【中学受験】小学4年生予習シリーズ算数 第9回「いろいろな四角形」をマスターする

【中学受験】小学4年生予習シリーズ算数 第9回「いろいろな四角形」をマスターする

算数が苦手な子は問題で与えられた条件を整理したり、隠れた条件を発見するのが苦手でございます。

あ、ここで言ってる「苦手」ってのは「基本知識を覚えたけどそれ以上の問題は解けない」って定義いたしました。

 

今回の「いろいろな四角形」で言いますと、四角形の角の和が360°となることや、正方形、長方形、平行四辺形、台形、ひし形の面積の求め方は覚えたし、それらの知識をそのまま問うような問題は解答できるものの、それ以上の問題に遭遇するとサッパリ解けないお子さんを想定しています。

 

「お前、基本さえしっかりできてれば解けるって言うたやないけ!どないなっとんねん!」

と怒られてしまいそうです。大阪の南の方角にお住まいの方の口調になっているのは気にしないでください。

 

いえいえ、嘘なんか毛の先ほども申し上げておりません。

基本さえできれば解けるようになってます。が、何かが足りない。

その足りないものはなんでしょう?

四角形の基本知識だけでは解けない問題

さて、予習シリーズにこんな問題がありましたので解いてみてください。

2つの正方形の辺の長さが隠れている問題

この問題、四角形の知識だけで解けますか?

解けないですよね。これをどうやって四角形の基礎知識を使って解くのかやっていきます。

その前に「いろいろな四角形」で学習する基礎知識のおさらいです。

いろいろな四角形で学ぶ基礎知識

今回勉強するのはいろいろな四角形の角度や面積に関する知識です。

ではいきますよ。

いろいろな四角形で身につけるべき基礎知識

・4つの角がある図形を四角形と呼ぶ

・特徴的な四角形として、台形、平行四辺形、ひし形、長方形、正方形がある

・台形は1組の辺が平行

・平行四辺形は2組の辺が平行

・ひし形は2組の辺が平行で全ての辺の長さが等しい

・長方形は全ての角が直角

・正方形は全ての角が直角で全ての辺が等しい

・台形の面積は(上底+下底)×高さ÷2で求められる

・台形の左上と左下の角度の合計は180°であり右上と右下の角度の合計も180°である(同位角の定義を思い出してくださいね)

・平行四辺形の面積は底辺×高さで求められ、対角の角度の大きさが同じである

・ひし形の面積は対角線×対角線÷2で求められ、対角の角度の大きさが同じである

・長方形の面積は底辺×高さで求められ、4つの角の角度は全て90°である

・正方形の面積は一辺の辺の長さ×一辺の辺の長さで求められ(辺の長さの二乗)、4つの角度は全て90°で辺の長さが全て同じである

先ほどの正方形の問題が解けない理由を説明していきます

もう一度、問題を見てみましょう。

利用するのは正方形に関する基礎知識です。

ざっとまとめるとこんな感じ

正方形に関する基本知識

・全ての辺の長さが同じ四角形である

・四角形の面積は縦×横の長さで求められる

・つまり正方形の面積は一辺の長さが分かれば求められる

解けない理由

ところが上の問題では肝心の正方形の一辺の長さが分かりません。

算数ができない子はここで意味が分からなくなってしまいます。

 

「正方形の辺の長さが分からないのに面積なんか求められないでしょ!」

確かに2つの正方形の辺の長さなんかどこにも書いてませんね。

 

じゃあどうするか?

