていうのは合っているようで間違っている。でもこんなことは小学校の先生や塾の先生は教えてくれない。教えてくれるようになるのは君が大学生になった頃だ。
光合成と地球温暖化
地球は今、どんどん暖かくなっている。今年の夏だってひどい暑さだった。
どうして暑くなっているかって、太陽からの熱を二酸化炭素が吸収してしまうことが一つの原因になっているようなんだ。そして二酸化炭素は増え続けている。このまま暑くなり続けると人間はおろか、人間が食べている動物や植物にも大きな影響を与えてしまう。
だから、人間は二酸化炭素を減らそうと思った。
そして、植物の光合成によって二酸化炭素を酸素にすれば良いと考え、山に木を植えたりすることにした。
君が旅行で山の方に行くと、緑がいっぱいあるのに気づくだろう。緑、だから光合成をしている(葉緑素は緑色に見える)、そして二酸化炭素は分解され酸素が生み出される、温暖化防止につながっている、と思うかもしれない。
ただ、それは合っているようで間違っている。
大きく成長した木は光合成による二酸化炭素吸収量よりも呼吸による二酸化炭素排出量の方が多くなる。
これは林野庁のホームページを見て欲しい
二酸化炭素を減らし酸素を増やすためには山の手入れが必要なのはこれが理由だ。大きく成長した木は伐採して、別のものを作るのに使う。その代わりに若い木を植える。山の手入れ、森林伐採は温暖化を防ぐためにとても大切なことなんだ。
今、地球温暖化が進行している原因の一つは過去に植物が体に取り込んだ炭素を、燃やすことで空気中に二酸化炭素をばらまいているからと言われている。石油や石炭を燃やすと、二酸化炭素が発生する。僕は燃やしていないって?そんなことはない。
例えば電気。これを作るために石炭を燃やしている。例えば自動車。走るために石油(ガソリン)を燃やしている。
石炭や石油は昔の植物たちが体に溜め込んだ炭素が形を変えたものだ。
知らず知らずのうちに君も地球が温暖化するのに力を貸している。
光合成の不思議
ここまでで光合成のことが少しは分かってもらえただろうか。
実は光合成ってのは複雑すぎて全てが分かっているわけじゃない。どういうメカニズムで光合成が起きるのか、まだよくわかってないんだ。
植物ってのは身近にある。どこにでもある。ほら、外に出れば植物が生えている。その植物は光合成を行なっている。
でも、まだその仕組みの全ては解明されていない。
ファンタスティックだよね!こんなに身近に分からないことがある。それどころか自然界は人間には分からないことだらけだ。少しでも興味を持ってくれたら、ぜひ調べてみて欲しい。君は将来のノーベル賞候補になるかもしれない。
呼吸ってなんだ?
呼吸ってのは生き物がエネルギーの元になる物質から、酸素を使ってエネルギーに変えるために行なっている。酸素を使うと、エネルギーの元からエネルギーそのものを作り出すことができるんだ。
ところで、すごいことを言うよ。
酸素は毒だ。
酸素ってのは毒性がすごく強い。ただ、酸素が他の物質とくっつく時にはすごいエネルギーを生み出す。地球に生きている生き物はこの酸素の毒性を克服し、すごいエネルギーを生み出す酸素を利用することにしたんだね。
毒でも利用する。生き物ってのはしたたかだ。
君も呼吸してるよね。首を絞められたら苦しくなる。絞められ続けたら死んでしまう。なぜなら酸素を体に取り込めず、細胞がはたらなくなってしまうからだ。
君の体はすごくいっぱいの細胞でできている。それらの細胞がはたらくためにはエネルギーが必要だ。そしてエネルギーを作り出すためには酸素がいる。だから、酸素がなくなってしまうと細胞がはたらかなくなる。そして死んでしまう。
呼吸ってのは生き物の体を動かすための酸素を体に取り入れる活動なんだ。
蒸散ってなんだ?
植物ってのは気孔っていう場所から水蒸気を吐き出している(葉の裏側に多い)。これを蒸散と呼んでいる。気孔は呼吸も行なっている。
植物が蒸散で吐き出す1日の水蒸気の量は植物の体の中にある水分の何倍にもなる。すごい量ってことだ。
気孔はめちゃくちゃよくはたらいてくれているんだね。
ところで、水蒸気を吐き出しながら、呼吸をするなんてできるのか、と思わなかったかな?
正確に言おう。
植物は気孔を使って自分の意思で吐き出したり吸い込んだりはしていない。
気孔という穴を使って物質の濃度の高いところから低いところへ移動しているだけなんだ。
つまり、植物の体の中の水蒸気の濃度が高くなり、周りの湿度がそれよりも低いと、植物の体から外に向かって水蒸気が自然に出て行く。また、植物の体の中の二酸化炭素濃度が低くなり、空気中の二酸化炭素濃度が高いと気孔を通って植物の体に二酸化炭素が自然に移動する。
そういうことなんだ。僕たちが行なっている呼吸とはちょっと違う。
いいかい、一般的な法則として、物質ってのは濃度が高いところから濃度が低いところに移動して、全体が一様になる性質を持っている。
身近なことに例えてみよう。
切ったきゅうりを浅漬けのもとに漬け込んでおいてしばらく待つ。で、漬け込んだきゅうりを洗って食べてみる。すると、浅漬けのもとの味がするよね。これは塩分の低いきゅうりの中に、塩分が高い浅漬けの元が移動したからなんだ。
空気の密度が濃いところ(気圧が高いところ)から、空気の密度が低いところ(気圧の低いところ)に向けて風が吹くのもそうだ。
こういった物質の性質はぜひ覚えておいて欲しい。
さて、こんなときに蒸散は活発に行われるって習ったはずだ。
風が吹いているとき、気温が高いとき、雨が降った後、乾燥しているとき、日が当たっているとき。
こういう条件のときになぜ蒸散が活発に行われるのか、気孔というものの性質と、物質は濃度が高いところから低いところへ移動するっていう性質から自分で考えてみて欲しい。
下のサイトはとても親切でためになる。ぜひ読んでみて欲しい。「みんなのひろば」というところで植物に関する疑問を専門家の人たちが答えてくれている。何なら質問してみてくれ。
また、蒸散によって、植物体内の水分量を調節したり、根からの吸水量を調節したり、体温調節をしている、ともテキストには書かれていると思う。調節ってなんだ?と思ったら思い出してほしい。
蒸散は水蒸気濃度が高くなった植物体内から、水蒸気濃度の低い周囲の空気中に、水蒸気が移動する現象だ。
そのことを調節と呼んでいる。
植物が頭で考えて「調節するぞ」と思ってるわけじゃない。意思ではなく、周りの環境と調和するような自然のはたらきが調節につながっている。
習うだけ、覚えるだけじゃ理科はつまらない暗記科目だ。ただ、疑問をもって調べて行くととても面白い科目だ。
自分自身の力で疑問をもち、考えたことは自分の財産になる。そして忘れない。
せっかくだったら楽しく勉強していい点数を取ろう。少しでも理科に興味を持ってくれるとうれしい。
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