開成中学入試問題「算数」を徹底解説、平成29年度「算数」大問4(4)図形ー第7回

開成中学入試問題「算数」を徹底解説、平成29年度「算数」大問4(4)図形ー第7回

演習の使い方

さて、過去問の使い方は学習の手引きで説明しました。その時に過去問は勉強するものではない、と私は言いました。ではこのブログのメインである問題演習についてはどう捉えて学習に役立てれば良いのかこれから説明していきたいと思います。

一言で言いますと、stepごとにどのように思考し解いているのかをなぞってstepごとの思考方法を学んでいただくために演習は使用して欲しいと思います。解き方そのものではなく、思考方法を学んで欲しいと考えています。

なぜなら解き方そのものはその問題特有のものですが、思考方法は未知の問題に対して適用できるからです。学習の手引きでも申し上げておりますように、このブログでは思考方法を学び未知の問題に適用・対応できるようになることを目的としています。

解き方それ自体は私でなくとも参考書や過去問の解説や、他のブログを参考にすれば良いです。ただ、その解き方に至るまでの思考方法は他では多く説明に行数を割いていません。私がこのブログで眼目としているのは他では多く説明に行数を割いていない思考方法を学び、未知の問題に対応できるようにすることです。

とはいえ一つ一つの思考方法や、思考方法から導かれる解法には特別な点はありません。天才的なひらめきとは無縁です。一発逆転の思考ではなく、あくまでロジックの積み上げによる解答の仕方を学んで欲しいとのです。

なぜなら私を含めた多くの凡人はそのようなロジックの積み上げによってしか天才的なひらめきや気づきによって問題を解くことのできる天賦の才能を持った人たちに適わないからです。

凡人が天賦の才を持った人たちと同等に問題を解くことができるように訓練することができる・・・、痛快なことじゃないですか。

今日はなるべく詳細に問題を解いていこうと思います。

step1 条件を整理、発見する

BEの長さは何cmですか。

これが問題です。では前回の図形を呼び出してみましょう。

前回は④が8/9cmという解答を得ました。

では、問題文を読み解くために今分かっている限りの情報から分かっている限りの値を求めて現在与えられている条件と隠れた条件を明らかにしていきましょう。

上の左の図の赤丸の長さは④が8/9cmであるというところから求めることができます。なぜなら赤丸:黄色四角:緑三角の比は3:4:5ですので、黄色四角は8/9cmで、左の図の赤丸は8/9×3/4で2/3cmと求められます。

そうすると「い」の長さも求められます。3-2/3=7/3cmです。

 

前提となるのは相似の図形の比は等しくなる、という理解です。そして、この問題においては三角形ABCと水色の部分は相似であるという気づきが必要です。(これは(3)で見出しました)

この事実に気づくか気づかないかでこの問題が解けるかどうかが9割がた決定します。気づくか気づかないかは、常に相似の図形を発見しようとする意識にあります。線を引いてでも相似の図形を発見しようとする意識です。

そうした意識は学校ごとの傾向を知っていることで強弱をつけることができます。開成中学校の問題は相似の発見、そして相似比を使って問題を解けるケースが非常に多いです。ですから開成中学校の図形を利用して解く問題においては相似の発見の優先順位を高く持っておくことが大事です。

問題文から解釈し、何の問題なのかを多くの選択肢(解法)から発見するには選択肢(解法)に優先順位をつけることが重要です。すなわち「この学校はどんな解法を用いることが多いのか」という理解です。

開成中学校は相似や比を利用したら解ける、という問題が多いので常にこの解法によって解けるのではないかという意識を強く持っておきます。

 

また左の図の台形に奥行(BE)を加味した体積と三角形ABCを底面として高さを8/9とする立体の体積は等しいと条件が与えられています。

すなわちこ立体の体積は3×4÷2×8/9=16/3という条件を求めることができます。

そしてこの16/3という体積は、台形の面積に奥行(BE)をかけた体積と等しくなります。

 

台形の面積の求め方を知っていること((上底+下底)×高さ÷2))と、体積は面積に高さをかけたものであるという基礎的な知識により導き出すことができます。

 

国語能力や読み解くことを大事と言っていますが、算数の基礎知識がないと読み解くことすらできません。むしろ読み解く段階においては算数の基礎知識が必須となります。

基礎知識が弱いのであれば、塾のテキストや参考書を読み直して中学受験で使用する公式はとっとと覚えてしまいしょう。

step2 解答の方向性を決める

体積が等しくなる二つの立体のうち、片方は具体的な数値まで見えており、片方は不明な数字が一つ(BE)あるという状況です。

ということはこれは等式の問題と捉えることで解くことができそうですね。

step3 解答の道筋を決める

文章で等式を作ってみます。

三角形ABCを底面とした立体の体積=台形を側面としそれに奥行をかけた立体の体積(そしてこの中に不明なBEが含まれる)

この等式によりBEを求めることができそうです。

step4 数式を立てる

 

三角形ABCを底面とした立体の体積:3×4÷2×8/9

台形を側面としそれに奥行(BE)をかけた立体の体積:(3+7/3)×8/9÷2×BE

等式にすると、

3×4÷2×8/9=(3+7/3)×8/9÷2×BE

です。

 

step5 計算する

上の等式を計算すると、

16/3=64/27×BE です。

両辺に27/64をかけると、BEがある方の辺の64/27が1となり、BEのある方の辺はBE×1、つまりBEそのものとなります。

これを式にしますと

 

BE=16/3×27/64

すなわちBEは9/4cmとなり、

答えは2と1/4となります。

この問題で使った等式を利用した解き方は開成中学校の問題においては良く使います。これの考え方、使いかたはまた後日説明いたします。

覚えればなんということはありません。

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