 

結論から言いますと、この問題は正方形の知識で求められるのですが肝心の正方形の辺の長さが隠されています

正方形の辺の長さがパッと見で分からないようになっているんですね。

しかも四角形の知識だけでは辺の長さを求めるのは無理っぽいです。

そこで別の方法を使って正方形の辺の長さを求める必要があるんです。

解答方法

では解きます。

▼条件整理

・大きい正方形と小さい正方形の辺の長さの和は19cmである

・大きい正方形と小さい正方形の辺の長さの差は5cmである

▼隠れた条件の発見

・ある2つ(3つ以上も含む)の対象の和と差が分かっている時は線分図にして整理する

・上の問題の場合、和は19cmで差は5cmである

正方形の辺の長さを求めるための線分図

・上の線分図より、大きい正方形の辺の長さは(19+5)÷2=12と求められ、小さい正方形は12-5=7と求められる

▼計算する

・大きい正方形の面積は12×12=144、小さい正方形の面積は7×7=49と求められる

・2つの正方形の面積の和は144+49で求められるから、答えは193㎠

答え 193㎠

 

和差算を使うと正方形の辺の長さが求められるんですね。

つまり、正方形の知識を活用する前に、和差算を活用する問題だと喝破しないといけないんです。

 

難しい問題ではないのですが、条件整理しないとパッと見では解けないようになってます。ただし、条件整理するとこれが和差算の考え方を使えば解けることに気づきます。

こういう問題をやりまくっている6年生は「あぁ昔解いたパターンだな」で解いちゃいますけど、初見で正解を導くには条件整理が必要です。

この条件整理と隠れた条件の発見が苦手なのが算数が苦手な子です。

算数苦手を自負する小学4年生の親御さんは是非上の問題を我が子に解かせてみて、かつ解答過程も注視してみてください。

 

仮に答えを出せたとしても条件整理をきちんとやってませんから。

 

ところで解答パターンを覚えまくれば条件整理なんて小難しい方法使わなくていいじゃんと思いましたよね。

それもそれで正しいんですが、未知の問題が入試で出てきたらお手上げです。

 

昨今(昔もそうですけどね)の中学入試問題は一見すると解けないようになってます。

上のような小細工がもっと複雑になったのが問題として出ますし、パターン認識で解ける程度の問題だったらいいんですが、未知の問題もバンバン出てきます。

算数における思考力ってなんだ?

未知の問題に必要なのは思考力だ!

と、業界の大人の人たちは熱弁いたしますが、そもそも思考力とか言われてしまうと頭を抱えそうになります。

だって、思考力なんて言葉は抽象的すぎてなんのことかよく分かりません。

肝心の定義を業界の大人の人たちに聞いてみても「未知の問題に対応するための頭の柔らかさ」とか「対応力」とか、サッパリ訳の分からない回答が返ってきがちです。

定義がきちんとされていない能力を身につけるのは一苦労です。道筋が見えず、したがって再現性がないからです。

 

えーと、便利なので私も思考力という言葉に乗っかって説明していきます。頭やわらか一味の船に同乗させてもらおうかと。

 

算数における思考力とは、

1.与えられた条件を整理する作業

2.基礎知識

3.基礎知識と条件整理を使って隠れた条件を発見する作業

4.与えられた条件と隠れた条件から基礎知識をもとに解答する作業

5.計算能力

です!YES断言。

 

上の四角形の問題でも、

1.条件を整理して、

2.和差算や正方形の知識があることを前提に、

3.和差算の考え方を使って線分図を書き、

4.辺の長さを求め、

5.2つの四角形の面積の和を求めた

こんな作業をやってますよね。

 

どんなに難しい問題でも基本的にはこのように作業を行うと答えが導かれます。問題の難易度は、作業工程のわかりやすさわかりにくさに比例します。が、ほとんどの問題は上記の作業工程で求められます。

 

算数だけじゃありません。数学もそうです。

東京大学2次試験の数学の問題も難しそうに見えますがきちんと条件整理すれば基礎知識で解けます。

よっぽど灘中学校の算数の問題の方が難しいですよ。

条件整理の力を身につけるには

「その条件整理とやらの実力をどうつけるのか」

っちゅう話が一番大事です。

理屈だけ知っていてもそれを身につける方法が分からなければ何の役にも立ちませんからね。

 

条件整理というとなんか難そうですけど、見たものをそのまま観察して言語化すればいいだけです。

 

でもね、ただの言語化じゃないですよ。

上の四角形の問題で「正方形っぽいやつが二つ並んでまーす!」「四角いやつが二つ並んでまーす!」とかピュアがすぎる観察からは答えは導かれません。

 

基礎知識をもとにした言語化が必要なんです。

上の問題だったら和差算と正方形の知識があることを前提にしてそれに当てはまるように整理しましたよね。

つまり、正しい条件整理には基礎知識が必要です。

だから基礎知識をつけましょう、と世の中の基礎おじさんは口を酸っぱくしております。

もう一問、四角形の問題

最後にもうちょっと難しい問題を解きます。

これも、基礎知識でいけます。

シャッ!行くぞ。

四角形の少し難しい問題

はい、よく分からない問題が出てきましたね。

三角形4つに四角形1つ、三角形それぞれの底辺と高さが求められれば求まるのにーッ!とお思いかもしれません。

でも三角形の辺の長さが分かりません。だからそっち方向からは解けそうな感じがしませんね。

では例によって条件整理をします。

▼条件整理

・四角形アの面積は84㎠である

・三角形イ、ウ、オは一辺あるいは二辺の辺の長さが分からない

・三角形エは15×5÷2で37.5㎠と求められる

 

三角形イ、ウ、オの一辺あるいは二辺の長さはどう頑張っても出てきません。

こういう時はどうするか、というと補助線を引くんです。

単純なテクニックです。覚えちゃいましょう。

与えられた条件だけではどう頑張っても出てこないときは補助線を引いて無理やり条件を出現させる、とね。

少し難しい四角形の問題に補助線を引いた

このように補助線を引くと以下のような隠れた条件を発見できます。

▼隠れた条件

・大きな四角形Rの底辺は21cm(15+6)、高さは17cm(12+5)である

・大きな四角形Rの面積は21×17で357㎠である

・三角形イ、ウ、エ、オと同じ面積の三角形が補助線の内側に出現した

・つまり、大きな四角形Rから四角形アを引いた図形の面積は、4つの三角形の面積の和の2倍の大きさになっている

・したがって、大きな四角形Rから四角形アの面積を引いて2で割ると4つの三角形の和が求められる

▼計算する

・(357-84)÷2=136.5・・・三角形イ、ウ、エ、オの和

答え 136.5㎠

とくに図形の問題は条件整理と隠れた条件の発見が大事

賢い親御さんたちにはいささか簡単すぎる問題でしたかね?

ここで大事なのは面積の求め方ではありません。

繰り返し申し上げますが、大事なのは条件整理と隠れた条件の発見です。

 

お気づきかもしれませんが、算数の問題なのにあまり計算してませんよね?

その代わりに、与えられた条件や隠れた条件の整理と論理の組み立てを行なっております。

で、最後にしぶしぶ計算をして答えを求めている、と。

 

算数って、足し算、九九の計算から始まって筆算、分数、小数と計算づくしでございますから、計算が大事だと思ってしまいがちです。

ところが、応用問題やそれに連なる入試問題では論理の組み立てが大事です。計算はBTSのJ-HOPEくらいの存在感であります。

あぁ、すみません、J-HOPE氏ファンの方々に最大限の謝罪をいたします。カムサハムニダ、キムチ。

 

条件整理の力を身につけるには、まず見たもの(観察したもの)をそのまま言語化するのが大事です。

と言っても子供は言うことなんか聞きません。

 

なので、ちょっぴり解けそうもない問題が出てきたらここが天王山とばかりに整理してさせていきましょう。

 

条件を整理した結果、どう頑張っても解けない場合は何か違う解法に思いを巡らせるように促します。

 

他の解法でも解けそうもない場合は最後の頼みの綱、補助線です。

 

あぁやっと何かが見えてきた・・・!

 

解けましたか?そしたら親子で叫びましょう。

バンタンソニョンダン!

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